日本食多く摂ると死亡リスク低下
東北大学大学院公衆衛生学分野の松山紗奈江氏らは、日本人の生活習慣病予防や健康寿命の延伸を目的に実施している大規模コホート研究JPHC Studyの調査結果を基に、日本食の摂取と死亡との関連を検討。その結果、日本食の高摂取により全死亡、循環器疾患死、心疾患死の各リスク低下が示唆されたと、Eur J Nutr(2020年7月16日オンライン版)に発表した。
日本食8項目の摂取量をスコア化
松山氏らは、JPHC Studyのデータを用いて、日本食摂取が死亡に及ぼす影響を検討した。解析対象は、同研究に参加した45~74歳の男女9万2,969例、追跡期間中央値は18.9年であった。
日本食の摂取は、147品目の食物摂取頻度調査票(FFQ)を基に、8項目(ご飯、味噌汁、海草、漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶、牛肉・豚肉)の摂取量をスコア化したパターンで評価した。8項目のうち、牛肉・豚肉を除く7項目は摂取量が中央値より多い場合を各1点、牛肉・豚肉は摂取量が中央値より少ない場合を1点として、計0~8点でスコアを算出した。
男女別に日本食パターンのスコアで四分位に分け、四分位最低群(0~2点)に対するその他の群における死亡(全死亡、がん死、循環器疾患死、心疾患死、脳血管疾患死)リスクを調べた。
日本食パターン最高四分位群で全死亡リスクが14%低下
中央値で18.9年の追跡期間中に、2万596例が死亡した。最低四分位群に対して、最高四分位群(6~8点)では全死亡リスクが有意に低かった〔ハザード比(HR)0.86、95%CI 0.81~0.90、傾向性のP<0.001〕。循環器疾患死リスク(同0.89、0.80~0.99、傾向性のP=0.007)も有意に低かった。
続いて、8項目それぞれを摂取量の多寡で2分し、少ない群に対する多い群の全死亡リスクを調べた。その結果、海草、漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶の摂取量が多い群では、全死亡リスクがそれぞれ6%、5%、6%、3%、11%有意に低下することが示された。
日本食の高摂取が死亡リスク減に寄与か
日本食の高摂取群で全死亡、循環器疾患死、心疾患死の各リスクが低下した理由について、松山氏らは「日本食パターン高スコア群では、海草や漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶に含まれる健康に有益な栄養素(食物繊維、抗酸化物質、カロテノイド、イコサペント酸エチルなど)の摂取量が多かったからではないか」と考察。「各食品の死亡リスク低下への影響は小さいが、食品単体ではなく日本食パターンとして評価することで、各食品に含まれる栄養素が死亡リスクの低下に寄与した可能性がある」と付言している。一方、研究の限界として、1回のFFQによる評価であるため、食習慣の変化については考慮していないことを挙げている。
さらに、今回の結果で日本食パターンとがん死亡との関連は認められなかった点について、同氏らは「がんの部位によって食品や栄養素との関連が異なるためではないか」と推察。「今後は、日本食と特定のがんとの関連を検討する研究が必要だ」と展望している。
(比企野綾子)