自社はどこにあてはまるか 企業規模別の自社株算定方法
自分で会社を設立して、ある一定の規模まで大きくなってくると気になるのが「相続」の問題だ。一定規模の未上場企業オーナーともなれば、子どもに財産を残す時にどのぐらいの相続税を納めればいいのか、相続の準備も含めて知っておく必要があるだろう。場合によっては生前贈与などの対策が必要になってくるかもしれない。
そこで、今回は会社の規模に応じた自社株の評価方法について検証してみよう。(作成:南青山FAS株式会社) お問合せは、こちら。
大会社、中会社の大、中会社の中、中会社の小、小会社とは
まずは、自社株の評価方法の概要について触れておく必要があるだろう。大きく分けて「原則的評価方式」と「特例的評価方式」の2つの方法があり、さらにその中でもいくつかの方法に分類されている。それぞれ株主の状況(同族株主かそれ以外かの区分)や会社の規模、そして業種などによって評価方法が変化する。簡単に評価方法の区分について紹介しておこう。
<原則的評価方式>
● 純資産価額方式
会社の純資産から株価を評価する方法。もっともオーソドックスな方法だが、他の方式と比べて評価額が高くなってしまうケースがある。
● 類似業種比準方式
類似した会社の評価額と比較した方法で、業種によっても大きく異なるが「大会社」の場合、この類似業種比準方式を使った評価方法が採られる。さらに、大会社よりも小規模の「中会社」の場合は、純資産価額方式では評価価額が高くなりすぎるために、一部を類似業種比準方式にすることで調整される。
<特例的評価方式>
● 配当還元方式
配当還元方式とは、過去2年間の平均配当金額を10%の利率で還元して、元本である株式の価額を求めようとする方式だ。同族株主以外の株主及び同族株主のうち一定の少数株式所有者が取得した株式については、会社の規模にかかわらず、配当還元価額という特例的評価方法によって評価する。
さて、この中でも特に注目したいのが、会社の「規模」による評価方式の違いだ。「純資産価額方式」だけを使ったのでは、税制上評価が高くなりすぎて不公平になる。そのため、調整として使われているのが「類似業種比準方式」だ。
大会社の場合は類似業種比準方式を100%使い、中規模会社(以下中会社)の場合は、さらに3つのカテゴリーに分類して、類似業種比準方式と純資産価額方式を併用する。中会社の大では評価の90%、中会社の中では同75%、中会社の小では同60%が類似業種比準方式を採用できるようになっており、小会社であっても同50%ずつの併合方式を選択できる。
いずれの会社規模であっても、純資産価額方式と比べて低いほうを選択できるために、両方計算してどちらか有利なほうを選択するといいだろう。
会社規模の判定方法
大会社から小会社までの判定方法だが、従業員が100人以上の会社はすべて大会社に該当する。従業員が100人未満の会社は、簿価総資産価額、従業員数および取引金額に応じ、業種ごとに異なる。
詳細は国税庁が発表している図表①で確認して頂きたい。自分の会社をあてはめて、大中小のどの区分になるのか、中会社だった場合はその中の大、中、小のどれに該当するのかを認識しておくといいだろう。
図表① 会社の規模判定一覧表
業種によって異なる計算方法
実際にどんな計算をすればいいのか。結論から言うと自分自身で計算するのはなかなか難しい。専門家である税理士などに任せたほうがいいのだが、できればどんな仕組みで計算されるのかは知っておきたい。計算でどの要素が使われるかが分かれば、評価額を下げることも可能になる。
そこで計算方法だが、会社の規模と大きくかかわるのは類似業種比準方式のため、ここでは同方式に絞ってその計算方法を見てみよう。同方式では、他の似たような業種と比較して評価する方法で、「株価」「配当金額」「利益金額」「帳簿純資産価額」の4つの要素による計算式で求められる。この中で、株価は業種によって設定されており、国税庁が毎年発表している。国税庁のホームページで「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等」を参考にすれば分かる。
いずれにしても、実際の計算式は細かな数字が多くて難解だ。よほど会計の知識が豊富な人は別だが、一般的には専門家に任せたほうが無難だろう。相続対策として自社株評価を下げることに関しても、税理士など専門家に相談して頂きたい。