豆、野菜、果物を多く食べると長生きに
食物繊維の摂取が健康に良いことは知られている。この度、国立がん研究センターの研究者らが、日本人約9万人を対象に食物繊維の摂取量と死亡リスクの関係を検討した結果を、医学専門誌Am J Clin Nutr(2020年1月28日オンライン版)に報告した。それによると、特に豆類、野菜類、果物類由来の食物繊維の摂取量が多い人ほど、全ての死因による死亡リスクは低下することが分かったという。
9万人を17年間追跡
食物繊維は、血圧、血中脂質、インスリン抵抗性などに良い影響を及ぼすことが知られている。また、欧米では特に穀類由来の食物繊維の摂取量が多いほど死亡リスクは低下するという研究結果が報告されていた。しかし、アジア人を対象とした研究報告はなかった。さらに、日本人ではどのような食品由来の食物繊維の摂取が死亡リスクと関連するかも分かっていなかった。研究者らは今回、日本人における生活習慣病の予防と健康寿命の延伸を目的に行われている多目的コホート研究JPHCの参加者を約17年間追跡調査し、食物繊維の摂取量と死亡リスクの関係を検討した。
対象は、研究参加時に45~74歳でがん、心血管疾患に罹患していなかった9万2,924人(男性4万2,754人、女性5万170人)。食事(食品138種)に関するアンケートを行い、その結果から食物繊維(総食物繊維、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維)の摂取量を算出。さらに、食物繊維の摂取源(穀類、豆類、野菜類、果物類)ごとに摂取量で5つのグループに分類。平均16.8年間追跡して、摂取量とその後の死亡との関連を調べた。解析に当たっては、年齢、居住地域、肥満度、喫煙、飲酒、身体活動、糖尿病(または治療薬服薬)の有無、降圧薬服薬の有無、健診受診の有無、月経状況(女性のみ)、ホルモン剤の使用(女性のみ)、コーヒー、緑茶、食塩の摂取量などを統計学的に調整し、これら因子の影響をできるだけ取り除いた。
全死亡リスクは男性で23%、女性で18%低下
追跡期間中に1万9,400人が死亡した。解析の結果、総食物繊維、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維の摂取量が多くなるほど全死亡リスクは低下した。総食物繊維摂取量が最も少ないグループに対し最も多いグループでは全死亡リスクが男性で23%、女性で18%低下した。
死因別に見ると、男女ともに食物繊維の摂取量が多くなるほど循環器疾患、呼吸器疾患、外傷で死亡するリスクが低下した。がんによる死亡リスクについては、男性では総食物繊維摂取量が増加するほど低下したが、女性では同様の関連は認められなかった。
食物繊維の摂取源別に見ると、豆類、野菜類、果物類に由来する食物繊維の摂取量が多くなるほど全死亡リスクは低下した。しかし、穀物に由来する食物繊維ではその傾向は認められなかった。
長寿には豆、野菜、果物、玄米、シリアル
今回、日本人でも食物繊維の摂取量が多い人ほど全死亡リスクは低下し、特に豆類、野菜類、果物類に由来する食物繊維の摂取量が増えると死亡リスクは低下するという傾向が明らかになった。しかし、穀類に由来する食物繊維の摂取量と死亡リスクには明らかな関連は認められなかった。
研究者らは「日本で主に摂取される穀類は、欧米と比べて食物繊維の含有量が少ない精白米であることが理由として考えられる」と説明している。さらに、これまでの多くの研究結果を踏まえると、「日本人が食物繊維の摂取量を増やすには、①豆類(大豆、インゲン、小豆など)、野菜類(ゴボウ、サツマ芋、キノコ、切り干し大根など)、果物類(柑橘類、バナナなど)の摂取量を増やす②より食物繊維の含有量が多い穀類(玄米、シリアル、全粒粉パンなど)の摂取量を増やす―ことがよい可能性がある」と述べている。
(あなたの健康百科編集部)