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2100年までに日本の人口が半減

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米・University of Washington, Institute for Health Metrics and Evaluation(IHME)のStein Emil Vollset氏らは、世界疾病負担研究(GBD)2017のデータを用いて2017~2100年における世界195カ国・地域の人口変動を解析した。その結果、世界の人口は2064年にピークに達した後、2100年まで減少が続くとの予測をLancet(2020年7月14日オンライン版)に発表した。

高齢者増加と若年者減少で年齢構成に変化

Vollset氏らはGBD2017のデータを用いて2017~2100年における世界の人口変動を解析したところ、世界の人口は2064年に97億3,000万人のピークに達すると予測された。その後、2100年には87億9,000万人まで減少するとしており、これまでの予測値よりも20億人少なくなるという。

最も急速な人口減少が予測される国はアジア、中欧、東欧諸国で多く、2100年までに日本、タイ、イタリア、スペインを含む23カ国で50%以上減少すると予測された。

日本は2017年→2100年に人口が1億2,836万人→5,972万人に減少して世界10位→38位へ大きく後退、生産年齢人口も7,100万人→2,900万人に大幅減少すると予測された()。

図. 2017年、2100年における世界の人口トップ10の推移

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                     (The Lancet

また、出生率の低下と平均余命の延長に伴い、2017年→2100年に世界の5歳未満は41%減少(6億8,100万人→4億100万人)、80歳超は6倍に増加(1億4,100万人→8億6,600万人)、5歳未満と80歳超の人口比率が1:2になると予測された。

Vollset氏は「高齢者が増加する一方で若年者が減少すれば、相対的に労働者と納税者が減少して高齢者医療・福祉の財源確保が困難になる」と指摘している。

出生率低下が世界的に加速

世界の合計特殊出生率(TFR:1人の女性が生涯に出産する子供の平均数)は2017年→2100年に2.37→1.66に低下し、2100年には195カ国中183カ国でTFRが人口置換水準(人口の移出入がない状態で人口維持に必要な最低出生率)の2.1を下回ると予測された。

2017年→2100年の日本のTFRは1.33→1.32で変化はなく、人口置換水準までの回復は見込めないと予測された。

サハラ以南アフリカでは同期間にTFRが4.6→1.7に低下するが、死亡率の低下と生殖可能年齢の女性の増加により人口は3倍(10億3,000万人→30億7,000万人)になると予測された。

Vollset氏は「女性に対する教育の普及と避妊へのアクセスの向上により出生率の低下が促進し、人口増加が停止しつつあることが示唆された。人口減少への対応は政策上の最重要課題だが、女性の性と生殖に関する健康と権利を脅かすものであってはならない」と強調している。

人口減少が世界の経済勢力図に影響

国内総生産(GDP)は2035年に中国が米国を抜いて世界1位になるが、2050年以降は急速な人口減少により経済成長が鈍化し、2098年には米国が1位に復帰すると予測された。

インドは2017年→2100年に生産年齢人口が7億6,200万人→5億7,800万人に減少するが、同期間に生産年齢人口が中国を超えGDPは7位→3位に上昇すると予測された。

ナイジェリアは2017年→2100年に生産年齢人口の増加(8,600万人→4億5,800万人)に支えられ、GDPは28位→9位に上昇すると予測された。

日本は人口が半減するものの、GDPは2017年→2100年で3位→4位にとどまると予測された。

移民が人口規模と経済成長の維持に有用

Vollset氏らは「今回の研究結果から、リベラルな移民政策を推進する国では、出生率が低下しても現在の人口規模が維持され経済成長を支えられる可能性が示唆された」と指摘している。

英・University College London/Lancet Migration共同議長のIbrahim Abubakar氏は同誌の付随論評(2020年7月14日オンライン版)で「移民の受け入れは生産年齢人口の減少に対する解決策となりうるが、TFRを回復するには国際政治を根本的に再考する必要がある」と述べ、「移民送出国において優れた人材を育成するには、これまでにない国際協力により戦略的な援助や資金提供を行う必要があるだろう」と指摘。「最終的には、移民は全ての国にとって選択肢ではなく必須項目になるはずだ」と付言している。

(太田敦子)


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