生産性を向上させる「RPA」とは
昨今、もはや当たり前のキーワードとなった「生産性の向上」。多様な働き方を認める中で、残業時間を削減しながらも利益を最大化するための工夫が求められている。
その中で注目され始めているのが、「RPA」だ。RPAとは、ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)の略で、AI(人工知能)を活用してホワイトカラー業務の効率化を図るための仕組みのことである。ここでは、RPAの概要や導入事例について紹介していく。
働き方改革で注目される「生産性の向上」
日本の生産性は、世界的に見ても低い水準であると言われている。これはデータでも明確に示されている。日本生産性本部が2017年に発表した、2016年の労働生産性の国際比較データによると、主要先進国G7の中では最下位、OECD(経済協力開発機構)35ヵ国の中でも20位と極めて低い。
そもそも生産性とは、労働者1人あたりが生み出す成果のことだ。生産性が低いということは、膨大な人的リソースと時間的コストを費やしても、それに見合った売上につながっていない状態であると言える。
この原因は、主にホワイトカラーにあるとされている。ブルーカラーの生産現場では、トヨタ自動車のカンバン方式やカイゼンに代表されるように、極限まで生産性を高めている実績がある。一方で、営業や間接部門といったホワイトカラーの生産性改善は、ほぼ未着手である企業が大半だ。逆に言うと、それだけ大きな改善の余地が残されている。
AIが業務効率化に導くRPAとは
ホワイトカラーの生産性を向上する救世主として注目されているのが、RPAである。財務、経理、人事、カスタマーサービスといったバックオフィス業務の自動化と親和性が高く、人間の手作業よりもスピーディかつ高い正確性を持って業務処理を行えるのだ。
RPAは、パソコン画面上のアプリケーションやシステムを識別し、人間と同等な操作を行うソフトウェアによって実現される。プログラミングによって事前に構築した作業内容を実行するのではなく、設定された実行手順によって動作するため、プロセスを学習させれば自動で習熟してデータを操作できるようになる。
このように、人間の労働者を補完する役割を担うので、RPAは「デジタルレイバー(仮想労働者)」とも呼ばれているのだ。RPAは、ITリテラシーの低い社員でも直感的に操作できるものであり、既存のシステムを変更することなく導入できる。その手軽さからも短期間で劇的な効果を生むため、すでに欧米を中心に数多くの効果報告がなされている。
進化するRPA
RPAは進化を続けており、3つのステージを踏んで成長していくとされている。
第1ステージでは、プロセスやルールが固定化されたルーティンワークを自動化する。人間が実施していた作業も、ルールエンジンや画面認識技術などによりRPAが実行できるようになる。ただし、例外的措置は人間の介在が必要な状態だ。
第2ステージでは、データ分析に基づく自動学習が実現されることで、例外対応や非定型業務の一部を自動化する。これにより、人間は意思決定などのコア業務に注力できるようになる。
第3ステージでは、高度なAIが搭乗することで、作業の自動化にとどまらず分析・改善、意思決定まで自動化する。
RPAやAIが台頭することで、人間は単純作業やルーティンワークから開放され、利益を拡大するためのコア業務に集中することが可能になる。これこそが、生産性の向上につながるのだ。
RPA導入事例
ここで、いくつかのRPA導入事例を紹介しよう。
・ イギリスのエネルギー関連会社は、RPAでオンライン申込処理の自動化に取り組んだ。これにより、人手処理だと1日40件処理していたものが、自動化で2万件処理できるようになった。
・ 月2万2,000件の国際配送物がある物流会社は、RPAでドキュメント処理を自動化した。これにより、コストを3万5,500ドル削減することができ、作業時間も2,274時間分削減できた。
RPAを導入することで、人件費を抑えながら業務効率化を図れ、社員はより高度な仕事に注力できることが分かるだろう。ホワイトカラーの生産性向上のためにも、RPAの導入を検討してみてはいかがだろうか。(提供:百計オンライン)