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アルツハイマー病の超早期に現れる特徴とは

アルツハイマー病は、前兆をいかに早く捉えられるかが予防のカギとなる。東京大学大学院などの研究グループは、アルツハイマー病による脳内での変化は始まっているものの、認知機能障害の症状は現れていない「プレクリニカルAD」の状態にある日本人高齢者を3年間追跡。その結果、プレクリニカルADの高齢者では、記憶検査と遂行機能検査における「学習効果」が失われている傾向が示された。詳細は、11月26日の「Alzheimer's & Dementia」(2018;4:645-651)に掲載されている。

J-ADNIから認知機能正常の高齢者84人を抽出

近年、アルツハイマー病の根本的な治療を目指して行われた薬剤の試験が、相次いで不成功に終わっている。これは、薬剤を投与する時期が遅過ぎたことが原因と考えられている。そのため、アルツハイマー病の超早期に当たるプレクリニカルADの段階は、現在開発中の治療薬が有効性を発揮するための最適な投与病期として注目されている。

そうした中、研究グループは、アルツハイマー病の初期段階における臨床経過を明らかにする目的で、2008~14年に日本で実施されたJ-ADNI研究のデータを用いて、プレクリニカルADの現れる頻度や特徴を調べた。J-ADNI研究では、60~84歳の認知機能が正常な高齢者を登録し、3年間にわたって追跡した。

今回の解析対象は、J-ADNI研究に参加した認知機能正常高齢者のうち、登録時にアミロイドPET検査、脳脊髄液検査のいずれか一方または両方を受けた84人。アルツハイマー病に特徴的な変化であるアミロイドβの脳内蓄積の有無を確認した。また、0、6、12、24、36カ月の時点で、認知機能や臨床症状の評価を行った。

「記憶」検査で乏しい学習効果

その結果、84人中19人(22.6%)の脳にはアミロイドβが蓄積していて、プレクリニカルADと判定された。アミロイドβ蓄積の有無で比較すると、年齢、性、教育年数に差はないが、蓄積のあった群ではアルツハイマー病のリスク遺伝子とされるアポリポ蛋白(apo)E ε4遺伝子型を持つ人が明らかに多かった。また、プレクリニカルADの頻度は、欧米で行われた類似の研究と比べてやや低めだった。その理由について、研究グループは「apoE ε4遺伝子の保有頻度が東洋人では低いこと、J-ADNI研究の参加者の年齢が低かったことなどが考えられる」とコメントした。

登録時の認知機能検査や臨床的な評価は、アミロイドβ蓄積の有無にかかわらずほとんど差がなかった。しかし、3年間の経時的変化を見ると、アミロイドβが蓄積していた群ではミニメンタル検査(MMSE)や論理的記憶検査で得点が上昇しにくい傾向が示された。繰り返し同じ認知機能検査を行うと得点が改善する現象を「学習効果」と呼ぶが、蓄積あり群ではこの学習効果が喪失していると考えられた。

「遂行機能」検査でも学習効果に問題が

プレクリニカルADの中でもより進行した病期では、脳脊髄液中のリン酸化タウ蛋白という物質が増加すると考えられている。そこで研究グループは、脳脊髄液検査を行ったプレクリニカルAD 12人を、リン酸化タウ蛋白が増加していた5人と、正常の7人に分けて比較。登録時のデータに差はなかったが、認知機能検査の結果を経時的に見ると、リン酸化タウ蛋白増加群では、遂行機能を評価するトレイルメイキングテストやカテゴリー流暢性検査で、学習効果の喪失傾向が示された。

今回の研究から、プレクリニカルAD高齢者はapoE 遺伝子のε4遺伝子型を高頻度で保有している、認知機能検査を半年から1年置きに反復して行った際の学習効果が弱まっているなどの特徴が示された。研究グループは「これらの特徴は、プレクリニカルAD高齢者の効率的な拾い上げに有用で、プレクリニカルADを対象とした試験を行う際などに役立つだろう」と評価。さらに「こうした特徴に留意すれば、認知機能をより効率的に評価できる尺度の創出につながるかもしれない」と期待を寄せている。

(あなたの健康百科編集部)


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