第30回 働く仲間の高いモチベーションでフードサービスの未来を拓くONODERA GROUP   株式会社ONODERA GROUP 上席執行役員 市村 暢央氏

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最近、ガストロノミックな外食産業分野において注目の企業がある。株式会社 ONODERA GROUPだ。歌舞伎座の向かい側、路地に入ったビルにONODERA GROUPが運営する「銀座おのでら」は存在する。「銀座から世界へ」をスローガンに、鮨・天ぶら・鉄板焼。薪焼。ワイン&レストランを展開。店舗も銀座にとどまらず、ニューヨーク・ロサンゼルス・ハワイ・バリ・ロンドン・上海まで広がる。アメリカではミシュランの星も獲得しているのだ。

「銀座おのでら」の母体であるONODERA GROUPは、全国約2,300カ所で給食事業を展開する株式会社LEOC (レオックと、外食事業「銀座おのでら」のフードサービス事業を主軸に、ヒューマンリソース事業とスポーツマネジメント事業も展開。給食を主とする事業者としては珍しく、テレビCMまで放送している。

謎に包まれたONODERA GROUPとは、いったいどのような企業なのだろうか。同社上席執行役員市村暢央氏に、その全貌とトップの考えを伺うことにした。

銀座と世界で本格和食を展開する銀座おのでらとは

ONODERA GROUPとは、いったいどのような企業なのだろうか。

まずはその辺から、市村さんに紹介していただくことにした。

株式会社ONODERA GROUPは、1983年に札幌で創業したLEOCが母体と なっており、今の代表取締役社長である小野寺裕司はニ代目にあたります。創業者 は北海道のみの事業展開で、札幌から東京に拠点を移し、ここまでの発展に導いたのは現在の社長といっても過言ではありません。

LEOCの事業は、社員食堂などのビジネス&インダストリー分野、病院食といったヘル スケア分野、そして有料老人ホームに代表されるシニア分野からなる三本柱で構成されています。ONODERAGROUPはLEOCと、外食の『銀座おのでら』からなるフードサービス事業を屋台骨として、ヒューマンリソース事業、]リーグの横浜FCを運営するスポーツマネジメント事業から成り立っています。

ヒューマンリソース事業とは、東南アジア4か国で日本語と介護技術の教育を行い、人 材不足に悩む日本各地の病院や介護施設へ紹介する取り組みです。私たちのお客様である介護施設か人材難に陥れは、、給食事業にも支障を来たしかねません。そこでしっかりと勉強を積み、意欲も高い介護人材を紹介させていただき、施設様のお役に立ちたいと考えています。

2012年5月、『給食事業にメリットを生み出すことは、先回りして手掛けていこう』という考えに基づき外食事業を立ち上げました。私たちは競合他社との差別化を図るうえで、安売りや価格破壊は行いません。あくまでソフト面を充実させ、上質なものを提供する。それが実現できる人材の獲得や育成を行い、給食事業とのシナジーが生まれることを目指して、外食事業をスタートさせたんです。

札幌の鮨の名店『すし善』で社長が懇意にしていた職人に声をかけ、東京の銀座で鮨店を開いて7年。その後、元『すし善』の職人を総料理長に据え、鉄板焼と天ぷらの店舗をオープンさせました。さらに私が加わることでフィールドを広げ、ワイン&レストラン、薪焼と続きました。

銀座で名前を知っていただけるようになってきたので、次は世界に銀座の技術と心を届けようというのが海外進出のきっかけです。そこには小野寺社長自身、海外での滞在経験の中で『海外で食べる和食には、なんて日本の心が伝わらない料理が多いのだろうか』との想いがありました。

『銀座から世界へ』をスローガンに、ニューヨーク・ロサンゼルス・ハワイ・上海・パリ・ロンド ンと世界の主要都市へ出店。現在は銀座おのでらの総料理長が国内外すべての店舗を監修し、銀座ならではの技術と精神を浸透させています」

ONODERA GROUPが外食事業をスタートさせたのは、給食事業の価値向上という目的だった。その後、市村さんの貢献もあり、順調に業態と店舗数を拡大させ、今日( 2020年3月)では日本を含め、世界7か国・13店舗にまで広がっている。

給食はおいしくなくてはならない

病院で入院中の患者さんからよく聞かされるのは「食事がおいしくないので早く帰りたい」という言葉。ONODERA GROUPは外食事業の展開によって、自社の給食のイメージを急速に変えていった。市村さんは続ける。

「給食部門における病院食の合言葉は、『病院食っておいしくないと言わせない』。病院食につきものの塩味の物足りなさを旨味で補うなど、徹底してメニューを工夫しています。さらにLEOCはセントラルキッチン、つまり調理を巨大な厨房に集約し、各地に配送して提供することをしません。すべて事業者様の調理場で、きちんとした調理師を配属して料理します。おいしさという大きな競争力がついてきたおかけで、LEOCの味には高い評価をいただき、毎年約10 %の成長を続けています。

フォーシーズンズホテルをはじめ、高級ホテルの社員食堂も次々と受託させていただいて

おり、飲食のプロの方々からも賛同を得られたという自負もあります」

外食産業の問題点とONODERA GROUPの打開策

多角的に発展してきたONODERA GROUPは、外食産業が胞える人手不足の問題も正面からとらえ、企業内のネットワークを生かした独自の考え方で打開を図る。飲食店での勤務経験も長い市村さんのトーンは、ひときわ熱を帯びてくる。

「一般的に、外食業に従事する人たちの最大の問題は『家庭不和』なんです。労働時間が長いだけではなく、普通の人がご飯を食べている時間にご飯を提供するのが仕事ですので、一家団らんなど夢のまた夢。子供と顔を合わせるのも難しい。とても健全とは言えませんよね。その結果、外食産業は深刻な人手不足に陥っています。人がいなければ成り立たない事業なのに、人が集まらなくなってきています。例えば、若くして修業中であれは収入や休みか少なくても我慢できるかもしれませんが、家庭を持って子供が できれは、続けていけないでしよう。そうやって、優秀な人材がどんどん流出していくのをたくさん見てきました。

しかも、日本の高級外食は、欧米に比べ客単価が低すぎます。ガストロノミーという食文化は、時間をかけて多くの人の手を介して出来上がっています。フランス料理はその 最たるもの。料理に関わる人々の手間を安く買い叩いてしまう風潮は、そろそろ終わりに しなければいけません。

ONODERA GROUPのフードサービス事業がめざすのは、単に黒字を達成するだけではなく、よりいいもの、おいしいものを作り、それを作っている従業員が楽しく充実した生活か送れているかどうか。

給食事業の場合は早番や遅番など、比較的生活リズムに合わせたシフトを組みやすく、休みもきちんと取ることができます。

外食事業でも、労働環境の改善に取り組んでいます。『薪焼銀座おのでら』と「l’Eclat(レクラ)銀座おのでら」(ワイン&レストラン)では、常に同じスタッフで仕事をするのがベストと考え、ランチを行わず、水曜日と日曜日を定休日としています」

小野寺社長の従業員に対する想い

小野寺社長は、2017年から正社員の80歳定年制やサプラーの定年制廃止などを決め、働く従業員のことを最優先で考え実行されてきた。海外への外食事業の展開や起業CMも、その一環であると聞いた。

「LEOCの売り上げは900億円に迫りますが、それはすべて、グループ全体の従業員のおかげ。小野寺社長は『従業員を一番大切にしたい』と常に考えています。 ONODERA GROUPは『業界で一番給料が高く、残業が少なく、休みが多く取れる会社にしよう』という目標を持っているのです。

海外での外食事業の展開も、従業員の視野を広げモチベーションを高める狙いがあります。本店を構える銀座で働いて経験を積み、その後本人が望めば、海外の店舗に料 理長として活躍するチャンスがあるのです。単身赴任ではなく、住居も含めて会社が全 ての環境を提供し、世界各地で腕を振るうことかできます。一人ひとりが巣立っていくと、 後輩たちもそれを見て向上心が生まれますよね。こうした環境に魅力を感じ、他店から転職したり新卒で優秀な人材が入ったりと、良い循環ができてきています。

テレビCMを打ち出した理由は、従業員の家族も会社を担っているという考えからです。何をしている会社かは分からなくてもいい。従業員の家族に、『自分の家族はCMを流すような立派な企業で働いている』ということを感じていただきたいんです」

小野寺社長のアイデアを形にする

次々と畳みかけるように事業を展開し、先を見据えての効果的な投資も怠らない。そんな小野寺社長から、「これって面白いんじゃない?」と発せられたアイデアを具現化 するのが市村さんの役割だ。

「社長はアイデアマン。いろいろなことを発想しては、私たちに投げかけてきます。そこに焦点を合わせて具現化するのが私の仕事です。そのためには、失敗も次の糧にできるようなモチベーションの高い従業員が必要で、それが『銀座おのでら』の従業員一人ひとりの姿勢でもあります。

『これって面白いと思わないか?』と社長から問われたら、私たちはすぐにやらなければな りません。あえて言えば、社長が感じる『面白いこと』をさらに上回らないと、私の存在価 値はないんですよ。ひいては、銀座で遊び慣れている人の『面白いこと』も上回るもので はないといけません。

『薪焼銀座おのでら』も、当初は『かわむら』(東京・銀座)のようなステーキ店をイメージし、『薪窯の中で、薪火で焼いてみたらどうか』というアイデアでした。私はそこに気鋭のフレンチシェフを招聘し、ヨーロッパの伝統的な火力である薪で調理するフランス料理店にしました」

これからのONODERA GROUP



上席執行役員 市村 暢央氏


最後に、小野寺社長が見つめるONODERA GROUPの今後を訊いた。

「私たちONODERA GROUPは目標も高く、あと5年で4,000億円を達成しよ うと考えています。現状では十分な利益を生み出せていない事業もあります。それでも、社長は非常に長期的な視点から事業展開を行っています。『現状は十分な黒字を達成していなくても、会社としてうまく機能しているならそれでいいじゃないか』というのが社長の口癖です。

でも、すべてが上向きに回り出したら、私たちの目標達成もさほど難しいことではないでしよう」

かつて、ミシュランガイド東京発刊以来三つ星を続けるフランス料理店「カンテサンス」でシェフソムリエを務めていた市村さん。疲れた顔やだらしない姿勢は決して見せない、根っからのサービスマンであるキャラクターは当時のまま。それに加え、外食産業の現状を憂い、 ONODERA GROUPという舞台で変革をもたらそうとする頼もしさを見た。現場と経営という視点をバランスよく持った市村さんの手腕は、外食産業の将来にとっても明るい存在に違いない。



株式会社ONODERA GROUP
【URL】
http://www.onodera-group.jp/

【プロフィール】
伊藤章良(食随筆家)
料理やレストランに関するエッセイ・レビューを、雑誌・新聞・ウェブ等に執筆。新規店・有名シェフの店ではなく継続をテーマにした著書『東京百年レストラン』はシリーズ三冊を発刊中。2015年から一年間BSフジ「ニッポン百年食堂」で全国の百年以上続く食堂を60軒レポート。

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