日本とはいえ 家族の安全を守るホームセキュリティ
ホームセキュリティへのニーズが年々高まっている。ホームセキュリティ業界は競争が激化し、サービス内容も多様化する傾向が顕著だ。以前に比べると個人での導入が容易になったホームセキュリティだが、どのように選んだらよいのだろうか。
家庭向けサービスの需要が急伸
企業や個人の安全を確保する警備業界は、日本経済全体では希少な成長産業だ。経済産業省の統計調査では、2020年の東京オリンピック開催に向けて成長が期待される産業として、警備業界を挙げている。
経済産業省が公表している日本国内の第3次産業活動指数は、2008年のリーマンショックや2011年の日本大震災で落ち込みがあるものの、警備業界では2009年以降、右肩上がりで高い成長を記録している。これは第3次産業全体を上回るペースで、日本の産業全体の中でも、警備業界は年々市場規模が膨らんでいる。
警備業法が定める業務区分別には、一号業務に分類される「施設警備業務」、「巡回警備業務」、「機械警備業務」などがある。警備業は人手を要するサービスといえるが、最近は設備の機能で安全を守る機械警備の需要が増えているのだ。
さらに機械警備の中でも、契約件数の増加が著しいのは家庭向けのサービスだ。いわゆる「ホームセキュリティ」である。警備業界大手のセコムの契約件数をみると、2010年には約45万件だったのが、2016年は約117万件となっている。
環境の変化に伴い社会不安が増大?
では、ホームセキュリティをはじめとするセキュリティ関連ビジネスに対するニーズ増加には、どのような背景があるのだろうか。
その理由としては、3年後に迫る東京オリンピックの開催や、インバウンド需要による訪日外国人の増加、地震など大規模自然災害の発生など、生活環境の変化に伴う漠然とした社会不安があると考えられる。
法務省が発表した2016年版の犯罪白書によると、2015年の刑法犯の認知件数は109万8,969件(前年比9.4%減)と13年連続の減少となり、最も多かった2002年の約285万件から、4割弱に減少している。このように国内の犯罪件数は減少傾向をたどっているものの、凶悪な犯罪やストーカー被害などが連日報道され、安全とは言い切れない。
異業種も参入し競争激化、サービスも多様化
一方、セキュリティ関連産業である監視カメラ市場では、ネットワーク化の推進に伴い、画像解析技術の応用による利用シーンの拡大を踏まえて、新たな商品開発に注力している。
また、従来の警備業を筆頭に、施設や住まいに関わりのある住宅管理会社やガスや電力などのインフラ企業など異業種からの参入もみられ、市場内での競争も激化している。ホームセキュリティのサービス内容も手厚いものからIT機器を駆使した簡便なものまで多様化する傾向がうかがえる。
利用者側からすると、ホームセキュリティ導入のハードルが年々下がってきている状況だといえるだろう。
家庭個々の事情に合わせてプラン提案
ホームセキュリティ業界大手のサービス内容を実際にみてみよう。
セコムでは、空き巣や不審者などの防犯対策をはじめ、高齢者や子どもの見守り、火災などの災害対応まで幅広くサービスを提供する。こうした大手が万が一の事態に心強いと感じられるのは、非常時にも迅速に駆けつける体制が整い、全国に拠点数が豊富にある点だ。セコムは全国約2,800ヵ所の拠点数を誇る。
一般にホームセキュリティを契約する場合、必要になるのは初期費用と月ごとの契約料だ。さらにホームセキュリティ各社では、セキュリティ機器類のレンタルと買取の2パターンでプランを設定している。
セコムの戸建て向けホームセキュリティプラン例をみると、住居の1階中心に防犯センサーを設置した場合として、機器レンタルでは月額料金5,900円(初期費用工事費4万9,000円、保証金2万円)、機器買取は月額料金4,500円(初期費用:買取システム料金29万4,600円)としている。設置機器の概要は、ワイヤレスマグネットセンサーが7個、空間センサー、煙センサー、フラッシュライト、非常ボタンが各1個ずつとなっている。
また同じくホームセキュリティ大手のALSOKでは、戸建て住宅(4LDK)料金プランとして工事費、機器費0円で月額警備料金7,760円の「0スタートプラン」も提案している。
自分にとって本当に必要な安全とは何か
ホームセキュリティは、戸建て住宅や、マンションなどの集合住宅である持ち家はもちろん、単身者向け賃貸住宅での差別化サービスとしても採用されるケースが多くなっているという。
ホームセキュリティは生活に身近な存在になりつつあるが、サービス内容を見極めて、自分にとって本当に必要な「安全」を確保することが大切である。