週1程度の激しい運動で死亡リスクが低下(安定冠動脈疾患患者3万人超の国際研究)
病状が安定している安定冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)の患者では、週に1〜2回の激しい運動を行うと死亡リスクが低下することが、イタリア・フェラーラ大学のSimone Biscaglia氏らの研究で示された。一方で、週に3回以上激しい運動を行っても、死亡リスクの低下効果は認められなかったという。詳細は医学誌 European Journal of Preventive Cardiology(2019年9月26日オンライン版)に掲載されている。
軽度運動グループに比べ全死亡リスクが19%低下
近年の研究から、運動は安定冠動脈疾患患者の健康を害することはなく、むしろQOL(生活の質)の向上や予後の改善など、好ましい影響をもたらすことが明らかにされている。しかし、運動の最適な頻度と強さのレベルについては、一致した見解が得られていない。
そこでBiscaglia氏らは、世界45カ国における通院管理中の安定冠動脈疾患患者3万2,370人を最長で5年間追跡調査し、運動が長期的な経過に及ぼす影響を検討した。対象を患者の自己申告に基づき、「ほとんど運動しないグループ」5,223人(16.1%)、軽い運動をほぼ毎週行う「軽度運動グループ」1万6,634人(51.4%)、激しい運動を週1〜2回行う「強度運動週2回以下グループ」5,427人(16.8%)、激しい運動を週3回以上行う「強度運動週3回以上グループ」5,086人(15.7%)の4つに分類し、心血管疾患による死亡(以下、心血管死)+心筋梗塞+脳卒中の複合リスクや、全ての死因による死亡(以下、全死亡)のリスクなどについて調査した。なお、激しい運動は息切れ、心拍数の増加、発汗をもたらす運動と定義した。
検討の結果、軽度運動グループを基準(100)とした心血管死+心筋梗塞+脳卒中の複合リスクは、強度運動週2回以下グループで82と最も低かった。それに対し、強度運動週3回以上グループでは94で軽度運動グループと同程度だった。そして、複合リスクが最も高かったのは、ほとんど運動しないグループの131だった。
さらに、強度運動週2回以下グループでは、全死亡、心血管死、脳卒中のリスクが最も低いことも分かった。軽度運動グループを100とすると、強度運動週2回以下グループの全死亡リスクは81、心血管死リスクは79、脳卒中リスクは74といずれも低かった。一方で、心筋梗塞リスクは4つのグループに差は見られなかった。
今回の研究において、安定冠動脈疾患患者では週1〜2回の激しい運動が心血管死や全死亡リスクの低下と関連しているものの、それ以上に激しい運動を行ってもリスク低下効果は上積みされなかった。これらの結果を踏まえ、Biscaglia氏らは「安定冠動脈疾患患者の健康増進においては、激しい運動を頻回に行うことではなく、継続可能な運動を積極的に行い、座っている時間を減らすことを目標にすべきである」と指摘している。
(あなたの健康百科編集部)