良家の子息子女が通う「私立小学校御三家」
「御三家」とは、特定の分野で高く格付けされている、あるいは人気がある、有力であるという代表的な3者を総称する場合に用いられる表現のひとつだ。その由来は、江戸時代に徳川将軍家と関係のあった尾張徳川家、紀州徳川家、水戸徳川家の3家が「御三家」と呼ばれ、その他の諸大名とは別格の扱いをされていたことに因んでいるのだという。
そのようななか、私立小学校にも「御三家」と呼ばれる3校が存在する。「私立小学校御三家」にあげられている小学校とは、一体どのような学校なのだろうか。
私立小学校御三家とは
私立小学校御三家といった場合、一般的には「青山学院初等部」「学習院初等科」「慶應義塾幼稚舎」の3校を指す。それぞれの特徴をみていこう。
● 青山学院初等部
キリスト教教育に基づく教育方針を標榜している青山学院は、渋谷駅や表参道駅から徒歩圏内に位置する。幼稚園から大学までの一貫校であり、一貫教育を望む家庭には高い人気を誇っている。
その小学校時代に位置する青山学院初等部は、1933年(昭和8年)に前身の青山学院緑岡小学校が開学、1946年(昭和21年)に青山学院初等部となった。伝統を重んじる一方、特徴ある教育を行っている。
例えばランドセルを使用せず、手作りの肩掛けカバンで登校している。また通信簿を廃止し、「成長の記録」をつけることによって児童・保護者・家庭の3者で教育を行い、個を育てることを重視している。
学費は毎年の授業料が75万円、1年生の際は入学金など発生するため、131万6,000円かかる。2〜6年生の間は95万6,000円だ(いずれも2016年度入学者参考)。
● 学習院初等科
学習院は1847年、公家の師弟のための学校として京都に誕生した。明治維新後も華族のための学校として運営され、1919年(大正8年)には、学習院初等科に名前を改めた。現在の本校舎は1940年に竣工し、戦火を潜り抜けてきた本館は、同校が教育目標に掲げている「真実を見分け、自分の考えを持つ子ども」の育成にふさわしく、落ち着いた雰囲気に包まれている。
特徴は、低学年から学級担任制と教科担任制を採っていることだ。高学年ではさらに広く深く学習できるように、どの教科も専科の教員が担当する「完全専科制」を実施している。
学費は毎年の授業料が72万円、施設維持費に29万2,000円、その他に給食費や教材費がかかる。平成28年度入学の場合、入学金などを合わせて約150万2,000円を支払う必要がある。
● 慶應義塾幼稚舎
福澤諭吉が江戸の築地鉄砲洲に蘭学塾を創始したのが1858年。この通称「福澤塾」は、1868年には「慶應義塾」と命名された。そして1874年には「慶應義塾幼稚舎」が、初代舎長に和田義郎を迎えて創立されている。
幼稚舎教育の最大の特色は「6年間担任持ち上がり制」だろう。6年間クラス替えがなく、基本的には担任も代わらない。児童の成長と発達はそれぞれの児童によって異なるため、一人ひとりを6年間にわたる長い目で見守ろうという考え方だ。このため6年間の日々の共通体験により、子どもたち同士の友情を育み、一生の友や一生の恩師を生み出していくことになる。
毎年の授業料は94万円で、2016年度入学生の場合、入学金や施設設備費などを合わせると154万1,480円を支払う必要がある。
名門私立小学校に入学させるメリット・デメリット
まずメリットとしてあげられるのはエスカレーター進学ができる点だろう。上記の小学校受験に合格すれば、中学校、高等学校、大学へエスカレーター進学ができる。もちろん内部進学試験を受けて合格する必要があるが、外部受験で受ける試験よりも難易度はかなり低い。シビアな入学試験は小学校受験だけで済み、厳しい受験競争に子どもを晒さなくてもよくなるわけだ。
また、エスカレーター進学だからこそ、一貫した教育を受けることができる。私立小学校の教師には公立小学校のような数年ごとの異動がないため、一定のレベルが保ちやすいのもメリットといえるだろう。
さらに最大のメリットともいえるのは、子どもの将来にわたる人脈形成だ。上記の小学校は良家の子息子女が多く、一貫教育によって培われる長くて深い関係は、社会人になってからも大きな財産となるだろう。
一方で、少子化進んでいるとはいえ、上記のような小学校受験となると、早い時期から準備が必要になる。もちろん、高額な学費が毎年かかる。物心ついたことから名門と呼ばれる学校の一環教育のなかで育つので、エスカレーターで大学まで進学した場合、ややハングリーさやタフさに欠ける大人になってしまう可能性もある。
何にせよ、子どもにどのような教育を与えるかは、親の価値観が大きく反映される。様々な選択肢を検討したいところだ。