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成果報酬で社員に報いる ストックオプションの種類を解説

camera_alt (写真=Ti_ser/Shutterstock.com)

企業が従業員や役員などに対して、その働きに見合った報酬を提供しようという動きが目立ってきている。いわゆる「成果報酬制度」と呼ばれるシステムだが、海外ではすでに巨額の役員報酬が話題になっている。今回はこうした成果報酬で社員に報いる方法について紹介する。

多彩な報酬制度が日本企業にも定着しつつある

成功報酬といえば、企業の自社株を活用した「ストックオプション」が良く知られている。ウイリス・タワーズワトソンと三菱UFJ信託銀行の共同調査によると、2015年7月~2016年6月末の1年間にストックオプションを活用した上場企業は628社に達している。上場企業ベースでは過去最高になった。

日本企業が、ストックオプションのような社員向けの成功報酬制度を積極的に取り入れるようになった背景にはいくつか理由がある。なかでも大きな理由が、グローバル化の進展で人材獲得競争が激化し、国際標準に近い成果に応じた報酬を提供する必要がある、言い換えれば役員や従業員に対する「インセンティブ(動機付け)」が必要になっている、という事情だろう。

企業が役員に対して報酬として自社株を提供する場合、これまではさまざまな規制があったが、最近になって金融庁も自社株の支給を簡素化しようという規制緩和の動きがある。たとえば、これまでは役員や従業員への長期的なインセンティブといえば、ストックオプション以外に選択肢がなかったものの、より中長期的な視野に立った報酬制度を考えて、現物株そのものを支給する動きもある。現物株を支給する場合、義務付けられている役員報酬額の情報開示義務などを撤廃しようといった規制緩和が検討されているのだ。ストックオプションも含めて、今後は役員報酬として自社株が使われる比率は高くなりそうだ。

ストックオプションとは何か?その種類は?

自社株の支給による成功報酬制度の中で、最も一般的な「ストックオプション」だが、最近はその種類や方法が多様化してきている。そもそもストックオプションとは何か、そのトレンドについて簡単に説明しておこう。

ストックオプションとは、簡単に言うと、事前に決めた価格(権利行使価格)で自社株を購入できる権利を役員や従業員に支給するものだ。市場株価が権利行使価格を上回れば、その差額を利益として手にすることができる。権利を付与された役員や従業員は、一生懸命働いて、企業価値を増大させ、株価を上げようというインセンティブが働くわけだ。ストックオプションにはいくつか種類があり、大きく分類すると次のような種類がある。

● 業績連動型
株式購入権を現在の株価以上に設定するストックオプションである。今後の株価(=業績)の上昇がインセンティブとなる。一般的には税制適格要件を満たすように設計されることが多い。
    
● 株式報酬型
1円などといった極めて低価格で株式購入権が発行される。株式を報酬として付与するものと同様の効果を持つものである。税務上は非適格となる。

● 有償型
新株予約権を取締役や従業員へ時価で発行するものである。一定の業績等の達成を権利行使の条件とする場合が多い。税務上は有価証券の譲渡として取り扱われることになる。

● 時価発行新株予約権信託
有償型ストックオプションと似たような制度だが、取締役や従業員に支給するのではなく、信託に割り当てるところが大きく異なる。上記のストックオプションは、自社株を受け取る「受益者」があらかじめ決まっているが、信託に割り当てるタイプは受益者が決定しない段階で信託に入れて、後に外部から新たなCEOなどを受け入れる際に使われる。

ストックオプションのメリット・デメリット

冒頭でも紹介したように、ストックオプションを導入する企業が急増している。もともとストックオプションは、株式公開を目指すベンチャー企業や大きな成長が望める中堅企業などに向いている制度だが、規制緩和や新たな制度の開発などによって、その適応範囲は拡大しつつある。どんな企業でも、ストックオプションによって役員や従業員のインセンティブを刺激し、成長戦略を描くことができる時代になりつつあるということだ。

とは言え、ストックオプションにもメリット、デメリットがある。その内容を精査して、実際に導入すべきかどうか、あるいは働く側としてもストックオプションを前提とした転職や就業を考えるべきだろう。

たとえば、「役員や従業員の貢献度に応じて正当な報酬を支払う(受け取る)ことができる」というメリットがある。その結果として、経営参画意識が高まり、業績向上につながることが期待できる。さらに、「優秀な人材の確保や流失防止に役立つ」というメリットも見逃せない。インセンティブを設定することで、外部から優れた経営者を誘致し、中長期の目線で経営を任せることができる。

一方、デメリットもある。株式という性格上、外部要因によって株価が変動し、思わぬ結果を招くケースも考えられる。株式市場全体が大きく下落するような局面では、たとえ個別企業の業績が良くても株は売られて株価が下落し、ストックオプションを行使できない可能性がある。

ストックオプションで国際標準の経営へ

どんな制度にもメリットとデメリットがあるものだが、ストックオプションは、少なくとも役員や従業員と、企業の成長が同じベクトルを向いている制度だと言えるだろう。ストックオプションの導入は、いわば日本的経営から国際標準の経営戦略に転換するための重要なツールと言って良いのかもしれない。

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