世界の乳がんは増加傾向

1ed73d38 28f6 43c9 8dec 9fbdec035301 camera_alt Shutterstock_Kobkit Chamchod さん

世界の乳がん罹患率は上昇傾向にあり、患者増加による疾病負担が世界的に増大していることが示された。カナダ・Alberta Health ServicesのEmily Heer氏らが、41カ国44集団における閉経前および閉経後乳がんの罹患率と死亡率、長期的な動向を解析した結果をLancet Glob Health(2020; 8: e1027-e1037)に発表した。閉経前・後を区別して乳がんの世界的な傾向を検討した研究は今回が初という。

50歳以上を閉経後乳がんと定義

国際がん研究機関(IARC)の世界がん統計GLOBOCANのデータによると、女性では乳がんが最も頻度の高いがんで、2018年の新規がんの24%を、がん死亡の15%を占めており、今後も増加が予測されている。乳がんは、閉経前と閉経後で原因や予後が異なり、若年発症患者では後の職歴や経済状態に大きく影響を及ぼす可能性がある。

Heer氏らはGLOBOCANのデータを用いて閉経前・閉経後の乳がんの2018年における年齢標準化罹患比(ASIR)と年齢標準化死亡比(ASMR)を解析。閉経状態は年齢を代用として50歳以上に発症した乳がんを閉経後と定義した。1998~2012年の動向は、IARCのCancer in Five Continents plus(CI5plus)データベースを使用し、41カ国44集団(欧州22カ国、北米2カ国5集団、アジア10カ国など、米国はアジア系、黒人、白人、ネイティブアメリカンの4集団に分類)で平均年変化率(AAPC)を算出して評価した。

高所得国で閉経前乳がん罹患率が上昇

2018年に世界で閉経前と閉経後の乳がんはそれぞれ約64万5,000例、約140万例が診断され、死亡は13万例以上、49万例以上と推計された。

国際連合開発計画(UNDP)の人間開発指数(HDI)*の低位国では乳がん全体の55.2%が閉経前に発症。この割合は開発レベルの上昇に伴い低下し、日本などHDIの最高位国では、22.7%にすぎなかった。

HDI最高位国では、閉経前および閉経後乳がんのASIRが高く(それぞれ人口10万対30.6、253.6)、HDI低・中位国の約2倍だった。

HDI低位国では、閉経前乳がんのASMRが高く(人口10万対8.5)、この値はHDI最高位国および高位国では大幅に低下した(同3.3、2.8)。

一方、閉経後乳がんは開発度の違いによるASMRの差は小さかった。

韓国、日本、タイで長期的な増加が顕著

乳がん発症の長期的な動向は、一般化線形回帰モデルを用いてAAPCを算出し評価した。その結果、44集団中20集団で閉経前乳がんのASIRが、24集団で閉経後乳がんのASIRが有意に上昇した。特に高所得国で閉経前乳がんが増加し、経済的移行期にある国を中心に閉経後乳がんが増加する傾向が見られた。

11集団では、閉経前および閉経後乳がんの両方で有意な増加傾向が見られた。このうち増加が最も顕著だったのは、15年の研究期間中に50歳以上の閉経後年齢におけるAAPCが一貫して高かった韓国〔閉経前AAPC 5.8%(95%CI 5.1~6.5%)、閉経後AAPC 6.1%(95%CI 5.7~6.5%)〕、日本〔同3.2%(2.6 ~3.8%)、5.0%(4.5 ~5.6%)〕、タイ〔同1.9%(1.0~2.9%)、4.0%(3.4~4.6%)〕の3カ国だった。

世界的な初発予防策が必要

以上の結果から、Heer氏らは「閉経前と閉経後の乳がんによる疾病負担が世界的に増大し、乳がん治療の地域格差が拡大している傾向が示された。低・中所得国では依然として早期診断と治療へのアクセスが課題だが、将来の乳がん負担を抑制するには、全世界で過体重と飲酒量を減らし、身体活動および母乳保育を増加させる初発予防の取り組みが必要」と結論している。

また、共著者で同施設のMiranda Fidler-Benaoudia氏は「閉経前と閉経後の乳がんを区別することで、両者のさまざまな傾向を明らかにできた。それにより予防対策を最適化して世界の乳がん負担を低減できる可能性がある」と述べた。

特に、2018年における閉経後乳がんのAAPCは1998年のASIRが最も低かった国々で最大となった。これらの多くは低・中所得国だったが、HDIが極めて高い韓国と日本でAAPCが最大になった背景として、Heer氏らは「アジアの高所得国の多くでは40歳からのマンモグラフィ検診を推奨しており、スクリーニング効果がAAPCの増大により大きな影響を及ぼす可能性がある。このことで両国におけるAAPCの高さを説明できるかもしれない」と考察している。

※平均余命、平均就学年数、国民総所得の側面から特定の国における平均達成度を評価する尺度。4段階(最高位国→高位国→中位国→低位国)に分類される

(坂田真子)

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