連載:IPO市場の健全な拡大に向けて (12) スクリーニング3軸の弐、貢献度

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「技術系ベンチャーの“技術のマネタイズ評価”を、(1) 実需度、(2) 貢献度、(3) 到達度の3軸で考えることを提案する」回の2回目は、貢献度である。(作成:南青山FAS株式会社)

貢献度とは

 貢献度とは、ベンチャーのもたらす技術が、パートナー企業(ベンチャーにとっては顧客と言っても良い)の発売する商品・製品・サービス(以下、商品等)において、どの程度の重要性をもっているかを表す尺度である。重要性という文言は、複数の意味をもっている。
 パートナーが開発している商品等において、ベンチャーの技術はスペックを満たしたとしても、他の技術あるいはパーツが実用レベルに達しなければ、開発している商品等は日の目を見ない。そのような状況では、ベンチャー由来技術の「貢献度は低い」と判断する。
 ベンチャー由来技術以外の技術が、既に枯れた技術であるような場合であれば、開発している商品等を市場投入できるか否かは、ベンチャー由来技術に、大きく依存する。従って、貢献度が大きい、と判断する。
 後者はともかく、前者はおかしいのではないか、と思う方がいるかもしれない。ベンチャーの技術は自身の役割を果たしている一方で、他の技術は役に立たなかったのだから、貢献度としては、ベンチャーの技術が高いのではないか、と。確かに、技術的な貢献度は高いかもしれない。しかし、ここで述べている貢献度は、上市における貢献度である。開発しているサービス等において、ベンチャーの技術がどれだけ優れていても、上市に至らなければ、貢献度は低いとみなす。つまり、“コントロ-ラビリティ”という意味合いである。ベンチャー由来技術が、商品化をどれだけコントロールできるか、主導権を握れるか、を図る尺度である。
 この点、ベンチャーは大きな誤解をしていると思われる。自分たちは十分貢献して、パートナーは十分に貢献していない。だからパートナーが悪い。別のパートナーを見つけよう。次も同じことが行われる。そして永遠のベンチャーが生まれる。これは大きな不幸である。

コントローラビリティという発想が重要

 コントローラビリティという発想をしない限り、ベンチャーが大きく飛躍することは難しい。
 貢献度(重要性)が高ければ、必然的に利益率は高くなる(はずである)。一般に、部品は、アッセンブラーから、買い叩かれる傾向にある。価格の低下は、宿命であるが、重要な部品であれば、その低下圧力に逆らうこともできる。エレクトロニクスの分野で言えば、自社商品等の技術をブラックボックス化するとともに、アッセンブル製品において、部品の地位を高めることで、高い利益率を確保している部品メーカーが存在する。
 他方、自動車メーカー、中でも、トヨタは、このブラックボックス化を好まないため、車用半導体やタイヤまで自社で開発している(ただし量産はしない)。トヨタ向けに部品を提供するベンチャーを評価する場合、「貢献度」は低くなるだろう。
 貢献度の高いパーツ(単なる“部品”というより、“モジュール”)であれば、その売り値は、製品自体の価格の10~15%という水準で顧客に受け入れられるはずである(通常、投入係数=部品価格/製品価格、という用語が用いられる)。
 なお、実需度と貢献度をチェックするには、パートナー企業の業務フロー(バリューチェーン)を理解することが有用である。
 一般にM&Aの際、フィナンシャルアドバイザーは、キャッシュフローを正確に把握し、正しく事業価値を算定するために、業務フローを理解することを試みる。ベンチャーの技術が業務フローの(a)どこに、(b)どのような事業機会を与えるか、を考えることによって、ベンチャー由来技術がパートナー企業に(c)どのようなインパクトを与えるかが、より鮮明に見えてくるからである。
 また、ベンチャー由来技術が解決する問題が、業務フローの中で、いかなる重要性並びに緊急性を有しているか、を検討することでベンチャーにとっての収益性も推測できると考えられる。

◇事業計画への落とし込み◇ 売上予測(準備)

 前回、ベンチャーは自社の事業計画をつくる前段階として「市場の大きさ、立ち上がり時期、市場成長率」を把握する必要があり、それは実需度の評価測定を通して可能になると書いた。
 今回は、貢献度を測定することで、ベンチャーの売上予想をつくるための第一歩を踏み出すことができる、と述べることになる。もちろん、売上予測を完成させることは、まだできない。次の到達度を評価しなければ、いつ頃、どの程度の売上が計上できるかを予測できない。
 もちろん、コントローラビリティが低ければ、売上の予測は困難な作業となる。商品等を完成させるために必要な他の技術要素が、チャレンジングなものであれば、予測は難しい。(いくつかの代替技術が存在すれば、リスクの下限くらいは評価できるかもしれない。)
 もちろん、売上総利益率の予想もできない。原材料費などは評価できるが、量産時の商品等の仕様と量産時の製造プロセスが確定しなければ、粗利すら確定できない。ただし、非常に粗い評価をする場合は、50~55%という仮置きは許容範囲であろう。

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