コロナ「変異株」にワクチンは効くのか?

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型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンについて、現在までに得られている知見について国立感染症研究所は『新型コロナワクチンについて 第1版』として報告書にまとめ、2月16日に公表した。日本国内において、英国、南アフリカ、ブラジルで検出されたものと同じ型のSARS-CoV-2の変異株への感染例が報告されており、ワクチンの変異株への有効性に対して懸念が指摘されている。報告書では、これまでに特定された変異株について報告するとともに、各社のワクチンの変異株への有効性や課題などを挙げている。

英国変異株で二次感染率や死亡リスクの増加の可能性も

SARS-CoV-2の変異株とは、遺伝情報の一部が変異したSARS-CoV-2であり、現時点までに英国、南アフリカ、ブラジルで検出された複数のタイプが確認されている。従来のSARS-CoV-2よりも感染力が強いとされ、ワクチンの有効性への懸念も指摘されている。

現在までに報告されている変異株は、英国で昨年(2020年)12月上旬に急速なCOVID-19患者の増加を認めたことを契機に見つかった「VOC-202012/01」、南アフリカで同月上旬に急速なCOVID-19患者の増加が起きた際に検出された「501Y.V2」、日本で今年1月2日にブラジルから到着した渡航者から検出された「501Y.V3」。これらの変異株の感染者が世界各地から報告され、幾つかの国では変異株がかなりの割合を占めつつあり、世界的な流行が懸念されている。

国立感染症研究所が2月12日に発表した『感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念されるSARS-CoV-2の新規変異株について(第6報)』によると、「VOC-202012/01、501Y.V2、501Y.V3のいずれも感染性・伝播のしやすさに影響があるとされるN501Y遺伝子を有し、特にVOC-202012/01は二次感染率や死亡リスクの増加の可能性が疫学データから示唆されている」と指摘。中でも501Y.V2については、「過去の感染によって得られた免疫や承認されているワクチンによって得られた免疫を回避する可能性が指摘されており、暫定結果ではあるが数社のワクチンでは有効性の低下を認めている」としている。

3種のSARS-CoV-2ワクチンの有効性に差

報告書では、現在世界で承認または開発中の3種類のSARS-CoV-2ワクチンの特徴や有効性、SARS-CoV-2変異株などに対する有効性などを取り上げている。米・ファイザー/ビオンテック、米・モデルナ/米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が開発を進めているのはmRNAワクチン、英・アストラゼネカ/オックスフォード大学が開発を手掛けるのはウイルスベクターと呼ばれるワクチンで、タイプが異なる。

mRNAワクチンは、スパイク蛋白質(ウイルスがヒトの細胞へ侵入するために必要な蛋白質)の設計図となるmRNAを脂質の膜に包んだ製剤。スパイク蛋白質に対する中和抗体産生および免疫応答が誘導されることで、SARS-CoV-2による感染から防御する。一方、ウイルスベクターワクチンは、病原性のないまたは弱毒化したウイルスベクターに抗原蛋白質の遺伝子を組み込んだ組み換えウイルスを投与するワクチン。

日本では、ファイザーのコロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)(商品名コミナティ)が今年2月14日に特例承認となり、同月17日に医療従事者への接種が開始された。また、アストラゼネカから2月5日にワクチン(ワクチン名AZD1222)の承認申請が行われ、医薬品医療機器総合機構(PMDA)で承認審査が行われている(モデルナ/NIAIDのワクチン名はmRNA-1273)。

3種のワクチンはいずれも2回接種が原則で、2回接種した際の臨床試験における有効性(予防効果)は、ファイザーのワクチンで95.0%、アストラゼネカのAZD1222で70.4%、モデルナのmRNA-1273では94.1%であり、多少の差が見られる。

AZのワクチンは英国変異株に有効も、南ア変異株には効果なし

今回公開された報告書では、世界的に流行が懸念されているSARS-CoV-2変異株に対するワクチンの有効性についても触れている。

まず、英国変異株VOC-202012/01に対するワクチンの有効性への影響は「不明な点も多い」としつつ、アストラゼネカ/オックスフォード大が共同開発しているワクチンの第Ⅲ相臨床試験(実薬群4,236人、対照群4,270人)では、暫定的な野生株への予防効果は84.1%、変異株への予防効果は74.6%と、変異株への有効性が認められた。変異株による発症が実薬群で7人、プラセボ群では27人認められているが、「発症患者数が少なく、追跡期間は非常に短い」といった課題や、VOC-202012/01にE484K変異が加わった新たな変異株も報告されているという。

一方、南アフリカの変異株501Y.V2に関しては、アストラゼネカ/オックスフォードがワクチンの有効性を検証するためウィットウォーターズランド大学が実施した臨床試験で、同変異株に対し有効性が示されなかったと発表された。間接的なエビデンスとして、501Y.V2と同じ変異をスパイク蛋白のレセプター結合部位に持つシュードタイプウイルスが、変異を持たないシュードタイプウイルスと比較して、ファイザー/ビオンテック、モデルナ/NIAIDのmRNAワクチンで誘導される中和抗体により、若干中和されにくいことを示唆する報告がある。さらに、501Y.V2に関する最大の懸念点である抗原性の変化に最も影響を与えているのは、スパイク蛋白のE484K変異であるとされている。

製薬各社は501Y.V2のスパイク蛋白をもとにしたブースターワクチンの開発を開始または検討しているという。

ブラジル由来の変異株501Y.V3については、感染性の増強が懸念される英国変異株VOC-202012/01や南アフリカ変異株501Y.V2と同様に、N501Y変異を認める他、抗原性の変化が懸念される501Y.V2と同様にE484K変異を認めるという。ただし現時点では、501Y.V3に対するワクチンの有効性に関する直接的なデータはないという。

(小沼紀子)

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