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生産緑地をめぐる「2022年問題」

不動産業界の「時限爆弾」とも言われる、生産緑地をめぐる「2022年問題」をご存知だろうか。2020年の東京オリンピックから2年後の2022年に、都市部で大量の住宅用地が供給され、需給が崩れるのではないかと懸念されている問題だ。今回は、この生産緑地について現状や課題を見ていこう。

生産緑地が抱える問題

そもそも今回の話題のキーポイントになる「生産緑地」とは何か。元々、都市部における「市街化区域」は、都市開発によって市街化を推し進めるべき地域であるが、大都市といえど過去から農業を営む人たちがいた。そこで、1991年3月に生産緑地法が改正され、1992年度から宅地化を進める農地(特定市街化区域農地=宅地化農地)と都市部で保全されるべき農地(生産農地)が定められたのだ。
生産農地の条件は、以下の通りだ。

  1. 良好な生活環境の確保に相当の効果があり、公共施設等の敷地に供する用地として適しているもの
  2. 500㎡以上の面積があるもの
  3. 農林業の継続が可能な条件を備えているもの

生産農地に定められた農地では、「固定資産税が低く抑えられる」「相続税の納税猶予が受けられる」といった優遇措置を受けられる代わりに、30年間の営農義務が課せられた。
改正生産緑地法が適用された1992年から30年後がちょうど2022年。多くの生産緑地が施行初年度の1992年に指定されているとみられるため、この年に多くの生産緑地から営農義務が外され、宅地として売却される可能性があるのだ。
国土交通省によると、生産緑地は、2016年(平成28年度)の全国合計で1万3,188ヘクタールに上る。2022年にこれらの土地が一斉に売りに出されれば、住宅用地需要の需給バランスが崩れる恐れがある。少子高齢化が進む中で、都市部であっても空き家が増えている現状では、宅地の供給過多により土地価格の下落を招きかねない。

都内2区では8割の農家が農業続行

ただ、都内においては、農業を続けていく意向の農家が多いことがわかっている。国土交通省は2018年1月、東京23区で特に生産緑地が多い練馬区、世田谷区の農家を対象に、生産緑地の指定意向を把握するためのアンケートを実施した。所有している生産緑地に30年間の指定期限が過ぎた場合、10年間の営農継続を条件に「特定生産緑地」として新たな指定延長を希望するか尋ねたところ、「全て指定する」と回答した人は63%に上り、次いで「5割以上指定する」(15%)、「5割未満を指定する」(5%)と続いた。同アンケートによれば、約8割の農家が特定生産緑地の指定を受けて、引き続き農業を続けていく意向のようだ。
都市農業の抱える問題点として、生産者の高齢化や後継者不足、収益の悪化などが指摘されている。しかし、少なくとも東京都内の農家においては、生産緑地の営農義務が外れたからといって、即農業をやめてしまおうという農家は少ないもようだ。

生産農地の買い取りをすぐに希望する農家は3割

生産緑地法では、営農義務が解除された生産緑地は自治体の市町村長に対して買い取りを申し出ることができる。一方、買い取りの申し出があった場合、市町村長は時価で買い取らなければならないとされているが、これは義務ではないため買い取りをしない旨の通知をすることも可能だ。多くの自治体が財政難に陥っている現状では、スムーズな買い取りは進まないとの見方が多い。
先ほどのアンケートで、「30年間の指定期限が過ぎた場合、新たな指定延長を希望しない」と答えた農家(全体の8%)に対し、買い取りを行う時期についても尋ねたところ、「30年経過後すぐ」は26%のみだった。次いで、「30年経過後から1~4年後」が33%、「30年経過後から5年後以降」が23%、「未定」が18%となっており、すぐに買い取ってほしいと考えている農家は「30年間の指定期限が過ぎた場合、新たな指定延長を希望しない」と答えた農家(全体の8%)のさらに3割に満たないようだ。

マイホーム購入や土地売却を検討する人は慎重に

アンケートの結果のみを見ると、生産緑地を所有する農家の多くは、指定を延長して引き続き農業を続ける意向のようだ。ただ、高齢化は確実に進行しており、将来的な農家の減少は避けられない。さらに、オリンピック後の景気への懸念もあり、これからマイホーム購入を検討する人や、不動産売却を検討する人は、生産緑地の2022年問題が及ぼす影響についても頭の片隅に置いておくべきだろう。(提供:百計オンライン)



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