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「若者の街」から「最新オフィスエリア」へ、再開発が進む渋谷

「若者の街」のイメージが強かった東京・渋谷では駅周辺の開発が進み、オフィス街になりつつある。この再開発にはどのような背景があったのだろうか。今回は、新たなブランドイメージを獲得した渋谷のいまとこれからについて見ていこう。

渋谷駅は「サグラダ・ファミリア」?再開発の背景

渋谷駅周辺の開発を担うのは東急グループ。2012年の渋谷ヒカリエの開業を皮切りに、駅周辺において大規模な再開発プロジェクトを実施している。
現在開発が進むのが、「渋谷スクランブルスクエア」「渋谷フクラス」「渋谷ソラスタ」の複合ビル3棟および渋谷駅桜丘口地区の再開発だ。昨年には、「渋谷ストリーム」「渋谷ブリッジ」の2棟が竣工した。
スペインの「サグラダ・ファミリア」のように年中開発工事が行われているとも揶揄される渋谷駅周辺だが、東急グループは同駅周辺を「JR線や国道246号線などによって東西南北に分断されており、谷地形により回遊しにくいという欠点があった」と指摘。今回は、駅周辺に広がる歩行者デッキによって街全体をつなぐと説明している。

「ビッドバレー」としての存在感を取り戻す渋谷

90年代後半から、マークシティやセルリアンタワーといった渋谷駅周辺のオフィスビルに新興IT企業が入居しはじめ、米国のシリコンバレーをもじって「ビッドバレー」とも呼ばれ、日本のIT勃興期を支えた。
その後、IT系企業が大手を中心に六本木や目黒へ移転していった背景には、渋谷に大規模なオフィスビルが不足していたということがあるだろう。渋谷周辺のオフィスビルは小規模なものが多く、業容拡大を図る企業には手狭になったのだ。一方で、家賃の高騰で小規模なスタートアップは賃料の低い五反田周辺などへ移転した。
しかし、東急グループ主導で始まった駅周辺の大開発により大型オフィスが次々と供給されたことで再び活況を取り戻し、現在の渋谷駅周辺には、国内の主要なIT企業が集積する。さらに、かつて渋谷から六本木に移転したGoogleの日本法人が渋谷に「帰還」することが決まっており、国内ITの「顔」としての渋谷の重要性はますます高まりそうだ。

東京都内のオフィス需要、活況続く

日本橋、虎ノ門、豊洲、品川など、東京都内で進む再開発事業は、オフィスビルを核とするものが多い。一時は供給過多への懸念もささやかれたが、CBREによる2018年1月時点の速報値では、グレードAオフィスの空室率が前月比0.5ポイント上昇の2.3%と依然として低水準にとどまっている。
2019年も大規模オフィスの竣工は続くが、新規オフィスの約8割でテナントが内定しているとされる。
背景には、本社移転やオフィス拡張のほか、情報セキュリティーの強化やBCP(事業継続計画)策定に向けたハイグレードオフィスへの入居意向などがある。また、少子化による人手不足が続くなか、利便性がよくブランド力の高いエリアにある最新オフィスを「広告塔」として、人材獲得を目指したいという狙いもあるようだ。
さらに、「働き方改革」の機運の盛り上がりもオフィス需要にプラスに働いている。フロア面積の広いオフィスを活用したオープンなレイアウトで社内間の風通しをよくしたり、複数のビルに分散していたオフィスを1カ所にまとめることで部署間の交流を図ったり、さらに社員食堂やカフェスペース、企業内保育所といった福利厚生を充実させたりする企業もある。

これからの渋谷に求められる「エコシステム」づくり

渋谷のみならず、街のブランド化を進める上で、「集積地」であることは重要な役割を果たす。シリコンバレーがその典型で、企業のほかにスタンフォード大学のように技術を下支えする研究機関や、資金面を後援するベンチャーキャピタルといった、スタートアップの仕組みを支える「エコシステム(生態系)」を作り上げた。
オフィス供給のその先にある、これからの渋谷に求められるものは、そうした環境づくりだろう。(提供:百計オンライン)



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