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禁煙治療用アプリ、年内に保険適用へ

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6年19日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の医療機器・体外診断薬部会の定例部会は、CureAppが研究開発したニコチン依存症治療アプリの薬事承認を了承した。同社代表取締役社長で呼吸器内科医の佐竹晃太氏は同日に東京都で記者発表会を開き、「定例部会で了承を得たことで、医師が処方する国内初の治療用アプリが誕生することとなった」と報告。今夏には正式に薬事承認され、年内に保険適用される見通し。(関連記事「スマホのアプリで禁煙治療」、「オンラインの禁煙診療の効果は対面診療と同等」)

ニコチン依存症の心理的依存に介入

日本では喫煙に関連する疾患で年間12万〜13万人が死亡し、喫煙はがんや循環器疾患、呼吸器疾患、生活習慣病などの危険因子となっている。しかし、現行の禁煙補助薬などを用いた禁煙治療の治療開始1年後における禁煙継続率は、約3割にとどまっている。

ニコチン依存症は、身体と心理の両面でニコチンに依存する疾患である。たばこを吸わないことで生じるいらいらや集中力の低下などの身体的依存に対しては禁煙補助薬が有効だが、ストレス解消や気分転換になるなど、喫煙習慣を肯定的に捉えている心理的依存に対してはこれまで十分な介入ができていなかった。佐竹氏は「介入が不十分だった心理的依存に対し、診療時以外の"治療空白"を埋めて禁煙継続をサポートする治療用アプリは、個々の患者の生活習慣や重症度に応じてアドバイスを行える。そのため、高い禁煙継続率を見込める新たな治療法になりうる」と説明した。

リアルタイムの治療ガイダンスを24時間365日受信

ニコチン依存症治療アプリは、慶應義塾大学とCureAppが共同で開発。患者用と医師用のアプリ、呼気中の一酸化炭素(CO)濃度を測定する携帯型呼気一酸化炭素濃度計数器(COチェッカー)で構成されている。

患者は、治療開始時に医師から治療用アプリの処方を受けた後、自身のスマートフォンにアプリをダウンロードし、医師が発行した処方コード(パスワード)を入力してログインする。アプリに日々の体調や気分、治療経過、呼気CO濃度を記録することで、個別の治療ガイダンスを24時間365日、リアルタイムで受信できる。治療ガイダンスは医学的エビデンスに基づいており、正しい知識の定着と行動変容を促し患者に禁煙への意欲を持続させ、治療効果を高めることが臨床試験で示されている。

禁煙率は約13%アップ

続いて佐竹氏は、スマートフォンアプリの臨床的な治療効果を実証する国内初の治験で、薬事申請の根拠となった国内第Ⅲ相臨床試験の結果について紹介した。

対象は全国31カ所の禁煙外来を受診した喫煙者584例。薬物療法およびカウンセリングを伴う12週間の標準的な禁煙治療に加え①24週間の治療用アプリを併用する介入群②治療用プログラムが入っていない(COチェッカーなし)対照アプリを使用する対照群−にランダムに割り付け、有効性を検証した。

その結果、治療開始24週後の禁煙継続率は対照群の50.5%に対し、介入群では63.9%と有意に高かった(オッズ比1.73、95%CI 1.24〜2.42、P=0.001、NPJ Digit Med 2020; 3: 35)。治療開始52週後の禁煙継続率についても対照群41.5%に対し、介入群52.3%と有意に高かった(同1.55、1.11〜2.16、P=0.010)。

同氏は「ニコチン依存症治療アプリは医薬品と同等の禁煙治療効果が期待でき、介入終了後も長期にわたり効果が持続することが確認できた」と評価。その上で、「治療用アプリは医薬品や医療機器など既存治療では介入が難しかった患者に対する新たな選択肢となる。今後さまざまな疾患領域に拡大され、より多くの患者を救えるポテンシャルの高い治療法となるだろう」と期待を示した。

(芦澤直子)

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