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欧州の金融を支配してきたロスチャイルド家とは

camera_alt (写真=William Potter/Shutterstock.com)

金融は経済の血流だ。そこを抑えるということは、少なからず経済活動をコントロールできることと同義である。

そして、1700年代より、欧州の金融を支配してきたのが「ロスチャイルド家」だ。ロスチャイルド家とはどのような一族なのだろうか。

ロスチャイルド家とは

ロスチャイルド家は、ユダヤ系金融資本家を代表する一族、財閥だ。英語表記ではロスチャイルドだが、ドイツ語読みではロートシルト、フランス語ではロチルドと呼ばれる。

18世紀にドイツのフランクフルトで古銭商を始めたマイヤー・アムシェル・ロスチャイルドを始祖として、ナポレオン戦争の混乱期にヨーロッパ最大の金融財閥を築いた。その資産は、当時の欧州を代表する銀行のひとつを悠に超える金額だったという。その後の革命、戦争、恐慌を乗り越え、現在も金融業をはじめ、石油メジャー、食品、ワイン、資源、重工業など多くの事業を手掛けている。その多くは資本家として立場であり、ロスチャイルド家が表舞台にでることは多くないものの、例えばロンドンにN・Mロスチャイルド&サンズは、始祖マイヤーの三男が創業した投資銀行であり、社名にも「ロスチャイルド」の名が残っている。

始祖のマイヤーは、5人の息子がおり、ドイツ(フランクフルト)で絶対的な地位を築くと、さらなる発展のため、長男を除く4人がオーストリア、イギリス、イタリア、フランスと欧州各国で事業を始めた。それぞれフランクフルト家、ウィーン家、ロンドン家、ナポリ家、パリ家と呼ばれている。

マイヤーは、一族の団結を重んじ遺言の中で以下の5点を命じたといわれている。
1. ロスチャイルド銀行の役員は一族で占めること
2. 事業への参加は男子相続人のみとすること
3. 一族に過半数の反対がない限り宗家も分家も長男が継ぐこと
4. 婚姻はロスチャイルド一族内で行うこと
5. 事業内容の秘密を厳守すること

家族主義と秘密主義の徹底を求めており、それがロスチャイルド家の神秘性を高めることにつながっている。また5人の息子が欧州各地でそれぞれ事業を行うことにより、規模の拡大とリスクヘッジの両立に成功した。なお前述のN・Mロスチャイルド&サンズは、2010年に初めて一族以外のCEOが就任し、200年以上続いた同族経営に幕を閉じた。

ロスチャイルド家の歴史

ロスチャイルド家の事業は、1760年代に古銭商としてドイツ王侯貴族の知遇を得たマイヤー・アムシェルが両替、手形割引、対外借款などへ事業を広げたことに始まる。

1806年にナポレオンが大陸封鎖令を発動しイギリスとの交易を禁じた際には、地域間で大きく異なる価格差を利用し、商品取引で巨万の富を得た。さらに1815年6月のワーテルローの戦いでは、ナポレオンが敗れたとの情報を独自ルートからいち早くつかみ、多くの利益を上げたとされている。

その後、欧州各国の国債募集や引受業務をほぼ独占。19世紀には欧州最大の金融財閥となり、政治にも隠然とした力を発揮した。日本が日露戦争の際にロンドンで行った国債発行にも関与している。

産業革命が進展して欧州各国が植民地経営に乗り出すと、ロスチャイルド家は鉄道、石油、ダイヤモンドなど、さまざまな分野に融資、投資をして一段と資産を増やした。イギリスがエジプトからスエズ運河株式の44%を取得した際にも、ロスチャイルド家が全額融資した。

なお、前述したように、ロスチャイルド家は5つの家に分かれ、いっときは5つの家すべてが隆盛を極めた。しかし、2度に渡る欧州大戦の逆風もあり、第二次世界大戦後は連合国側のパリ家とロンドン家しか残っていない。

ロスチャイルド家に学ぶ

我々はロスチャイルド家の繁栄に何を学べるだろうか。ロスチャイルド家が発展した理由は、以下の3点を重視したことに集約されるだろう。

人脈:富と権力を支配する貴族の人脈作りに注力したこと
情報:人より早く有益な情報を集めたこと
リスク管理:5兄弟が別々の場所でビジネスを展開したこと

こうした考え方は現代にも通じるもので、資産規模は違えども、資産運用、資産形成の参考になるのではないか。


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