炭火焼き料理で心血管死亡リスクが増加?
料理で石炭や薪、木炭などの固形燃料を長期間使用することが、心血管疾患(CVD)による死亡リスクを増加させるという研究結果が、欧州心臓病学会(ESC 2018、8月25~29日、ミュンヘン)で報告された。研究を行った英・University of OxfordのDerrick Bennett氏は「料理で固形燃料を使っている人は、なるべく早く電気かガスに切り替えるべきだ」と述べている。
炭による空気汚染が心血管疾患につながる?
固形燃料を使って料理をすると空気が汚染され、心血管疾患による早期死亡につながる可能性があると以前からいわれてきたが、これまで明確なエビデンスは示されていなかった。今回の研究では、料理における固形燃料の使用と心血管疾患死との関連に加え、固形燃料からクリーン燃料(電気、ガス)に切り替えた場合の潜在的影響を調べた。
検討では、2004~08年に中国の34万1,730人(30~79歳)を対象として登録。料理をする頻度と、使用している主な燃料について尋ね、固形燃料の使用時間を推計した。週に1回以上自宅で料理し、かつ心血管疾患に罹患していない人に分析対象を絞り、死亡登録と病院の記録から2017年までの死亡率を算出した。
分析対象者(平均年齢51.7歳、女性75.7%)の固形燃料使用期間を見ると、22.5%が30年以上、24.6%が10~29年、53.0%が10年未満だった。10年未満例のうち、45.9%は固形燃料を一度も使ったことがなかった。
電気、ガスへの切り替えでリスク低減
340万人・年当たり8,304人がCVDにより死亡。教育歴、喫煙などのリスクで調整した結果、固形燃料の使用が10年長くなるごとに心血管疾患死亡リスクは3%増加(95%Cl 1~4%、P=0.0002)。30年以上の固形燃料使用者は、10年未満例よりも心血管疾患死亡リスクが12%高かった(同3~21%、P=0.0045)。
さらに、固形燃料を使用し続けた場合に比べ、固形燃料からクリーン燃料に切り替えた場合、心血管疾患死亡リスクが低下することも明らかになった。切り替えが10年早いと、心血管疾患死亡リスクは5%下がった(95%Cl 1~8%、P=0.0067)。また、切り替えて10年以上経過すると、心血管疾患死亡リスクはクリーン燃料を使用し続けた場合と同等になった。
(あなたの健康百科編集部)