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IPOを目指す企業が気をつけるべき人事・労務のチェックポイント

camera_alt (写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)

起業家にとって、新規株式公開(IPO)はひとつのマイルストーンでもある。ただ、上場企業はより社会的な責任が重くなり、業績だけでなく財務的にもコーポレート・ガバナンス的にもハードルが高くなる。ここでは、IPOを目指す企業が気をつけるべき人事・労務のチェックポイントについて見ていこう。

広範囲におよぶ人事・労務制度の整備が必要

東証1部・2部では、上場審査の内容として、「コーポレート・ガバナンスおよび内部管理体制が適切に整備され、機能していること」という条項がある。マザーズにおいても、表現は少しやさしいものの、同様の規定がある。人材は「人財」ともいわれる経営資源のひとつである。とくに昨今は、少子高齢化で労働力人口が減少し、中小企業を中心に人手不足が顕在化している。

上場を目指すのであれば、人材の確保や定着、育成、評価処遇などについて、合理的な仕組みがあるかどうかも重要なチェックポイントとなると肝に銘じたい。また、コーポレート・ガバナンスや内部統制を強化するにあたって、職務権限と責任に応じた分掌の設定と、管理職制度の設計も不可欠になる。等級制度、職務分掌、賃金制度、評価制度、リテンション(既存社員の引き止め)と、広範囲におよぶ人事・労務制度の整備が必要だ。

上場会社になると、人事、法務、経理、財務、広報IRなどを担当する管理部門の重要性がますます増してくる。ベンチャー企業など設立から日が浅い企業では、コア事業への投資を急ぐあまり、管理部門が手薄になっているケースもあるかもしれない。上場を目指し人事・労務制度の整備に着手するのであれば、まずは管理部門の人材登用から始めよう。

労務問題を抱える企業への視線厳しく

政府の「働き方改革」の影響もあり、労務問題を抱える企業への視線が厳しくなっている。上場を前にして、社員との労務問題を抱えているのであれば、早めに精査しておきたい。設立から日の浅い企業の中には、会社の設立に必要な就業規則や諸規定が、一般的なテンプレートをコピーして使用しているだけで、実務とのくいちがいが発生しているケースがあるかもしれない。まずは、人事関係の諸規程について、実務との整合性がとれるものを整備しよう。

また、行政の取り締まりが厳しい残業代の未払いや、非正規従業員の社保未加入などもチェックしよう。中小企業で多いトラブルは、残業代など「未払い賃金」に関わるものだ。採用労働制や在宅勤務、フレックスなど働き方が多様化する中で、給与計算や残業計算が非常に複雑になっているが、認識不足や計算ミスでは済まされないことになる前に是正すべきだ。

なお、法律に定められた一定の条件を満たした従業員は、正規・非正規問わず社会保険加入が義務付けられている。上場時に不適切な運用が発覚すると、是正しなければ審査に通過できなくなる。社内で適切な運用がされているかチェックしよう。こうした労務問題は、将来にわたってリスクとなる可能性があるため、問題が発覚すると上場審査の中断につながりかねない。問題を軽視せず、真摯な対応が重要だ。上場を決めた段階で、専門家のアドバイスを仰ごう。

基本的なルールや対策をするだけでもリスク減に

人を雇ってビジネスをしている以上、セクハラやパワハラ、労務問題などすべての人事・労務問題を根絶することは難しいかもしれない。しかし、下記のような項目にも関心を持って、ルールや対策を構築しておくことが賢明だ。

・従業員教育を徹底する
・管理部門を強化する
・諸規定や就業規則を実情に沿って整備する
・法律に基づいた人事・労務制度を整備する

基本的なルールや対策をするだけでも、かなりのリスクは防げるものだ。残業代未払いやセクハラ・パワハラ、過労死問題などが発生すると、従業員側から訴訟を起こされるケースも多い。訴訟になると、上場企業にもっとも大切な社会的信用が毀損される上、敗訴となると莫大な賠償金を支払うことになり、会社の資産が減少する。せっかく上場審査までこぎつけても、そこでストップしかねないのだ。思わぬところで足をすくわれないよう、上場を決めたら人事・労務の課題解決に取り組むべきだ。(提供:百計オンライン)




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