第27回 リーダーズにオススメ、ハワイ・ホノルルの旬な店2019

091ef658 fb76 46f8 b6a8 edf28235ac42 camera_alt Shutterstock :emperorcosarさん

メディテラネオ(イタリア料理)

ハワイにフランス料理店は数える程しかないが、イタリア料理店は比較的多い。日本人観光客がイタリアンを好むからというのも一つの理由だろう。そのせいか、ハワイのイタリア料理店は日本人シェフが多く、いわゆるイタ飯と呼ぶ和風イタリアンである。なぜハワイに来てまで和風に直面するのか。ハワイでラーメン店に行くより虚しい気分である。

いっぽう、ハワイの気候風土や気質を好んでこの地で活躍するイタリア人もいないわけではない。今回はそんなイタリア人が経営するイタリア料理店を取り上げてみよう。「メディテラネオ」という。

場所はホノルルではグルメエリアの一つ、サウスキングストリート沿い。どんな形で風雪に(といっても雪は降らないが)耐えてきたのかというぐらい、くたびれた建物、言い換えれば、とても趣きがありイタリアの片田舎にポツンとあっても不思議ではない。冷房の効いた店内スペースよりも、席数が多く広い屋外がハワイらしく、ピザ窯もなんと外にある。釜の近くは暑いだろうなあと思いつつも、そこはハワイ。涼しい風のパワー日本の比ではない。

この店は予約を取らない。そこをわきまえているのか、特に店内のダイニングは回転が早い。にしても、客は辛抱強く順番を待って席を確保したいぐらい、骨太で塩の強い、間違いなく本格的なイタリア料理がハワイサイズででてくる。なんと豪快なことか。心なしか客層も白人が多いような気がする。もちろん日本人観光客は皆無。ローカルの日本人もあまり見かけないぐらいだ。

名物はテール・ブーコ。オッソ・ブーコというイタリアの代表的な料理のハワイアレンジ版。ハワイローカルフードとして、本当にテールスープが好まれるが、本来は子牛のスネ肉を煮込んで作るところを牛テールを使用。かなり強いダシが出て、自分の知るオーソ・ブッコより力強くオイリーな食感。まさにハワイでいただくイタリア料理としてふさらしい。

さらにこの店で面白いのはピッツァだ。ナポリ風でもローマ風でもない、その中間ぐらいというべきか。おそらく小麦はイタリア産だろうけどハワイの水との掛け合い具合が独自のテイストを生み出すに違いない。正直、本当においしい。この店ではテール・ブーコとともにマストである。

そして、驚くほどワインが安い。これは単なる想像だが、ワインショップとしてのライセンスしか持っていないのではないか。それゆえワインをショップの小売価格で提供しているのだ。日本以上にライセンスが厳しいアメリカでの、客に嬉しい抜け道なのかなと感じた。

Mediterraneo(メディテラネオ)
1809 S. King St. Honolulu, HI 96826

ラングーン・バーミーズ・キッチン(ミャンマー料理)

モダンなミャンマー料理として、「ダゴン」がサウスキングストリート沿いに登場し、そこで接した新感覚のエスニックには衝撃を受けた。おそらくミャンマーにはこんな料理はなくハワイオリジナルというべきか。あくまで、ハワイという土地やスピリットが醸成した新たなカテゴリなのだ。

特に印象的なのは「ティーリーフサラダ」。つまりお茶の葉を使ったサラダである。

もちろん、渋くもエグ味もなく新鮮ささえ感じるのだから妙な具合だ。しかもほのかに残る苦味やお茶らしいタンニンが食欲とおいしさを増長させる。日本でもこのサラダをアレンジして提供する店まで出てきたようである。

その「ダゴン」が、最近のハワイの人気店ではお約束のごとく発展的な2号店を、これまた躍進のエリアチャイナタウンに出店した。「ラングーン・バーミーズ・キッチン」という。「ダゴン」では素敵なマダムがいて、マダムそのままの清潔感溢れるシンプルモダンな雰囲気だったが、チャイナタウンの店では、そこに高級感を添えたテイスト。「ダゴン」のシェフがこちらにきて、当面は腕を振るうらしい。

「ラングーン・バーミーズ・キッチン」では、定番の「ティーリーフサラダ」に加え「ジンジャーサラダ」が登場。こちらは日本風に漬け込んだ生姜の強い味わいが全体を包み込み、メインの食材でありながらソースの役目も果し、ああ、この手があったかと膝を打つ。いずれこちらも、日本で模倣をする店も現れるに違いないが、生姜となると逆にハワイで食べてこそ美味しいのかなという気もする。

料理は比較的安価だし、アルコール類は持ち込み可。近くのウォルマートで大量に買い込んで大人数で乗り込もう。垂涎のメニューは一品でも多く食べるのが必定だ。

Rangoon Burmese Kitchen(ラングーン・バーミーズ・キッチン)
1131 Nuuanu Ave. Honolulu, HI 96917

オパール・タイ(タイ料理)

ハワイでは、日本以上にエスニック料理店が多い、そして、中でもベトナム料理が一つ抜きん出ていて、昔から日本の芸能人も通うような、よく知られた名店が存在する。それは暑い国ながらハワイローカルが好むスープ類に、ベトナムのフォーがしっくりはまったことがまずあるだろう。さらに、昨今ハワイの飲食を牽引する「ザ ピッグ アンド ザ レディ」」という、イノベーティブなベトナム料理店である。確かにこの店やワード地区に展開した2号店含め、楽しくて面白くておいしい。また、上記で紹介したモダンミャンマー料理も大注目。

同じエスニック料理のカテゴリでは押され気味なタイ料理だが、こちらもチャイナタウンに注目すべき新生が登場した。「オパール・タイ」という。ご夫妻で最初はフードトラックから出発しノースのハレイワに出店。このたび、チャイナタウンに移転してきた。ちなみにご主人がダイニングに立ってサービスを担い、奥様がこつこつと料理を作る。一応卓上には簡易のメニューらしきものはあるが、基本はご主人といろいろと話ながら、なんとなくメニューが決まっていく流れ。多少の英語力は必要だ。

こう表現すると、家庭的な雰囲気の店のようにも感じられるが、そこはご主人のキャラクターなのか、かなり弾けている。各テープルを満遍なく回りながら語りかけ、飲み物を勧め、料理を解説する。加えて趣味のツーリングや旅行の話題など多岐にわたるので、とても楽しく、元来のエスニック料理店が持つアジアな感じから離れた、いかにもアメリカンな展開である。

ところが、料理は本格中の本格。深みのある辛味が食欲を増し、タイ料理特有のダシや味付けに脳が刺激を受ける。湧き出す汗と戦い、シンハービールで喉を潤しつつ、次々に運ばれてくるお任せコースの皿を平らげていく。後半の炭水化物はさらにエスカレート。何種類かもたらされるが、すべてテイストが異なるので完全に食べ過ぎる。

しかも驚くことに、ご主人はかなりの日本通。日本が相当お好きなようで、日本人観光客とて軽んじられることはなく、居心地もいい。日本でもよくバイクでツーリングをするそうで最終的には日本出店も視野に入れているとのこと。日本のどこが好きかというぼくの質問に対しては、富山という驚嘆の答え。理由が海と山に囲まれ食材の宝庫だから、とのこと。ぼくも、彼同様に富山はとても好きだが、日本人がどれだけ富山の魅力に気づいているのかと考えると、すごいとしか言いようがない。

あんな形のタイ料理店が富山にできたなら、日本全国から食通が通うに違いない。

Opal Thai(オパール・タイ)
1030 Smith St. Suite 6 Honolulu, HI 96817

ハマダ・ゼネラルストア

ハワイリピーター初期の皆さんがハマる代表は、「サイドストリート・イン」という店だ。

ハワイローカルの雰囲気が満載で友人を連れて行ったこともあるが、料理がかなり塩辛いのと時間によって味付けにむらがあることも経験。食にこだわる諸氏には、同じタイプでも別の店にお連れすることが増えた。ハワイコンベンションセンター近くにある「ホーム・バー&グリル」である。

10数年前に初めて飛び込みで行って以来、味が気に入って通ったが、ある時メンバー全員のIDを見せろと言われたりと不穏な空気も感じているうち、2019年、突然閉店したことを、店の前を通って知った。連日満席で、決して経営的に苦労していた気配はないので、衝撃は大きかったし、未だその真相も判明していない。いっぽう朗報もゲットしていた。「ホーム・バー&グリル」のシェフが、新たな食堂の厨房に立っているというのである。その店の名が「ハマダ・ゼネラルストア」。

もちろんスーパーマーケットの総菜売り場ではない。Amazonが経営する高級スーパー「ホール・フーズ」が新しくでき、ますます賑わいを見せるワード地区。しかも「ホール・フーズ」からもほど近い場所に、その食堂は完成していた。というか、ぼくが訪れた際はまだ看板もついておらず、ここが「ハマダ・ゼネラルストア」と知らなければ、気づかず素通りしてしまうだろう。

「ハマダ・ゼネラルストア」が完全な食堂と言えるのは、営業時間が午前7時~午後2時まで(2019年夏現在)。この時間を見る限り、「ホーム・バー&グリル」が閉店したのは、シェフが深夜まで仕事をしたくなかったというのが真相かもしれない。

メニューは、サンドイッチ、プレート、サイドディッシュ、オミヤゲとある。

キムチやネギなどの扱いがとても巧みだった往年の「ホーム・バー&グリル」を彷彿とさせる垂涎ものもちらほら。「キムチ・ステーキ」や「ネギトロポキボール」「カツカレー・モコ」「ワフー・ハンバーグ」など。どれもこれも、いかにもなハワイアレンジが利きまくってそうで、メニューを見ているだけで楽しい。

実際に食すと、明らかに普通の食堂とは違う「冴え」を感じるおいしさ。フォークの動きが止まらなかった。しかも、ソースやドレッシング、普通に炒めた感じの玉ねぎ等にも奥深い工夫があった。これはもう、滞在中に一度は訪問すべき。さらには、ハワイ最終日にこちらでテイクアウトして空港に行くという試みも、まずい機内食を回避することができそうだ。

Hamada General Store(ハマダ・ゼネラルストア)
885 Queen St Honolulu, HI 96813


【プロフィール】
伊藤章良(食随筆家)
料理やレストランに関するエッセイ・レビューを、雑誌・新聞・ウェブ等に執筆。新規店・有名シェフの店ではなく継続をテーマにした著書『東京百年レストラン』はシリーズ三冊を発刊中。2015年から一年間BSフジ「ニッポン百年食堂」で全国の百年以上続く食堂を60軒レポート。

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