IPOにあたり知っておきたい東証が求める審査基準

F841a307 c9c1 4f87 87d4 ceae523f6b8d camera_alt (写真=zhaoliang70/Shutterstock.com)

東証のIPO(株式新規公開)基準は、「有価証券上場規程」とその下部ルールである「有価証券上場規程施行規則」、「上場審査等に関するガイドライン」に取りまとめられている。いずれも東証の親会社である日本取引所グループ(JPX)のウェブサイトに掲載されており、誰もが閲覧できる。

東証のIPO審査基準とは?

IPO審査基準は上場する市場により異なる。株券等の場合の審査項目は2つに大別される。1つは申請企業や株券等に係る形式要件であり、もう1つは申請企業及び企業グループの経営全般にわたる実質要件だ。

形式要件とは、株主数が何人以上必要、流通株式が何株以上必要、時価総額が何円以上必要といった上場までに満たさなければいけない条件だ。実質要件では、上場企業として相応しい企業であるかチェックする。明確な基準はないものの、企業経営の質が問われると言われている。

例えば、最も審査基準が緩いマザーズ市場の形式要件には以下の9項目が掲げられている。

1. 株主数(上場時見込み)
200人以上(上場時までに500単位以上の公募を行うこと)

2. 流通株式(上場時見込み)
以下の全てに適合すること

a. 流通株式数2,000単位以上
b. 流通株式時価総額5億円以上
c. 流通株式数(比率)上場株券等の25%以上

3. 時価総額(上場時見込み)
10億円以上

4. 事業継続年数
上場申請日の1年以上前から取締役会を設置し継続的に事業を行っていること

5. 虚偽記載または不適正意見等
以下の全てに適合すること

a. 上場申請のための有価証券報告書に添付される監査報告書(最近1年間を除く)において、「無限定適正」または「除外事項を付した限定付適正」
b. 上場申請のための有価証券報告書に添付される監査報告書(最近1年間) 、中間監査報告書等において、「無限定適正」
c. 上記a.及びb.の監査報告書または 四半期レビュー報告書に係る財務諸表等が掲載される有価証券報告書等に「虚偽記載」なし
d. 省略(既に他取引所で上場されている場合の規定) 

6. 株式事務代行機関の設置
東証の承認する株式事務代行機関に委託していること(または当該株式事務代行機関から受託の内諾を得ていること)

7. 単元株式数及び株券の種類
単元株式数が100株になる見込みのあること及び新規上場申請に係る株券等が次のa.からc.のいずれかであること

a. 普通株式
b. 議決権付優先株式
c. 無議決権株式

8. 株式の譲渡制限
上場申請に係る株式の譲渡制限を行っていないこと(または上場時までに制限を解除する見込みのあること)

9. 指定振替機関における取扱い
指定振替機関の振替業における取扱い対象であること(または取扱い対象になる見込みのあること)

同じく実質要件として以下の4点が示されている。

1. 企業内容、リスク情報等の開示の適切性
企業内容、リスク情報等の開示を適切に行うことができる状況にあること

2. 企業経営の健全性
事業を公正かつ忠実に遂行していること

3. 企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性
コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が企業の規模や成熟度等に応じて整備され適切に機能していること

4. 事業計画の合理性
相応に合理的な事業計画を策定しており、当該事業計画を遂行するために必要な事業基盤を整備していること(または整備する合理的な見込みのあること)

東証のIPO審査基準のポイント

前述した通り、形式要件や満たすべき数字や事象が明確であり、実質要件は抽象的な表現であることが窺える。しかし実質要件はいずれも重要な審査事項だ。

1点目の「企業内容、リスク情報等の開示の適切性」については、とくにインサイダー取引規制への的確な対応とそれを踏まえ法令および東証ルールに即した情報開示体制の構築が求められる。

2点目の「企業経営の健全性」では、申請企業のグループ企業や関連当事者に対する利益供与などの不適切な取引の防止体制の整備が重視される。

3点目の「企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」は、年を追うごとに要求水準が上がっている。東証は2015年6月に「コーポレートガバナンス・コード」を制定し、上場企業に対し自社の対応状況を整理した「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の開示を要請している。2016年12月末時点の上場企業数はTokyo Pro Marketを除き3514社だったが、そのうち2社を除く全社が報告書を開示している。IPO審査でも同コードへの対応状況が問われる。

4点目の「事業計画の合理性」は、とくに新興企業のIPO審査において重視される。申請企業の高い成長性を定量的、定性的に示す合理性の高い事業計画の策定を要する。申請前の半年から1年程度の月次予算が高い成長性を示す内容であり、かつそれを概ね実現しているなど過去の予算と実績(予実)から事業計画の妥当性を証明することが求められる。

IPOへ向けて

本来、新興企業市場は「粗削りだが高い成長を期待できる」企業のためのものだが、最近ではマザーズ市場でも1部上場企業に近い経営・内部管理体制が求められている。ベンチャー企業関係者はこうした変化も認識したい。

また、IPOには経理処理や予実の管理など入念な準備が必要だ。IPOを目指す企業や経営者としては、早めから上場に求められる水準で経営を行いたいものだ。

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