大学時代のスポーツ歴が将来の健康を左右か
スポーツは健康増進につながるといわれている。浜松医科大学健康社会医学講座の柴田陽介医師と尾島俊之教授らのグループは、30歳以上の男女を対象としたスポーツや運動に関する調査データを解析。学生時代の中でも、特に大学時代のスポーツ歴が将来の健康につながることを明らかにした。詳細は、「運動疫学研究」(2018; 20: 80-89)に掲載されている。
大学時代のスポーツは影響力が大きい
日本では、学生時代に部活動などでスポーツをする人が多い。しかし、学生時代のスポーツ歴が年を重ねてからの健康にどのような影響をもたらすかは不明だ。スポーツによる長期的な健康増進効果が示されれば、将来の健康のために、どの時期にスポーツをすればよいかが分かる。
そこで今回、研究グループは、運動やスポーツの実施状況を把握する目的で行われたアンケート「スポーツライフ・データ2012」のデータを使って、学生時代のスポーツ歴と現在の健康状態との関連を調べた。解析対象は30歳以上の男女1,714人。現在の健康状態について、良いか悪いかを尋ねた。学生時代のスポーツ歴は、小学生、中学生、高校生(15~17歳ごろ)、大学生(18~22歳ごろ、高等専門学校・短期大学を含む)の各時代について、運動部への所属やスポーツクラブなどへの加入の有無を尋ねた。
その結果、現在の健康状態が良好な人は74.9%、不良の人は25.1%だった。小学生、中学生、高校生、大学生時代にスポーツ歴のある人は、それぞれ33.5%、61.7%、41.3%、22.2%だった。現在の健康状態が良い人の割合は、小学生時代にスポーツをしていた群では、していなかった群の1.04倍だった。同様に、中学生時代では1.06倍、高校生時代では0.87倍だった。それに対し、大学生時代では1.77倍と、現在の健康状態が良い人の割合が高かった。つまり、小、中、高時代のスポーツ歴は現在の健康状態にあまり影響しないが、大学生時代のスポーツ歴は影響力が大きいことが示された。
この結果について、研究グループは「大学時代の付き合いは、他の年代の付き合いより長続きするといわれている。大学時代にスポーツをしていると、その後も付き合いの多い状態を保つことができ、年を取ってからの健康状態に良い影響をもたらすのではないか」と推察。加えて「学生時代のスポーツは、勝敗を競うことを目的とする競技スポーツがほとんどである。大学生になると、そもそも競技力に差があるため、新しいスポーツを始めることに二の足を踏むことも考えられる。大学生になってからでも始められるような生涯スポーツの普及が、将来の国民の健康増進につながるかもしれない」との考えを示した。
(あなたの健康百科編集部)