温暖化と寒冷化、死亡率高いのはどっち?

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気候変動に伴う極端な気象条件が健康障害に影響を及ぼし、大きな関心が寄せられている。近年では猛暑が原因で、外来および入院患者が増加している。しかし、米・School of Public Health, University of Illinois ChicagoのLee S. Friedman氏らの研究によると、気温が原因となった死亡例の大半が低気温によるものだったという。詳細はEnviron Res(2020年7月11日オンライン版)に報告された。

診療記録を気象データと紐付け

地球の気温が上昇するにつれ、極端な高温と低温の気象変動が頻回に生じ、激しさを増している。それに伴い気温関連傷害(temperature related injuries)の発生リスクが高まる可能性がある。

Friedman氏らは、将来の公衆衛生政策の指針モデル策定を視野に、米・イリノイ州での気温関連傷害による健康への影響を検討した。対象は、2011~18年に同州の医療機関で、気温関連傷害の治療を受けた外来患者および入院患者とした。またそれぞれの患者について、診療記録を治療を受けたときの気象データと紐付けた。

通常より5~10倍の温度関連死を確認

粗年間外来受診率は、10万人当たり熱中症が23.6人、寒冷障害が23.2人であった。しかし粗年間入院率については、寒冷障害は熱中症の約4倍以上に上った(10万人当たり10.2人vs. 2.4人)。

熱中症2万4,233例のうち関連死は70例であったが、かぜ関連疾患に罹患した2万3,834例のうち関連死は1,935例で、気温関連傷害の94.0%を占めていた。

今回、診療録と米国立気象局 (National Weather Service)、検死官のデータをリンクさせたところ、通常報告されている5~10倍の温度関連死が確認されたという。また、黒人および65歳以上の高齢者の入院リスクは約2倍に及び、電解質異常、心血管疾患、腎不全などの複数の合併症を有する例が多かった。

さらに、イリノイ州における2011~18年の気温関連傷害の治療費は約10億ドルであったことも明らかになった。

厳寒日数が少なく低体温症予防の認識が低い

今回の結果を踏まえ、Friedman氏らは「気候変動は猛暑日の日数を増加させていると同時に、極端な寒冷現象の発生頻度にも影響を及ぼしており、寒冷日はより深刻な健康被害をもたらす可能性がある」と結論している。

また猛暑日に比べ寒冷日で死亡率が高かった要因については、低体温症になると体温調節能が低下すること、過去数十年間で寒冷日が減ったため、頻度が少ない寒冷に身体が慣れるまでの時間が少ないことが考えられるとしている。「体温が37.0℃から35.0℃に低下しただけで低体温症を来しやすく、脳を保護する器官やシステムが停止し始め、制御が極めて困難になる」と同氏らは指摘している。

現在の公衆衛生の焦点は、ほぼ例外なく熱中症対策に当てられており、同氏らによると「猛暑日に比べ寒冷が厳しい日数は少なく、低体温症予防を認識する機会が少ないため」だという。

(田上玲子)

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