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新型コロナ、身近なもう1つのリスク

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴いさまざまな情報が飛び交う中、日本のメディアではあまり取り上げられていない身近な新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染および重症化のリスクがある。米国立衛生研究所(NIH;National Institute of Health)は先ごろ、電子たばこを含む喫煙やマリファナ吸入などの物質使用が新型コロナウイルスへの感染および重症化における「深刻な脅威」になりうるとして警鐘を鳴らした(NIHのニュースリリース)。一方、日本禁煙学会は、喫煙スペース(喫煙所や喫煙室)がCOVID-19のクラスター(集団感染)発生源になる可能性があるとして、注意を呼びかけている(日本禁煙学会のニュースリリース1)。

喫煙者の重症化リスクは14倍

COVID-19は、高齢者、糖尿病、がん、心臓病、慢性呼吸器病を持つ人で重症化のリスクが高まることが指摘されている。慢性呼吸器病には、気管支喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などが含まれるが、とりわけCOPDの主な原因として喫煙が挙げられる。

たばこは吸い口付近を指先で挟んだり、煙を深く吸い込んだりするため、手指に付着したウイルスや細菌が体内に入り込むリスクがある。また、たとえ病原体が体内に侵入しなかったとしても、ニコチンなどの有害物質が肺機能に悪影響を及ぼすことは周知の事実だ。既に重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)、インフルエンザなどの感染症について、喫煙者は非喫煙者と比べて罹患および発症した場合の重症化リスクが高まることが指摘されている。COVID-19が最初に発生したとされる中国のデータでは、COVID-19患者の致死率は全体の2.3%に対し、慢性呼吸器病患者では6.3%と約3倍であったという。

こうした背景もあり、NIHでは「COVID-19は解明されていない部分が多い」としながらも、「これまでに得られた情報から、喫煙や電子たばこの吸引などをはじめとする物質使用は、新型コロナウイルスへの感染および発症した場合の重症化リスクを高める可能性がある」とし、警鐘を鳴らしている。なお、中国の別の研究結果によると、非喫煙者と比べて喫煙者がCOVID-19に罹患した際の重症化リスクは14倍に上ることも指摘されている(Chinese Medical Journal 2020年2月28日オンライン版)。

喫煙スペースがクラスターの発生源に

一方、COVID-19の蔓延についてはクラスターの存在も指摘され、ライブハウスやスポーツジムなどがクラスター発生源とされてきた。これを受けて厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」などでは、①換気の悪い密閉空間②多くの人が密集③近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声―という3条件が同時にそろう場所や場面について、感染リスクが高く要注意としている。

これら3条件がそろう場所の1つとして、屋内の喫煙スペースが挙げられる。日本禁煙学会では「喫煙室は『濃厚接触』の場となるおそれがあります。」と注意を呼びかけるとともに、全国の喫煙スペースの即時閉鎖を求めている。なお、同学会の公式サイトでは喫煙所・喫煙室の閉鎖状況を公開している(日本禁煙学会のニュースリリース2)。

(あなたの健康百科編集部)

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