病気の経験者による支援で再診率低下‐心の病に対するケア-
統合失調症など心の病気には、医師による治療はもちろん、病気の経験者による手助けも心強い。英・University College LondonのSonia Johnson氏らは、その有効性を検証した研究結果を報告。心の病気に悩む患者の再診率が低下したという。
病気からの回復を促すワークブックも活用
Johnson氏らは、医療チームによるケアを受けた統合失調症や双極性気分障害、うつ病、不安障害などの患者441人を対象に、それらの病気の経験者(以下、経験者)による支援効果を検証した。
対象は、自身の力で回復を促すためのワークブックを配布する群(対照群)220人と、経験者による支援を行い、ワークブックを併用する群(経験者支援群)221人に無作為に分けられた。
ワークブックには、回復へ至るための目標を設定し、地域および支援ネットワークで居場所を作り、早めに再発のサインに気付くための情報が記載されている。対照群にはワークブックを送付しただけだったが、経験者支援群では経験者がワークブックの活用法を教えた。
経験者による支援は週1回1時間で、計10回実施した。支援内容はワークブックの活用法にとどまらず、患者が抱える問題について話を聞き、自身の回復過程で身に付けたスキルや対処法を伝えることなどにも及んだ。
"先輩"の経験や親身になる姿勢がポイントに
検証開始1年後、症状が急変し再受診した患者の割合は、対照群の38%に対して経験者支援群では29%と目立って低かった。
また、ワークブックを読んだ患者の割合は対照群で84%、経験者支援群で88%と同程度だったが、計画を記入し活用している患者の割合は対照群の28~44%に対し、経験者支援群では58~64%と高かった。
検証を行ったJohnson氏は、この結果を受けて「心の病気の経験者は、自身の経験を生かし、親身で温かい支援が行えているのではないか。患者にとって回復へのロールモデルにもなりうる」と述べている。
ただし、「支援のどの要素が、再受診率の低下に役立ったかは不明である」と指摘した。さらに、「ワークブックを受け取っただけの対照群でも、再受診率は英国の全国平均を下回っていたため、ワークブックも一定の効果を果たす可能性がある」との見方を示している。
(あなたの健康百科編集部)