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心筋梗塞の瞬間死リスクを運動で低下

虚血性心疾患は世界でも主要な死因の1つで、その予防は公衆衛生上の優先事項となっている。デンマーク・Bispebjerg Frederiksberg University HospitalのKim W. Hansen氏らは、身体活動と心筋梗塞(MI)急性期(即時〜28日以内)の死亡との関連について検討し、結果をEur J Prev Cardiol(2021年2月10日オンライン版)に報告。「MIの急性期死亡のうち62%が瞬間死(instant death)だったが、身体活動により瞬間死のリスクを低下できることが示唆された」と述べている。

18%が急性期に死亡、うち62%が瞬間死

心疾患を予防するために身体活動が有益であることは、これまで多くの論文で報告されている。MIの場合、身体活動を通して虚血性障害の低減と血流の増加が期待できる。しかし、身体活動とMIの急性期死亡リスクの関連を調べた前向き研究はほとんどない。そこでHansen氏らは、身体活動の程度が心臓発作後の予後に与える影響について検討。欧州(英国、デンマーク、オランダなど)の10のコホート(149万5,254例)のうち、フォローアップ中にMIを発症した2万8,140例(平均年齢51.2〜71.2歳)を対象とした。

1週間の総エネルギー消費量〔1週間当たりの代謝当量(MET)・時〕に基づいて、対象を①座りがち群(7MET・時未満)②軽度群(7〜16MET・時)③中程度群(16.1〜32MET・時)④高度群(32MET・時超)−に分類。年齢、性、基礎疾患、喫煙、社会経済状態などの因子を調整し、身体活動度とMIによる死亡(即時〜28日以内)との関連を解析した。4,976例(17.7%)がMI発症から28日以内に死亡し、うち3,101例(62.3%)が瞬間死だった。

座りがち群と比べて、活動度が高い群ほど瞬間死リスクが低かった〔軽度群:調整済みオッズ比(aOR)0.79、95%CI 0.60〜1.04、中程度群:同0.67、0.51〜0.89、高度群:0.55、0.40〜0.76〕。28日以内の死亡でも同様の傾向であった(それぞれ同0.85、0.71〜1.03、同0.64、0.51〜0.89、同0.72、0.51〜1.00)。軽度〜中程度群間で瞬間死における異質性が検出されたが(I2=47.3%)、28日以内の死亡では示されなかった。

ガイドラインの推奨事項を強力に支持

今回の検討では、座りがちな人と比べて身体活動が中程度の人と高度の人ではMI後の瞬間死リスクがそれぞれ33%、45%低く、28日以内の死亡リスクは36%、28%低かった。Hansen氏らは「MI患者の約18%が発症から28日以内に死亡しており、MIが深刻な疾患であることが実証された」と指摘。「身体活動が少ない場合でも致命的なMIに有益な可能性はあるが、その点について確固たる結論を出すことはできない」と述べている。

同氏は「今回の結果は『臨床診療における心血管疾患予防に関する2016年欧州ガイドライン(GL)』(Eur Heart J 2016; 37: 2315-2381)に記載された、健康な成人の身体活動に関する推奨事項を強力に支持するものだ」としている。同GLでは、全ての健康な成人が週に少なくとも150分の中程度の身体活動、週に75分の高度の身体活動、またはそれらと同等の組み合わせを行うことを推奨している。

  • 世界保健機関の国際疾病分類第10版では「1時間以内の死亡」と定義

(慶野 永)

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