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事業承継・引継ぎ補助金【2024年】の概要、手続き等を詳しく解説

camera_alt 寄稿者 metamorworks さん

1.はじめに

事業承継・引継ぎ補助金は2024年も公募が行われています。

事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継、M&A、経営革新等において、重要な役割を果たすとともに、中小企業の成長や地域経済の活性化を図るため、一定の基準を満たした中小企業・小規模事業者等に毎年支給されています。

本記事においては、事業承継・引継ぎ補助金2024の概要や手続きを、事業スケジュールとともに詳しく解説します。

2.事業承継・引継ぎ補助金の目的と背景

事業承継・引継ぎ補助金の目的や支給の背景について紹介します。

2.1.事業承継・引継ぎ補助金とは?

事業承継・引継ぎ補助金とは、中小企業・個人事業主等が事業承継、事業再編、事業統合等を契機として新たな取り組みを行う事業において、その経費を一部補助することで、事業承継、事業再編、事業統合等を促進し、日本経済の活性化を図ることを目的とする補助金です。

2.2.事業承継・引継ぎ補助金の背景について

事業承継・引継ぎ補助金が創設された背景について解説します。

まずは下記の図をご覧下さい。

出典:事業承継を知る|中小企業庁

本補助金が創設された背景には、日本の中小企業経営者の高齢化と後継者の不足という深刻な問題があります。

毎年経営者年齢のピークが更新され、2020年には、その年齢ピークは60~70歳代に達しています。

一方で若年層後継者の不足は深刻であり、後継者不在率は60歳代で48.2%と約5割、70歳代でもまだ4割後継者が決まっていません。

出典:事業承継を知る|中小企業庁

加えて、上の図にもあるように、黒字の企業でも後継者難を理由に廃業するケースが増えています。

経営者にとって厳しい状態が続くなか、後継者確保に対する対策を打ち事業承継を成功させることは、雇用を守りつつ、中小企業の成長や日本経済の安定という面から極めて重要です。

そのような背景から、事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継を成功させ、企業の持続的成長を支援するためにも必要な取り組みの一つといえます。

3.事業承継・引継ぎ補助金2024の枠種類、補助率・補助上限額

事業承継・引継ぎ補助金2024の枠種類の概要や補助率・補助額等について解説します。

3.1.経営革新枠の定義及び条件等

経営革新枠とは、事業承継やM&Aを契機として経営や事業を引き継いだ(または引き継ぐ 予定である)中小企業者が、引き継いだ経営資源を活用して経営革新等を行う(新商品の開発や生産、商品の新たな生産方式の導入、新たな販路開拓等)際の費用の一部を補助することで、中小企業者の生産性を向上させることを目的とした枠のことです。

経営革新枠を活用する際のポイントは以下の3つです。

ポイント①一定期間内(各公募次の事業承継対象期間)に事業承継やM&Aによって後継者が経営資源を引継いでいる(含む予定)こと

ポイント②経営革新枠には3つの事業承継の手段(類型)があるため、自身の事業承継がどの類型に当てはまるか、きちんと確認の上、申請する必要あり

▪創業支援類型(Ⅰ型)

▪経営者交替類型(Ⅱ型)

▪M&A類型(Ⅲ型)

ポイント③事業承継後に経営革新等に取り組むことが条件

さらにその取組が「デシタル化」「グリーン化」「事業再構築」のどれかに資する必要があります。

3.1.1補助率・補助上限枠

経営革新枠の補助率及び補助上限枠は以下の通りです。

条件

賃上げ

補助上限額

補助率

  • ①小規模企業者
  • ②営業利益率低下
  • ③赤字
  • ④再生事業者等

のいずれかに該当

実施

800万円(※2)

600万円超~

800万円相当部分

1/2以内

実施せず

600万円

~600万円相当部分

2/3以内(※1)

上記①~④該当なし

実施

800万円(※2)

1/2以内

実施せず

600万円

(※1)一定の条件に該当する場合、補助額600万円以内部分の補助率が、2分の1以内から3分の2以内に引き上げられます

(※2)補助事業期間に一定額以上の賃上げを実施する場合、補助上限額が600万円以内から800万円以内へと引き上げられます

参照先:事業承継・引継ぎ補助金9次公募のご案内|事業承継・引継ぎ補助金事務局

3.2.専門家活用枠の定義及び条件等

専門家活用枠とは、後継者不在や経営力強化といった経営資源引継ぎ(M&A)のニーズをもつ中小企業者が、経営資源の引継ぎに際して、活用する専門家の費用等の一部を補助することによって、地域の需要や雇用の維持・創造等を通じた経済の活性化を図ることを目的とした枠のことです。

専門家活用枠を活用する際のポイントは以下の3つです。

ポイント①補助事業期間内に経営資源の引継ぎ(M&A)が着手もしくは実施されること

ポイント②専門家活用枠では、経営資源引継ぎの立場に応じて2つの支援類型があり、どちらの類型か見極めた上で申請の必要あり

※同一の経営資源引継ぎにおいて双方の立場から1申請は可能

▪買い手支援類型(Ⅰ型)…事業再編・事業統合等に伴って株式・経営資源を譲り受ける予定の中小企業者が利用可能

▪売り手支援類型(Ⅱ型)…事業再編・事業統合等に伴って株式・経営資源を譲り渡す予定の中小企業者が利用可能

ポイント③経営資源引継ぎにおけるFA仲介業務は、「M&A支援機関登録制度」に登録された専門家への委託のみ補助対象となる

3.2.1.補助率・補助上限枠

専門家活用枠の補助率及び補助上限枠は以下の通りです。

類型

補助率

補助下限額

補助上限額

補助上限額の上乗せ額(廃業費)

買い手支援類型

2/3以内

50万円

600万円以内(※2)

+150万円以内

売り手支援類型

1/2または2/3以内(※1)

(※1)売り手支援類型(Ⅱ型)において、「一定の比較期間で営業利益率が低下している」「直近の営業利益または経常利益が赤字」等の条件に該当する場合は、補助率が2分の1以内 から3分の2以内に引き上げられます

(※2)補助事業期間内に経営資源の引継ぎが実現しなかった場合(補助対象事業において、クロージングしなかった場合)、補助上限額は300万円以内となります

参照先:事業承継・引継ぎ補助金9次公募のご案内|事業承継・引継ぎ補助金事務局

3.3.廃業・再チャレンジ枠の定義及び条件等

廃業・再チャレンジ枠とは、M&Aによって事業を譲り渡せなかった中小企業者等の株主や個人事業主が、地域の新たな需要の創造や雇用の創出にも資する新たなチャレンジ(新たに法人を設立、新たな事業活動を展開等)をするために、既存事業を廃業する場合にかかる経費の一部を補助する枠のことです。

廃業・再チャレンジ枠を活用する際のポイントは以下の3つです。

ポイント①単独申請と併用申請の場合では要件が異なる

▪再チャレンジ申請(単独申請)…当枠のみで申請を行う場合

▪併用申請…当枠に加えて、経営革新枠、専門家活用枠と併せて申請を行う場合

ポイント②【再チャレンジ申請の場合】一定期間内(※)にM&A(事業の譲渡)に着手していること

※廃業・再チャレンジ枠に単独で申請する場合、2020年以降から交付申請期日の間に、売り手としてM&Aに着手、6カ月以上取り組んでいること

ポイント③【再チャレンジ申請の場合】補助事業期間内に既存法人(事業)の廃業を完了した上で、再チャレンジすること

3.3.1.補助率・補助上限枠

廃業・再チャレンジ枠の補助率及び補助上限条件枠は以下の通りです。

申請の種類

補助率

補助下限額

補助上限枠

再チャレンジ申請

2/3以内

50万円

150万円以内

併用申請

1/2または2/3以内(※1)

(※1)併用申請の場合、廃業費の補助率は事業費の補助率に従います

参照先:事業承継・引継ぎ補助金9次公募のご案内|事業承継・引継ぎ補助金事務局

4.補助金申請~交付までの流れ

【事前準備~交付申請まで】

引用元:事業承継・引継ぎ補助金の交付までの流れ

事業承継・引継ぎ補助金2024の事前準備~交付申請までの流れは上記のSTEP1~4までです。

このプロセスでは、STEP2の「認定経営革新等支援機関(※)への相談」やSTEP3「GビスIDプライムの取得」で一定の時間が必要なので、事業スケジュールを事前にきちんと確認して、申請期日前に余裕を持って提出できるよう段取りして下さい。

特に事務局からのお願い事項として、申請期日4営業日前までの申請が推奨されています。

もし申請書類に不備があった場合、書類が差し戻され、迫った審査日程の関係から申請が不採択となる可能性が高くなります。

(※) 認定経営革新等支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関(税理士、公認会計士、中小企業診断士、商工会議所、金融機関等)をいいます

【交付決定通知~補助金交付後・後年報告まで】

引用元:事業承継・引継ぎ補助金の交付までの流れ

交付決定通知(STEP5)から補助金交付(STEP8)までの流れは上記の図の通りです。

事務局から交付決定の通知が届いたら、直ちに補助対象事業の実施に着手して下さい。

そして事業が完了したら、実績報告を行い、確定検査を経て補助金を受け取ります。

また補助金受領後も、STEP9として、一定期間、後年報告(※)という手続きがありますので、失念しないよう、必ず定期的に報告を行って下さい。

(※)後年報告(事業化状況報告)とは、補助金の交付を受けた事業家が、補助事業の完了した日の属する会計年度終了後5年間、補助事業に係る当該事業年度内の事業化及び収益状況等に関して、「事業化状況報告書」として報告する作業のことです

5.事業承継・引継ぎ補助金の採択結果

過去に実施された事業承継・引継ぎ補助金の採択結果は以下の通りです。(一部抜粋)

▪事業承継・引継ぎ補助金(4次公募、2022/12/26~2023/2/9)

事業名

申請数

採択数

採択率

経営革新事業

264

146

55.3%

専門家活用事業

518

290

56.0%

廃業・再チャレンジ事業

28

10

35.7%

▪事業承継・引継ぎ補助金(3次公募、2022/10/6~2022/11/24)

事業名

申請数

採択数

採択率

経営革新事業

189

107

56.6%

専門家活用事業

408

234

57.3%

廃業・再チャレンジ事業

29

13

44.8%

引用先:採択結果|事業承継・引継ぎ補助金事務局

6.事業スケジュール

事業承継・引継ぎ補助金2024の9次公募の事業スケジールを紹介します。

なお、次期以降のスケジュールは未定です。

申請受付期間

2024年4月1日(月)~2024年4月30日(火)17:00まで(すでに締切済み)

交付決定日

6月上旬(予定)

事業実施期間

交付決定日~2024年11月22日(金)

実績報告期間

~2024年12月2日(月)

補助金交付手続き

2024年12月中旬以降(予定)

7.おわりに

事業承継・引継ぎ補助金2024について、その概要や手続きを中心に詳しく解説しました。

事業承継・引継ぎ補助金は、後継者不足に悩む経営者に対して、後継者問題を解決するとともに、中小企業を活性化させ雇用を守り、引いては国の経済発展を促進する極めて重要な補助金です。

また事業承継・引継ぎ補助金をうまく活用できれば、起業や新規事業への取組にも役立てられます。

事業承継・引継ぎ補助金は、毎年実施されているため、その実施内容や要件が少しずつ変更されています。

最新の情報については、事業承継・引継ぎ補助金事務局や中小企業庁のHPで確認できますので、必ず確認の上、応募を検討して下さい。


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