病による自殺に即効性のある薬が見つかる
うつ病では自殺の危険性が高まるが、自殺を止めるのに有効な薬剤はなかった。全身麻酔薬であるケタミンに、自殺を考えてしまう気持ち(自殺念慮)を短時間で抑える作用のあることが臨床試験で分かった。米国のコロンビア大学メディカルセンターの研究グループが報告した(Am J Psychiatry 2017年12月5日オンライン版)。
気分、うつ、疲労の改善にも効果
臨床試験の対象となったのは、自殺念慮のスケールであるSSI(Scale for Suicidal Ideation)スコアが4点以上の大うつ病の成人80例。うち43例が抗うつ薬を服用していた。低用量ケタミンを注射する群と、比較の薬剤である麻酔薬ミダゾラムを注射する群の2つに分けた。
注射後24時間のSSIスコアの低下は4.96ポイントとケタミン群の方が優れており、統計学的に意味がある差だった。SSIスコアの50%以上の低下を「薬が有効な症例」と定義したところ、その割合はケタミン群で55%、ミダゾラム群で30%。ケタミン群では、気分、うつ、疲労でもミダゾラム群よりも改善が見られた。
近年発見された抗うつ薬には自殺念慮に対する効果が確認されているものもあるが、効果が表れるまでには数週間かかり、短時間での抑制は期待できない。研究グループは「ケタミンは即効性があり、こうしたケタミンの作用を研究すれば新しい抗うつ薬の開発に道をつくるだろう」と述べている。