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恐れないでAED! 心肺蘇生が不成功でも後遺症や死亡を抑制

病院以外の場所での心停止は日本国内だけでも1年間におよそ11万件も発生しており、患者が社会復帰できる割合は7%前後と非常に低いことも合わせ、大きな課題となっている。心停止の原因となることが多い「心室細動(心室が小刻みに震えて全身に血液を送れなくなる現象)」に対しては、瞬間的に強い電流を流して心臓にショックを与え、正しい拍動リズムに戻す自動体外式除細動器(AED)が有効である。2004年に医師や救命救急士以外でもAEDを使えるようになり、運転免許取得時やさまざまなイベントを通じてAED講習が実施されるようになったが、実際にAEDが活用される事例は非常に少ない。しかし、救急隊の到着を待つ間に一般市民がAEDを行うことで、たとえその場で心肺が蘇生しなかったとしても、後遺症(脳機能障害)や死亡を防げる可能性が高まるという。国立循環器病研究センターの研究チームが世界で初めて明らかにし、著名な医学雑誌Lancet(2019年12月17日オンライン版)に報告した。

AEDが行われた人はその後の脳機能障害の頻度が低く、生存率も良好

2005年〜15年に日本で発生した心停止は129万9,784件で、そのうち一般市民による心肺蘇生が行われ、救急隊が到着した時点で心停止(心室細動)が続いていたのは2万7,329人であった。このうち、「一般市民によるAEDが行われた人」はわずかに2,242人であり、「AED以外の心肺蘇生が行われた人(2万5,087人)」の10分の1以下であった。

これらの患者を対象に、研究チームがその後の経過を比較したところ、30日後に脳障害がないまたは軽度だった人は、AEDが行われたグループの38%に対し、行われなかったグループは23%と低く、AEDが行われたグループでは統計学的に有意に脳障害のリスクが低かった。

30日後に生存していた人は、AEDが行われたグループでは44%だったが、AEDが行われなかったグループでは32%と低く、やはりAEDが行われたグループでは統計学的に有意に生存する可能性が高かった。

また、救急隊が到着した時間ごとに分けて、2つのグループで脳障害の頻度を比べた結果、「到着が6分未満」「到着が6〜10分」「到着が10分を超える」のいずれにおいても、脳障害の頻度はAEDが行われたグループで統計学的に有意に低かった。

この研究から、AEDの実施により、たとえその場で心肺が蘇生しなかったとしても、後遺症や死亡を防げる可能性が高まることが明らかにされ、こうしたAEDのメリットは救急隊が到着するまでの時間に関わらず認められた。心停止した人を見かけた場合にAEDを行うことの大切さがあらためて示されたといえる。

(あなたの健康百科編集部)

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