ウオーキングが高齢者の死亡を減らす
健康には中等度以上の運動が推奨されるが、高齢者において最も一般的な運動であるウオーキングと寿命の関係を調べた研究はほとんどない。米国がん協会のAlpa V. Patel氏らは、米国の高齢者14万人を対象とした大規模前向きコホート研究で運動と死亡リスクとの関係を検討した結果、短時間のウオーキングでも死亡リスクを低下させることを、Am J Prev Med(2017年10月11日オンライン版)で報告。高齢者には健康や長寿のため、わずかでもウオーキングを行うことを推奨している。
推奨レベルの実施は半数以下
米国スポーツ医学会と米国心臓協会が発行する身体活動ガイドラインでは、心血管疾患、2型糖尿病、脳卒中、がん、死亡のリスクを低下させるため、中等度の運動なら週に150分以上、激しい運動であれば75分以上行うことを推奨している。しかし、米国でこれを満たしている高齢者は65~74歳で42%、75歳以上で28%程度に過ぎない。
今回Patel氏らは、米国の大規模コホート研究Cancer Prevention Study(CPS)Ⅱの参加者、男性6万2,178人(平均年齢70.7歳)、女性7万7,077人(同68.9歳)を対象に、ウオーキング単独、あるいはウオーキングを他の中等度または激しい身体活動と組み合わせて行った場合の死亡リスクを検討した。
週2時間未満のウオーキングでも効果
男性の5.8%、女性の6.6%は中等度以上の身体活動を行っていなかった(不活発群)。それ以外の参加者の大半がなんらかの形でウオーキングをしており、男性の46.9%、女性の49.3%はウオーキングのみ行っていた。1999~2012年の13年間の追跡期間中に、男性2万4,688人、女性1万8,933人が死亡した。
Patel氏らは、週に2時間未満のウオーキングを行っている群を比較のもととなる対照群とし、関連する因子の影響を調整した上で、死亡リスクの相違を検討した。
その結果、不活発群では対照群と比べて全死亡のリスクが26%上昇した。一方、推奨レベルの1~2倍に当たる週に2~6時間のウオーキングを実施していた群では、全死亡のリスクが20%低下した。
以上の結果から、Patel氏らは「ウオーキングは推奨レベル以下でも全死亡のリスク低下に関連した。推奨レベル以上のウオーキングは、さらにリスクを低下させた。医師は高齢の患者に対し、推奨レベル以下であっても健康や長寿のために歩くよう促すべき」と提言している。