夜、人はストレスに弱くなる?
人のストレスに対する防御機構は、朝から昼にかけては正常に働くが、夜は十分に機能しないことが北海道大学などの研究で分かった。研究グループは、「今回の知見は、体のリズムが乱れやすい現代社会でのストレスマネジメントへの応用が期待できる」としている。詳細は海外の神経薬理学の専門雑誌に報告された(Neurosychopharmacol Rep 2018年11月27日付オンライン版)。
夜は交感神経系のストレス防御機構しか働かない
この研究を行ったのは、北海道大学大学院教育学研究院准教授の山仲勇二郎氏、よつ葉乳業中央研究所研究員の元島英雅氏などのグループ。
実験では、27人の健康な若者にスピーチ課題や暗算課題などを課すストレス試験を行い、試験開始前と試験開始後10分ごとに30分後まで唾液中のコルチゾル濃度を測定した。また、実験中は心電図を計測し心拍数の変化を観察した。起床2時間後に実験を行う朝グループ(14例)と、起床10時間後に行う夜グループ(13例)の2つが設定された。
コルチゾルは、ヒトの代表的なストレス防御機構である「視床下部‐下垂体‐副腎皮質系」の活動度を示す指標であり、その濃度が高いほどストレスに対する防御が働いていることを意味する。コルチゾル濃度は日内リズムが知られており、朝方に高く夜にかけて低くなる。一方、心拍数は交感神経系のストレス防御機構の指標とされる。
実験の結果、朝グループではストレス試験によりコルチゾル濃度が上昇し、正常なストレス応答が確認できた。一方、夜グループではストレス試験を行っても、コルチゾル濃度はあまり上昇しなかった。研究グループは、コルチゾルの日内リズムが関係していると見ている。一方、心拍数は両グループともにストレス試験で高くなっていた。これらの結果から、朝方では「視床下部‐下垂体‐副腎皮質系」と交感神経系の両方がストレスに反応していたが、夜方では交感神経系しか反応しなかったと結論した。
研究グループは、朝はストレスに対する防御機構が正しく働くが、夜はストレスにうまく対応できないことが示されたとしている。
(あなたの健康百科編集部)