初期症状、咳、熱の次に多いのは?
米疾病対策センター(CDC)のEric J. Chow氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断された米・ワシントン州キング郡在住の医療施設勤務者を対象に、初期症状としてどのようなものが出現したかを調査。発熱と呼吸器症状を基本にした現行のCOVID-19スクリーニングは不十分な可能性があることをJAMA(2020年4月17日オンライン版)に報告した。
35.4%が初期症状として筋肉痛を経験
対象は2020年2月28日~3月13日に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染が確認された、キング郡に住む全ての医療施設勤務者とした。電話インタビューを行い、年齢、性、慢性疾患の有無(高血圧症、糖尿病、肝臓病、心臓病、肺疾患など)、職種、勤務先、症状のある状態で勤務した日数などを尋ねた。また、最初に異変を感じた暦日に自覚した全ての症状についても聴取した。なお、発熱はCDCのCOVID-19ガイダンスに準じ、体温38℃以上、または自覚的な発熱と定義した。
対象として50人を特定し、うち48人に電話インタビューを実施できた。年齢中央値43歳(範囲22~79歳)、女性37人(77.1%)で、23人(47.9%)が慢性疾患があると回答した。患者に接触する医療行為を行っている者が大半(77.1%)を占め、それ以外は事務職員、清掃員、保安職員として働いていた。勤務先の内訳は介護施設24人(50%)、外来クリニック13人(27.1%)、急性期病院6人(12.5%)など。複数の施設にかけ持ちで勤務中の者も3人いた。
初期症状で最も頻度が高かったのは咳(24人、50%)で、発熱(20人、41.7%)、筋肉痛(17人、35.4%)がそれに続いた。その他には悪寒、喉の痛み(各7人、14.6%)、鼻汁(6人、12.5%)、息切れ、不快感(各5人、10.4%)、下痢(3人、6.3%)などが見られた。
一方、初期に発熱と呼吸器症状(咳、息切れ、喉の痛み)はなかったと8人(16.7%)が回答し、多く見られた初期症状は悪寒、筋肉痛、鼻汁、倦怠感だった。8人中1人は経過中に発熱と呼吸器症状が現れず、鼻汁と頭痛だけを自覚していた。残る7人については、発症後中央値2日(範囲1~7日)たってから発熱と呼吸器症状が出現したことが分かった。また、31人(64.6%)は症状のある状態で中央値2日(範囲1~10日)勤務を行っていた。
発熱、呼吸器症状だけではスクリーニングが困難
今回の調査から、COVID-19の初期症状として発熱および呼吸器症状が8割超で認められた一方で、6人に1人はそれらの症状が現れていなかった。すなわち、発熱と呼吸器症状を基本とした現行のCOVID-19スクリーニングに当てはめると、およそ17%が見逃される可能性がある。発熱、呼吸器症状に筋肉痛と悪寒を加えた場合、検出者数は40人(83.3%)から43人(89.6%)に増加するが、なお10%は見逃される計算になるとChow氏らは指摘している。
また、6割以上が症状のある状態で数日間勤務していた実態も示された。「COVID-19患者の唾液中SARS-CoV-2量は症状が発現した最初の週に最も多いという知見(Lancet Infect Dis 2020年3月23日オンライン版)などを踏まえると、その間に、患者や他の医療従事者にウイルスが拡散された可能性がある」と同氏らは述べている。
医療施設勤務者による感染拡大を防ぐにはどうすればよいか。その対策として同氏らは、症状ベースのスクリーニング基準の拡大や症状がある者に対する自宅待機、検査の促進、公衆衛生ガイダンスに沿った病気休暇制度の創設を提案している。さらに、勤務者全員がマスクを着用することで、無症状または軽症患者からの感染予防が期待できると指摘。「この方策は、介護施設や市中感染が広がっている地域で特に重要な可能性がある」との見解を示している。
(長谷部弥生)