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あなたのお子さんの眼は大丈夫?

タブレットPC(以降、タブレット)やスマートフォン(以降、スマホ)などのデジタルデバイスの普及は、社会に多くの利益をもたらした。その一方で、スマホ難聴、スマホ老眼など、新たな健康被害も生まれている。デジタルデバイスの普及の波はいまや子供たちにも及び、スマホを使いこなす姿は珍しくない。デジタル教科書の導入も眼の前だ。その陰で、子供たちの健康がむしばまれている可能性は否定できない。特に気がかりなのは眼の健康だ。あなたのお子さんは大丈夫だろうか。

先ごろ開催された日本眼科医会主催のプレスセミナーでは、この問題について大阪大学大学院感覚機能形成学教授の不二門 尚氏が講演した。

スマホの視距離ではピント合わせに1.7倍の努力が必要

文部科学省は、2020年までに「小中学生の生徒1人につき1台の電子タブレットの普及」を目指しており、「児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック」を公開している。その中には、蛍光灯の映り込みによる反射を極力抑えることや、そのための姿勢、目線、画面との角度などが細かく書かれている。タブレットの場合、ガイドブックに従うことが子供の眼を守る最も基本的な方法と言えそうだ。

では、画面も字も小さいスマホの影響はどうなのか。不二門氏によると、普通の書籍であれば本と眼の間の視距離は約30cmだが、スマホの場合は約20cmと短いため「ピントを合わせる」、「寄り眼をする」努力が1.7倍必要となる。つまり、それだけ眼の筋肉に緊張を強いているわけだ()。同氏も、スマホで読書中の視距離が眼に与える影響について研究しており、健常者でも視距離20cmでは30cm、50cmに比べて両眼の視覚系への負荷が大きく、疲れやすいことを明らかにしている。この影響は、健常者はもちろんだが、斜視の傾向を持つ子供たちにより大きな影響を与えるという。

図.視距離の差が眼に与える影響

斜視傾向がある場合、単眼視や複視の可能性も

斜視とは、両眼の視線が合わなくなる病気で、片方の眼は正しく目標に向かっているのに、他方の眼が外側(外斜視)や内側(内斜視)、あるいは上下に向いてしまう。不二門氏は、先述した研究を間欠性外斜視(ぼんやりとしているときにだけ眼がずれる)でも行っており、視距離20cmでスマホを見続けると、片方の眼でしか見ることができない単眼視になる可能性を報告している。

さらに、近年増加傾向にあり、スマホとの関連が強く疑われているのが急性共同性内斜視である。これは5、6歳の年長児および成人に突然起こる原因不明の内斜視で、モノが二重に見えてしまう(複視)。これまでの報告では、内斜視で1日4時間以上スマホを使用し複視を自覚した人がスマホの使用を1カ月控えると、眼のずれの角度(内斜視角)が改善することが示されている。斜視の傾向にある子供が気を付けることとして、同氏はスマホの他に立体(3D)映画の視聴を挙げる。飛び出し画像を見ているときには、スクリーンよりも前で画像を捉えるため、寄り眼の角度が強くなり、眼の筋肉への負担も大きいからだ。同氏は「モノが立体的に見える(立体視)能力は、生まれてから成長に合わせて発達し、6歳ごろに完成する。しかし、斜視が有ると良好な立体視が得られなくなる。この時期の立体映画の視聴はやめた方が良い」と呼びかけている。

読書時視距離30cm以上・30~40分ごとの休憩、屋外活動増加で近視の予防を

眼の"病気"はもちろんだが、親として最も気にかかるのが"視力"への影響ではないだろうか。不二門氏によれば、日本の小学生の裸眼視力1.0未満の割合は、1979年の18%から2014年には30%へと増加している。また、これまでの研究から、成長期の近視の度数が強いほど、成人になってから網膜の病気や緑内障になりやすいことが分かっている。では、成長期の子供を近視からどのように守れば良いのだろうか。まず、同氏が日常生活で避けるべきこととして挙げるのが①30cm未満の視距離で読書をすること、②30分以上続けて読書をすること-の2点である。これらを行っている人の近視のなりやすさは、行っていない人よりもそれぞれ2.5倍、1.5倍高いことが分かっている。また、屋外活動の時間を増やすことも効果的だ。同氏によると、屋外活動を1日に1時間多くすることで近視のなりやすさは1.13倍低くなる。つまり、スマホを使う時間を1時間減らし、外で遊ばせることが、子供の眼を守ることにつながるというわけだ。

最後に同氏は、スマホ使用時の平均視距離は20cmと短く、紙媒体の30cmよりも眼が疲れやすいこと、内斜視の傾向がある人は同じ視距離でのスマホ使用は避けた方がよいことを再度強調。その上で、「成人になってからの近視による視機能障害を減らすためにも、学童期に、読書などの際には30cm以上の視距離をとる、30~40分ごとに目を休ませる、屋外活動の時間を増やすなどの配慮が、子供たちの今と将来の健康維持につながることを理解し、実践してほしい」と締めくくった。

(あなたの健康百科編集部)


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