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東京「夜の街」クラスターの患者像

camera_alt Shutterstock_Jirsakさん

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染拡大が続く東京都では、流行初期の段階から夜の歓楽街が感染リスクが高い場面の1つとされていた。国立国際医療研究センター国際感染症センターの高谷紗帆氏らは、夜の歓楽街への曝露とSARS-CoV-2のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査結果との関連を検討。その結果、夜の歓楽街への曝露群ではPCR陽性率が63.8%と、非曝露群の23.0%に比べ有意に高いことが明らかになったと、Epidemiol Infect(2020年10月13日オンライン版)に発表した。

対象は歓楽街の近隣病院でPCRを受けた患者

国立国際医療研究センター病院は、都内有数の歓楽街である新宿区歌舞伎町から2kmの地点にある。同院でSARS-CoV-2のPCR検査を受けた者は、夜の歓楽街で生じたクラスターに関与する患者像を反映している可能性がある。

そこで高谷氏らは今回、夜の歓楽街で生じたクラスターの疫学的特徴を明らかにする目的で、今年(2020年)3月9日~4月26日に同院でSARS-CoV-2のPCR検査を受けた者を対象に、夜の歓楽街への曝露と検査結果との関連を検討した。

夜の歓楽街は、バーやパブ、ホスト・ホステスクラブ、ナイトクラブ、ライブハウス、カラオケ店、性風俗店と定義。夜の歓楽街への曝露は、発症の1カ月前までの勤務者および発症の1カ月以内の利用者と定義した。

勤務者が3分の2、利用者は3分の1

期間中に、国立国際医療研究センターの発熱相談外来および感染症外来で実施されたSARS-CoV-2のPCR検査は1,517件。そのうち、夜の歓楽街への曝露群は196件(12.9%)だった。曝露群の3分の2(129例)が勤務者、3分の1(67例)が利用者だった。

年齢の中央値は、非曝露群の39歳に対して、曝露群では31歳と有意に若かった(P<0.001)。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症度は両群で同等だった。

傾向スコア解析を行ったところ、PCR陽性率は非曝露群の23.0%に対し、曝露群で63.8%と有意に高かった(P<0.001)。

包括的アプローチによる備えが必要

高谷氏らは研究の限界点として、今回の結果を一般人口に当てはめることはできないかもしれない、情報は主に患者アンケートから取得したため報告バイアスのリスクがある、夜の歓楽街への曝露群の感染者数が過小評価されている可能性があるーなどを挙げた。その上で「今年3~4月に当センターで行ったSARS-CoV-2のPCR検査において、夜の歓楽街への曝露は陽性と有意に関連していた。COVID-19の大流行に備え、夜の歓楽街における感染拡大リスクの低減を図るため、包括的なアプローチを模索する必要がある」と指摘している。

ちなみに、今年10月23日に新型コロナウイルス感染症対策分科会が発表した政府への提言では「SARS-CoV-2の伝播は主にクラスターを介して拡大することから、今冬に備えクラスター連鎖を抑えることが必須」と言及。そのために、感染リスクが高まる場面として①飲食を伴う懇親会など②大人数や長時間におよぶ飲食③マスクなしでの会話④狭い空間での共同生活⑤居場所の切り替わりーの5つを挙げ、注意を喚起している。

(比企野綾子)

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