徹夜が危ない!? 認知症のリスクにも
アルツハイマー病の原因は明らかにされていないが、患者の多くは脳内にアミロイドβが蓄積されており、アルツハイマー病の発症にはアミロイドβが大きく関わっていると考えられている。このほど、米国立アルコール乱用・依存症研究所などの研究グループは、睡眠とアミロイドβの蓄積との関連を調べるため、健康人を対象に調査を実施。その結果、たった一晩の徹夜であっても、睡眠不足により脳内のアミロイドβが増加することが分かったと報告した。詳細は、4月24日発行の「Proc Natl Acad Sci USA」(2018; 115: 4483-4488)に掲載されている。
徹夜明け、アミロイドβが5%上昇
脳には、睡眠中に脳細胞内の老廃物を排出する機能が備わっていると考えられている。過去の研究から、短期間の睡眠不足によりマウスの組織液内のアミロイドβ値が上昇することが示されている。しかし、ヒトの脳内でのアミロイドβ蓄積に及ぼす影響については検証されていない。
そこで研究グループは、22~72歳の健康な男女20人(平均年齢39.8歳)を対象に、アミロイドPET検査により、前夜の睡眠が十分な状態(ベースライン)と徹夜明けの寝不足な状態での脳内のアミロイドβ量を測定した。PET検査にはフロルベタベンが用いられた。
その結果、20人中19人で、徹夜明けのアミロイドβ量がベースライン時に比べ、右側の海馬および視床で明らかに増加していた。この傾向は、年齢や性に関係なく見られた。
アミロイドβの蓄積が確認された右海馬および視床は、特にアルツハイマー病の初期段階で傷害されやすい領域である。ちなみに、認知症の前段階である軽度認知障害とアルツハイマー病を有する人では、健康な高齢者と比較して、脳内のアミロイドβ量がそれぞれ21%、43%増加しているとの報告がある。しかし、今回観察された一晩の徹夜によるアミロイドβ量の増加は5%だった。
また、脳内アミロイドβ量の増加は、自己申告で評価した気分の変化と関連していた。アミロイドβ量が多いと、疲れや不安、いらいら感が強まり、反対に友好的な感情や幸福感などが弱まる傾向が示された。
今回の結果について、研究グループは「たった一晩徹夜しただけでも、脳内のアミロイドβ量が局所的に増加することが示された。このアミロイドβの蓄積は、睡眠中に活発化する老廃物排出機能の欠如によるものと解釈している」とコメント。ただし「われわれの知見は、睡眠不足に伴うアミロイドβ蓄積のメカニズムを解明するものではない」とし、「今後、さらに研究を重ねていきたい」と展望した。
(あなたの健康百科編集部)