マネジメント層への登竜門 MBA最新事情
マネジメント層へのキャリアアップのため「MBA」に興味を持つ方も多いのではないのだろうか。MBAとはmaster of business administrationのことで「経営学修士」を指す。このMBAはビジネススクールを経て修得することとなる。今回は、MBAの現状についてランキングなどを踏まえながら解説する。
海外MBAの最新事情
ファイナンシャルタイムズ(以下FT)、エコノミストといった大手メディアは、毎年ビジネススクールのランキングを発表している。FTのランキングによれば、トップ10校は、以下のようになっている(カッコ内は左から2015年、2014年での順位)。
エコノミストや他の大手メディアのMBA校のランキング付けも、概ね同様な結果だ。グローバルでみてみると、米国がほぼ過半数を占めていることが分かる。
日本国内のビジネススクールについて
ここで、日本のビジネススクールがFT等のMBAランキングにランクインされないことにお気づきだろうか。日本でも、慶應義塾大学、一橋大学、早稲田大学、青山学院大学、筑波大学、中央大学などが大学院という形で経営学修士コースを設けている。しかし、上記のFTのランキングは約100位まで発表されているが、その中に日本のビジネススクールの名前はない。そこには、日本独自の理由があるようだ。
アジアの極東に位置し非英語圏である我が国で国内MBAを提供している日本のビジネススクールの場合、ターゲットとする市場は「日本」であり、ターゲットとする人は「日本人」であることが多い。国内MBAの教室を覗くと、ほとんどが日本人ということが珍しくない。
クラスメイトが日本人ばかりということは、言葉や文化習慣のストレスが少ないというメリットがある一方、多様な文化に触れる機会や外国語の取得機会が海外留学に比べて格段に低いというデメリットがある。欧米ほど国内MBAホルダーが評価されていないという現実もあり、外国人留学生にとって、わざわざ日本に留学し、日本のMBAを取るインセンティブは薄いといえる。
海外ビジネススクールの多くは、様々な国や地域から学生を集まっており、多様な文化に直接触れ合うことができる。実際の企業や事例(ケーススタディ)を題材にディスカッションする機会が多いビジネススクールの形式を考えても、これは大きな差別化のポイントといえるだろう。
MBA修得にかかる費用
通う学校によって差はあれ、米国でのMBA留学にかかる費用の相場は、一般的に2,000万円から3,000万円といわれている。他方、日本の全日制の2年間のMBA校の場合の学費の相場は、国立大系で100万円弱、私立大系で200万円から300万円程度だ。
海外MBAの場合、多額の費用がかかることは理解できる。しかし、国内MBAの場合も、実際は1,000万円前後の損失と計算することもできるようだ。理由は、就労していない期間があるからである。全日制のプログラムを受講した場合、2年間就労できないことになる。
国税庁の平成27年分民間給与実態統計調査によると平均給与額は420万円である。この数字から計算すると2年間就労していた場合、獲得できる賃金は840万円となる。したがって、国内MBA修得の費用は実質1,000万円前後ということもできる。平日夜および土日に授業を受け、就労しながら通うことができるコースを提供するビジネススクールも存在するので、キャリアプランの選択肢として休日の受講も検討したいところだ。
キャリアアップにもROIの考え方を
投資の世界にはROI(Return on Investment)という考え方がある。投下した費用や資本に対して得られた利益の割合を指す。自己研鑽やキャリアアップも広義では、自分への「投資」といえよう。
自分が将来やりたいことから逆算して、本当にMBAが必要なのか、2年間就労から離れて、費用と時間を費やしてもMBAを取るべきなのか。卒業後、その投資額を回収できるのか。これはMBAに限らないことだが、費用対効果を重視して決断したい。
南青山リーダーズ株式会社 編集部