仕事のストレスと睡眠障害、組み合わさると危険度up
厚生労働省の『平成29年国民健康・栄養調査』によると、高血圧(収縮期血圧140mmHg以上)の成人の割合は男性37.0%、女性27.8%と、およそ3割に及ぶ。仕事のストレスや睡眠不足は、健康な人であっても心血管疾患の発症リスクを高めるが、高血圧は心筋梗塞や脳卒中などの入り口となる疾患だ。血圧が高いだけでも、既に心血管疾患による死亡リスクは高まるが、そのような人が仕事のストレスや睡眠障害を抱えたらいったいどうなるのだろうか。ドイツの研究グループは、高血圧に仕事のストレスと睡眠障害が組み合わさると、同じ血圧でそれらのストレスがない労働者と比べて、心臓発作や脳卒中、狭心症、心筋梗塞などによる死亡リスクがおよそ3倍に跳ね上がるという長期追跡調査結果をEuropean Journal of Preventive Cardiolog(2019年4月27日オンライン版)に発表した。
高血圧の労働者を対象に長期にわたって追跡調査
1984年から1995年にドイツ南部で25〜74歳の男女を対象に行われたMONICA/KORAコホート研究の参加者から、高血圧で心血管疾患や糖尿病を発症していない労働者1,959人を抽出。①仕事のストレスも睡眠障害もない(1,353人)、②仕事のストレスだけあり(279人)、③睡眠障害だけあり(255人)、④仕事のストレスも睡眠障害もあり(72人)ーの4グループに分け、心血管疾患発症との関係を長期間にわたって追跡調査した。
なお、仕事のストレスとは責任は求められるが裁量がない状態、睡眠障害は寝つきが悪い(入眠障害)や途中で起きてしまう(中途覚醒)を指している。仕事のストレスも睡眠障害もあるグループは、そのどちらもないグループに比べて女性の割合が多く、年齢が高めで学歴は低いという特徴が見られた。また、身体活動量が比較的少なく、肥満の割合が多かった。
仕事のストレスも睡眠障害もない人より死亡リスクが3倍に跳ね上がる
平均17.8年の調査期間中に、CHD(狭心症や心筋梗塞といった冠状動脈性心疾患)による死亡が73人、CVD(心臓発作や脳卒中、心不全などの心血管疾患)による死亡が134人確認された。グループ別に見たCHD死亡率とCVD死亡率は、仕事のストレスと睡眠障害のどちらもあるグループがそれぞれ4.75人(1,000人当たりの年間発症数、以下同)、7.13人と最も高く、次いで睡眠障害ありのグループの3.44人、5.95人、仕事のストレスありのグループの2.60人、4.99人、どちらもないグループの1.61人、3.05人の順だった。
さらに、仕事のストレスも睡眠障害もあるグループでは、どちらもないグループと比べて、CHDによる死亡リスクが3.22倍、CVDによる死亡リスクは2.45倍に跳ね上がることが示された。
このリスクの度合いは、喫煙や飲酒、学歴、身体活動、肥満度、血圧、脂質異常といった他の要素を調整してもほとんど変わらなかった。
慢性疾患の人に対しては、職場でのストレスマネジメントが特に必要
こうした結果を受けて、研究グループは「高血圧の労働者では、仕事のストレスと睡眠障害が心血管疾患による死亡に複合的に影響することが初めて示された。このデータは、最近ますます注目を集めている職場でのストレスマネジメントの重要性を支持するものになるかもしれない。仕事のストレス管理や睡眠治療などに職場での介入が有効だとする報告が相次いでいるが、特に、高血圧のような慢性疾患を抱える労働者に対して行うよう考慮されるべきだ」と述べている。
(あなたの健康百科編集部)