電子たばこによる禁煙効果を否定(禁煙に取り組んだ800人を調査)
加熱式電子たばこによる禁煙効果については世界的に意見が分かれている。国立がん研究センターは、同センターがん対策情報センターたばこ政策支援部の平野公康氏らが禁煙に取り組んだ人800人を対象に実施した調査の結果、電子たばこによる禁煙の有効性が否定されたと発表した。同センターは「電子たばこは禁煙の手段として推奨または促進すべきではない」との見解を示している。今回の研究結果はInt J Environ Res Public Health(2017; 14: E202)で発表された。
20~69歳が対象
電子たばこが禁煙や喫煙本数に及ぼす影響については世界的に利点と欠点が指摘されている。日本でも電子たばこが禁煙に有用として販売されているが、実際に効果があるかどうかは証明されていない。そこで平野氏らは、電子たばこによる禁煙への有効性を確認するため、過去5年間に禁煙に取り組んだ人を対象に調査を行った。
2015年1月31日~2月17日にたばこの使用に関するインターネット調査に参加した9,055人のうち、20~69歳で過去5年間に禁煙に取り組んだ798人を対象に、禁煙方法(市販のニコチンガム、市販のニコチンパッチ、電子たばこ、禁煙外来の受診、ニコチンを含まない薬の処方、ニコチン置換療法、禁煙本などを用いた自力での禁煙)と禁煙の状況について調査、解析した。
その結果、禁煙失敗者(現在喫煙者)は545人(68.3%)、禁煙成功者(現在非喫煙者)は253人(31.7%)だった。
電子たばこで禁煙成功者が37%減少
禁煙方法(複数選択)として実施された割合が最も高かったのは「禁煙本などを用いた自力での禁煙」(禁煙失敗者の81.8%、成功者の87.0%が実施)、次いで「薬局・薬店で販売されている禁煙補助剤」(同27.7%、26.1%)、「電子たばこ」(同22.0%、15.4%)の順だった。
解析の結果、電子たばこを使用した人は使用しなかった人よりも禁煙に成功した人が37%少なく、電子たばこを使用することで禁煙成功のオッズ比(起こりやすさ)が約3分の1低下した。一方、禁煙外来を受診しニコチンを含まない薬物療法を受けた人では、禁煙成功のオッズ比が約2倍に上昇した。
今回の結果から、国立がん研究センターは「今回の研究は調査上の限界や制約はあるものの、電子たばこによる禁煙の有効性を否定する結果が示された。電子たばこが国内の喫煙者の減少に貢献する可能性は低く、禁煙の手段として推奨または促進すべきではない。電子たばこの販売に対して適切な規制がなされる必要がある」との見解を示している。