バニラの香り成分に鎮痛効果
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アイスクリームやお菓子のフレーバーとしておなじみのバニラは、主成分のバニリンによる甘い香りが特徴的である。バニリンは香水やアロマオイルにも使われるなどリラックス効果があるとされるが、そうした効果はバニラの香りが持つ甘いイメージによるものなのか、バニリンの生理的作用によるものかは明らかでなかった。今回、川崎医療福祉大学、川崎医科大学、中村学園大学短期大学部の共同研究グループは、マウスを用いた実験でバニリンが持つ生理的作用を検討。バニリンには鎮痛作用と筋弛緩作用があることを確認したという(Biomedicine & Pharmacotherapy 2019; 115: 108879)。
痛みに対する感受性が低下
研究チームは、ケージ内に入れた20匹のマウスを、バニリンを吸引させたグループとさせないグループの2つに分け、バニリンの香りに対するマウスの嗜好性と行動様式の変化について調べた。
まず、マウスにバニリンの香りをかがせて、魅力的に感じるか反発するかについて調べると、両グループに差は認められなかった。次に、両グループに対し8種類のテストを行わせて行動様式を調べた。その結果、バニリンを20分間吸引させたマウスでは、ホットプレートに触れた際に前足を引っ込めるまでの時間が延長していた。他にも、バニリンを吸引させたマウスでは、握力テストで金網をつかんで引っ張る力が低下していた。一方、活動量、認知機能、うつ様行動、攻撃的反応についてのテストでは、両グループに差は認められなかった。
こうした結果を踏まえ、研究グループは「バニリンには痛みに対する感受性を低下させる作用と筋肉を弛緩させる作用がある」と考察。「今回の発見は、新しいリラックス方法の提案につながるだけでなく、鎮痛作用や筋弛緩作用を目指した新薬の開発にもつながる可能性がある」と展望している。
(あなたの健康百科編集部)