コロナ流行下の熱中症予防策を4学会が提言
日本救急医学会、日本感染症学会、日本臨床救急医学会、日本呼吸器学会の4学会は、6月1日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を踏まえた熱中症予防に関する緊急提言をまとめ、発表した。外出自粛による屋内の長時間化やフィジカルディスタンスの確保のために人と人とのつながりが減ることで、熱中症の発症リスクが上がるとして対応策を示した。
エアコン使用中の換気で室内温度を上げない工夫を
提言では、熱中症の多くは高齢者が屋内で発症していると指摘。中でも、熱中症弱者といわれる独居高齢者や日常生活動作に支障がある人に対して、特に注意して社会的孤立を防ぐ手立てを講じる必要があるとした。
高齢者では日常生活の中で起こる"非労作性熱中症"の発症が多く見られるという。周囲の人に気付かれにくく対応が遅れる危険性があるとして、周囲の人が電話やメール、SNSなどを活用して声掛けを頻回に行い、孤立を防ぐための取り組みをしてほしいとしている。
屋内での対策としては、家庭用エアコンは空気を循環させるだけで換気の機能はないため、適宜窓を開けて、風通しをよくするよう求めた。ただし、頻回に窓を開けたり、換気システムを利用すると室内温度が上昇することも考えられるとして、すだれやレースカーテンなどで直射日光の照射を避けるなど工夫して、こまめな室内温度の確認が重要だとした。
マスクは適宜外して休憩、暑さに備えた体づくりを
感染拡大を防止するためマスクの着用が求められているが、心拍数、呼吸数、二酸化炭素濃度、体感温度の上昇で体に負担がかかるため、適宜外して休憩するよう求めた。マスクをすることで口内の湿度が上昇するとの報告があり、口腔内の渇きが感じられないことも想定されるが、口渇感にかかわらず脱水リスクの高い小児や高齢者では塩分を含む経口補水液を頻回に摂取するよう呼び掛けた。
また今後、梅雨の合間や梅雨明け後などに突然気温が上昇したり、蒸し暑い日に熱中症の発症が増加するとされるため、室内・室外で適度に運動して体を徐々に暑さに慣らすという、暑さに備えた体づくりを勧めている。
救急診療の課題にも触れ、熱中症患者ではCOVID-19患者が訴えるような高熱やだるさなどの症状が見られるため、鑑別が難しい可能性があると指摘した。熱中症を発症した場合に対応の遅れにつながらないよう、毎日の体温測定や症状の記録など日頃から健康管理を行い、観察記録を付けることも有効だという。熱中症の疑いで受診した際に医師と共有することで、迅速な熱中症の治療が行えるだけでなく、COVID-19の発見、治療に移行できる可能性があるとして日頃の体調を記録、管理するよう求めた。
(小沼紀子)