金銭管理能力の低下、年のせいではないかも...?
誰でも年を取ると、買い物の支払いの際に手間取ったり、帳簿の管理がうまくできなくなったりする。とはいえ、こうした変化を「もう年だから」と軽く見ない方がいいかもしれない。米・デューク大学精神・老年医学教授のP. Murali Doraiswamy氏らの研究から、お金の計算や管理にまつわる問題は認知症の前兆である場合があることや、脳にたまった蛋白質の量に応じて生じる可能性があることが示された。詳細は医学誌 J Prev Alzheimers Dis(2019年5月28日オンライン版)に掲載されている。
金銭管理能力の低下にアミロイドβ沈着が関連
研究グループは、画像診断を用いたアルツハイマー病の先導的研究(ADNI)に参加した243人(55〜90歳)のデータを解析し、お金の計算や帳簿の管理、収支の把握といった金銭管理能力と、アルツハイマー病の原因になるとされるアミロイドβ蛋白質(Aβ)の脳皮質における沈着との関連を検討した。参加者の内訳は、認知機能正常者144人、アルツハイマー病の早期段階に当たる軽度認知障害(MCI)者79人、アルツハイマー病患者20人だった。
金銭管理能力は、FCI-SF (Financial Capacity Instrument Short Form)と呼ばれる検査で評価。脳皮質のAβ沈着量は、ポジトロン断層撮影(PETスキャン)画像を用いて測定した。
その結果、FCI-SFの合計得点は認知機能正常者と比べてMCI者、アルツハイマー病患者で低かった。また、認知機能正常者、MCI者、アルツハイマー病患者にかかわらず、Aβの沈着量が多い人ほどFCI-SF検査の得点は低く、金銭概念(銀行、借金など金銭に関する単語の意味)の理解力や、収支の計算といった金銭管理作業を完了する能力が低下していることも分かった。
この研究から、金銭管理能力は既にアルツハイマー病と診断された患者だけでなく、MCIの人でも低下しており、それはAβの沈着の程度と関連していることが明らかになった。また、正常な加齢でも、Aβの沈着はお金の計算や金銭的な判断に要する時間が長くなることと関連していることが示された。
研究グループは「今後も認知症患者が増加すること、こうした患者は金融詐欺の被害に遭いやすいことを考慮すると、金銭管理能力とAβ沈着の関連に注目した今回のような研究の重要性は高い」と強調している。
(あなたの健康百科編集部)