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連載:IPO市場の健全な拡大に向けて (11) スクリーニング3軸の壱、実需度

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 前回は、「技術系ベンチャーの“技術のマネタイズ評価”を、(1) 実需度、(2) 貢献度、(3) 到達度の3軸で考えることを提案する」で結んだので、順番に見て行きたい。今回は、実需度である。(作成:南青山FAS株式会社)

 まずは、誤解を解消したい。巷で言われている「市場調査は、役に立たない」あるいは「グループインタビュー・ニーズの聞き取りは、役に立たない」は、その通りである。ただし、それはB2Cの市場においてはその通りであるが、B2Bの市場には、当てはまらない。B2Bには解決して欲しい明確なニーズが山のようにある。それを無視して、自社の商品・サービスあるいは技術を売り込んでも、ビジネスにはならない。
 以下の議論は、B2BもしくはB2B2Cのビジネスを展開している技術系ベンチャー向けということになる。
 一方、B2Cのビジネスは益々、重過ぎない(or暑苦し過ぎない)想い重視のビジネスとして商品設計・サービス設計をすることが、勝ち残りに必須と考えられる。

実需度

 実需度とは、顧客ニーズに、いかに合致しているかを表す指標である。もっと簡単に言うと、ターゲットと考える顧客候補に、「これが実現できるのであれば、今すぐにでも欲しい」と思わせる度合いである。「あったら便利orあったら使うかもしれない」というレベルでは、実需度は低い。また、現時点で認識されているニーズのことであり、事業機会と言い換えられる。
 しかし、実需度は必ずしも、短期的なニーズのみを意味するのではない。先にも述べたように、技術戦略上、ある技術が必要だと、ユーザーであるパートナーが判断すれば、商品化は将来であっても、現時点で、実需は発生すると考えてよい。
 "新しい技術の実需度"は、さらに、以下の2点から影響を受ける。

   甲: 既存技術の進歩によって、新技術の市場浸透が遅延もしく阻止される
   乙: さらに新しいor異分野の技術による新技術の陳腐化

 甲は例えば、薄型ディスプレイの分野で液晶が競争上劣位であると考えられていた点が、技術の進歩によって克服されたとすると、有機ELによって置き換えられると考えられていたアプリケーション・商品分野で、置き換えが進まない、というようなケースである。
 甲のケースでは、場合によっては、新規参入を放棄した方が良いこともあるだろう(撤退オプション)。あるいは、参入決定を延期した上で改めて参入するのか、参入を放棄するのかを決定すること(延期オプション)が有益かもしれない。いずれにしても、オプション価値を実現するようなマネジメントが鍵を握るだろう。
 乙は、古い例ではあるが、真空管と半導体の例が挙げられるだろう。その他には、ターボプロペラエンジンとジェットエンジン、電機機械式計算機と電子計算機、機械時計と水晶時計が相当する。この場合は、できるだけ早くマーケットに参入して、スタンダード化を果たし、参入障壁をつくる戦略が望ましいであろう。より新しい何かを恐れて、新規参入しないのであれば、ベンチャーではない。
 甲乙どちらも場合も、時間軸は重要なファクターである。このことからも理解できるが、ベンチャーにとってスピードは死命を制するものなのである(この点は、B2Cでも同じである。参考記事はこちら。)。
 技術者は、「自らが専門とする技術の動向は、常にウォッチしているから、どういった技術が競合となりうるかの判断はできる」と断言する。つまり(技術の)競合リスクは低減可能と考えられる。一方、市場(もしくはパートナー企業)が要求するスペックを、ある技術が満たすか否かという"技術リスク"の低減は、極めて至難である。
 すると、残りは市場リスクと競争リスクを減らすことができれば良い。これを実現するためには、顧客の立場に立って、事業機会を探るという姿勢が重要となる。具体的には、事業計画に落とし込むことによって、定量的に、事業機会の探索が可能になると考えられる。

リスクの整理

 ここで技術系ベンチャーが晒されているリスクについて整理してみよう。
 市場リスクは、商品・サービスが市場に受け入れられるか分からないという不確実性である。いわゆるデスバレーは、ここに相当する。
 技術リスクは、既に述べているが、スペックを満たせるか分からないという不確実性である。パートナーが展開している既存ビジネスにおける技術(のスペック)と適合するかという不確実性も含まれる。
 競合リスクは、他技術との競合があるために、当該技術が、ターゲットとしている商品やサービスに受け入れられるか分からない不確実性である。現代は異種格闘技戦が頻繁に行われているため、他技術との競合が普通に起こりうる。
 競争リスクは、他の商品やサービスとの競争に勝ち残れるか分からないという不確実性である。いわゆるダーウィンの海は、ここに相当する。

◇事業計画への落とし込み◇ 市場の大きさ、立ち上がり時期、市場成長率

 実需度を測定して、事業計画に落とす準備をするわけであるが、その際には、パートナー企業の実力といったものを測定する必要もある。つまり、パートナーが上市しようとしている製品分野におけるパートナーのポジション、製造・生産技術、ブランド、あるいは流通チャネルといったものから、どの程度の売上が達成可能かを測定する必要がある。
 例えば、ブランド力の弱いプレイヤーや販売力の弱いプレイヤーがパートナーであったとすると、先行者として当初は売上を伸ばすことができたとしても、すぐに、ブランド力のあるプレイヤーにひっくり返されてしまうかもしれない。
 生産技術に劣った企業も、早々に駆逐される可能性がある。現代のように、製品の旬が短い時代では、生産技術は、ことさら重要なポイントである。
 この作業を通して初めて、ベンチャーの評価という項目で一般に使用されるところの、市場の大きさ、市場の立ち上がり時期あるいは、市場の成長率といった項目を定量的に(ある程度の確からしさで)把握することができる。
 (創薬ベンチャーは例外であるが、一般には)ベンチャー企業が複数のパートナー企業と組むことは難しいけれども、仮に複数のパートナー企業と提携できているのであれば、それぞれの数字を足し合わせて、市場を定義すれば良いことは言うまでもない。

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