腸内細菌の変化で認知症に!
日本では高齢化の進展によって認知症患者が急増しており、その数は約462万人(2012年時点)といわれる。さらに、ほぼ同程度の約400万人(2012年時点)もの患者が存在するといわれるのが、認知症の前段階に当たる軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment;MCI)だ。国立長寿医療研究センターもの忘れセンターでは、外来患者の便を収集、解析して腸内細菌と認知機能の関係を検討。腸内細菌の変化によりMCIの発症リスクが上昇するとScientific Reports(2019年12月18日オンライン版)に発表した。
MCIを発症するリスクが約5倍に
国立長寿医療研究センターでは、2016年に認知症の病態や治療法を検証する全国規模の研究「オレンジレジストリ」をスタートさせるなど、認知症に関するさまざまな臨床研究を行っている。このたび、同センターもの忘れセンター副センター長の佐治直樹氏らは、もの忘れ外来を受診した患者に認知機能検査やMRI検査を実施した上で検便サンプルを収集、解析し、腸内細菌とMCIの関係について調べた。
腸内細菌の解析には、便から細菌由来のDNAを抽出して腸内細菌を網羅的に解析できる「T-RFLP法」を採用。収集した臨床情報は同センター内のバイオバンクで管理した。
解析の結果、MCIのグループでは認知機能が正常なグループと比べ、「バクテロイデス」という種類の腸内細菌が多いことが分かった。バクテロイデスは、MRI検査で大脳白質病変が見つかったグループや、海馬の萎縮度を表すVSRADスコアが高かったグループでも多かったことから、MCIのリスクを約5倍に高める原因であると判明したという。
今回の発見について、同氏らは「腸内細菌が認知機能に関連しているという新たな知見は、臨床的意義が非常に大きい」とコメント。「腸内細菌の詳細な解析が認知症制圧の新たな切り口となり、新規予防法開発への糸口になるかもしれない」と展望している。
(あなたの健康百科編集部)