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花の画像でストレス緩和

camera_alt Shutterstock_ yanikapさん

農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の研究グループは、花の画像観賞が脳の活動に影響を与え、心理的、生理的に生じたストレス反応を緩和することが明らかになったとし、Science Direct(2020年6月25日オンライン版)に発表した。

花の画像で血圧が低下

これまでに、自然環境下での散歩や自然風景のビデオ視聴が気分向上やストレス緩和につながることが報告されている。中でも森林など「緑」によるストレス緩和効果は複数の報告で明らかにされている。一方、花の観賞によるストレス緩和効果については十分な検証が行われてこなかった。

そこで研究グループはSuperLab 4.5 softwareを活用し、被験者に不快と感じるような画像を見せてストレスを与えた上で、花の画像と花以外の画像を見せる3件の研究を実施。感情、血圧、ストレスホルモン(コルチゾル)への影響を比較検討した。また、花によるストレス軽減効果の背景にある脳内メカニズムを明らかにするため、花を見たときに生じる特異的な脳活動を調査した。

まず「花」と聞いて思い浮かべる形を大学生34人(男性27人、平均年齢20.3歳)に調査。その結果を基に花の形を決め、「花の画像」として使用する写真を選定した。

1つ目の研究では、心理的ストレス負荷がかかった状態で花の画像が血液に及ぼす影響を調査。健康な被験者35例(平均年齢24.4歳)を対象に、事故場面、ヘビなど多くの人が不快と感じるような画像を6秒間提示してストレス負荷をかけた(ストレス期)後、①白い菊(花)②青空③椅子―の画像をそれぞれ6秒間提示し、26秒間安静にする(回復期)試験を各10回、計30回繰り返して血圧の変化を記録した。また、ストレス期と回復期における気分(情動)についても聞いた。

その結果、ストレス期にネガティブな情動が起こったが、回復期には椅子の画像よりも花や青空の画像で有意に回復した(P<0.01)。また花の画像ではストレス期~回復期に最大で血圧が3.4%低下、他の2つの画像と比べて平均血圧が約2mmHg低い状態が8秒間続いた。青空のような心地良いと感じる人が多い画像でも心理的な改善効果は認められたが、身体に生じた生理的ストレス反応(血圧上昇)をより効率的に低減させたのは花の画像であった。

不快な記憶やネガティブ感情を抑制

2つ目の研究では、ウェブサイトで募集した健康な被験者32例(全て男性、平均年齢21.6歳)に対し、不快と感じるような画像を4分間提示(ストレス期)した後、花の画像または花のモザイク画像を8分間提示し(回復期)、唾液中コルチゾル値を比較した。その結果、花のモザイク画像では変化がなかったのに対し、花の画像ではコルチゾル値が約21%低下した(効果量dz=0.78、95%CI 0.008~0.020、P<0.01)。

3つ目の研究では、ウェブサイトで募集した神経障害や精神障害の病歴がない右利きの被験者17例(男性10例、平均年齢25.5歳)を対象に、不快と感じるような画像を提示した後に①花の画像②花のモザイク画像③十字の固視点画像―のいずれかを観賞した時の脳活動を機能的MRI(fMRI)で測定。花の画像はそれ以外の画像に比べて右脳の扁桃体から海馬に至る領域で活動の低下が認められた。

研究グループは「この領域における脳活動の低下は、花の画像の観賞によって不快と感じるような画像の想起が抑制され、さらにネガティブな情動も減少したことを反映していると考えられる」と述べた上で、「花の画像が情緒的な要因を緩和するディストラクション効果を誘発し、ストレス反応を緩和させた」と推察している。

「生花」にさらなる効果を期待

今回の研究により花の画像がストレス軽減に有効であることが明らかになり、花を日常生活に取り入れることで、ストレスを上手に軽減できる可能性が示された。また、毎日のように変化し、人の目を引く生花は花の画像よりもストレス反応の低減に効果的であると推察されるという。

研究グループは「今後、生花の観賞が健康にどの程度寄与するのかを明らかにしたい」と展望している。

(渡邊由貴)


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