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製造業革命と叫ばれ一世を風靡した3Dプリンターは今どうなっている!?

紙などに2次元の印刷をする通常のプリンターに対し、3D CADや3D CGのデータに基づいて、3次元の立体オブジェクトを造形する機器のことを「3Dプリンター」と呼んでいる。

実はこの3Dプリンターの技術は、30年以上も前から存在していたのだが、当時は1台が1,000万円を超えるような高額製品であったため、ごく特殊な市場にとどまっていた。けれども小型化・高性能化が進み、昨今では数万円程度の家庭用も登場するなど、再び普及に弾みがつきつつある。

3Dプリンターとは

3Dプリンターの基本的な仕組みは、断面図の印刷を積み重ねて立体に仕上げていくようなものだと考えてよい。積層の方法としては、液状の樹脂を紫外線等に照射して硬化させる「光造形方式」や、熱によって融解した樹脂を積み重ねる「FDM(Fused Deposition Modeling = 熱溶解積層法)方式」、樹脂粉末に接着剤を吹き付ける「粉末固着方式」などがある。

3Dプリンターの特徴としては、中空形状や複雑な内部形状も造形が可能なことや、操作する人の技術力に依存せず、誰が何個作っても同じものができることなどが挙げられる。また昨今では、単に高精細度の製作が可能になっただけでなく、ゴムのような材料が使えたり、物性の異なる複数の材料を混ぜ合わせたり、フルカラーの製品が作れるようになったりと、性能の向上も著しい。

3Dプリンターの今(活用例)

3Dプリンターの使用用途としては、デザインの検証や機能検証などを目的とする試作品の制作が最もポピュラーな例だろう。大手建設会社では、建物の模型を3Dプリンターで出力して、客への説明に利用している。航空宇宙分野ではジェットエンジンやロケットエンジンの機能部品の製作の際に、先端研究分野ではテストパーツの作成の際になど、試作への適用分野はきわめて幅が広い。

医療分野では、コンピュータ断層撮影や核磁気共鳴画像法などのデータに基づいた人体モデルが、手術前の検討に用いられているおり、補聴器やインプラントの分野でも3Dプリンターが幅広く活用されている。

また、2015年1月には東京大学医学部付属病院と富士フイルムなどが、人体に移植可能な皮膚や骨、間接などを、遺伝子工学に加えて3Dプリンターを活用することにより、短時間で量産できる技術を確立したと発表している。5年後の実用化を目指したものだが、移植の難題となっている感染症の危険性を低く抑えられるのが特長だという。

さらに面白いのは、3Dプリンターの宇宙分野での活躍だ。ロケットエンジンや月面探査機の部品開発に3Dプリンターが使われているのはもとより、2014年12月、NASAは地上で作成した設計図を国際宇宙ステーションに電送し、3Dプリンターを使って宇宙で物品を製作することに初めて成功した。

また2015年の秋には、NASAが2035年ごろの実現を目指している「火星有人探査基地のコンセプト設計コンペ」を開催した。そこで示された条件は、4人が1年間暮らせるよう十分な広さを持った住居を、火星に存在する材料を使って3Dプリンターで建築するというものだった。

日本人2人を含む米国の建築家グループが提案した、平均気温が氷点下43度という極寒の環境下で、3Dプリンターで氷の外壁を造形するという斬新なアイデアが、世界中から寄せられた165件中の第1位に選ばれたのだ。

廉価な家庭用3Dプリンターの普及につれて、フィギュアなどホビーの分野にも利用の枠が広がりつつある。一方で、インターネットに公開されている銃の部品の図面データをダウンロードして、3Dプリンターで殺傷能力のある銃を製作するといった「悪用例」が増えてきているのも事実だ。無限の可能性を損なうことのないよう、健全な進化を期待したいところだ。

南青山リーダーズ株式会社 編集部

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