スタートアップが活用できる支援制度とは?(中編)
はじめに
スタートアップが活用できる支援制度について、補助金・助成金、融資、支援策等から、前編では経済産業省が運営・支給している補助金に焦点をあてて詳しく解説しました。
そこで本記事(中編)では、引き続き、厚生労働省が運営・支給している助成金、及び地方自治体(東京都)が運営・支給している助成金について詳しく紹介します。
スタートアップが活用できる助成金(厚生労働省)
スタートアップが活用できる助成金の多くは厚生労働省が所管しています。
また雇用確保関係の助成金はほとんどが返済する必要がなく、以下で紹介する3つの助成金も支給されても返済しなくてよいお金です。(ただし後に条件違反等が見つかれば返済を求められることもあるので注意して下さい)
労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)
厚生労働省が取扱いしている助成金にはいくつかタイプがあります。
例えば労働者の退職を防ぎ雇用を維持するための助成金、働く労働者の労働条件を向上させるための助成金、労働者を雇い入れる場合に支給される助成金などです。
その中でも、スタートアップにとって特に活用価値の高いのが労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)です。
本助成金の支給が受けられれば、安定して従業員を雇用することに役立てられます。
労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)は、再就職援助計画などの対象者を離職後3カ月以内に期間の定めのない労働者として雇い入れ、継続して雇用することが確実である事業主に対して助成されます。
再就職援助計画は退職労働者の離職前の事業主が作成するため、対象者を新しく雇用しようとする事業主は、上記の条件に合った労働者かどうか、事前にハローワーク等で確認しておく必要があります。
以下がこの助成金の支給要旨です。
・通常助成…対象者1人あたり30万円
・優遇助成※…対象者1人あたり40万円
・優遇助成かつ賃金上昇加算あり…対象者1人あたり50万円
・その他、訓練実施助成として、対象者1人1時間あたり800円~1,000円
※優遇助成は、一定の成長性が認められる事業所の事業主が、「再就職援助計画対象労働者証明書」に「特例対象者」 として記載された方を雇い入れた場合に適用されます。
本助成金に関して、詳しくは以下の公式サイトをご確認下さい。
参照先:労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)|厚生労働省 (mhlw.go.j)
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成するものです。
キャリアアップ助成金の活用に関しては、各コース実施日の前日までに「キャリアアップ計画書」等を作成して提出することが必要になります。
助成金のコースとしては、「正社員化支援」「処遇改善支援」の2つあり、各々でさらにコースが細分化されています。
スタートアップは成長する過程で大量に労働者を雇用する機会が増えてきます。
そこでこのキャリアアップ助成金をうまく活用することで、助成金を受け取りつつ、従業員の人材育成や処遇改善を図れます。
例えば有期雇用労働者を正社員化した場合、キャリアアップ助成金は1人あたり57万円(大企業の場合は42.75万円)、無期労働者を正社員化した場合、助成金は1人あたり28.5万円(大企業の場合は21.375万円)支給されます。
本助成金に関して、詳しくは以下の公式サイトをご確認下さい。
参照先:(簡易版)令和5年度オレンジポンチ+社保適用時処遇改善コース (mhlw.go.jp)
参照先:キャリアアップ助成金|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
キャリア形成促進助成金
キャリア形成促進助成金は、労働者のキャリア形成を効果的に促進するため、雇用する労働者に対して職業訓練などを計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
スタートアップ等、成長のため人材の確保が急務の企業にとって、企業の人材育成と労働者のキャリア形成に役立つキャリア形成促進助成金の活用はとてもありがたい制度になります。
キャリア形成促進助成金には助成メニューとして8つのコースがあり、訓練期間・訓練コースに応じて、1人1コースあたり7万円~50万円支給され、また1事業所が1年度に受給できる助成額は上限が500万円に設定されています。
本助成金に関して、詳しくは以下の公式サイトをご確認下さい。
参照先:厚生労働省/260912 キャリア形形成促進助成金のご案内(パンフレット) (mhlw.go.jp)
スタートアップが活用できる補助金(地方自治体編)
次にスタートアップが活用できる補助金として、地方自治体が運営・支給している補助金を紹介します。
地方自治体のうち東京都は、大企業だけでなく全産業にまたがり多くの中堅・中小企業も集積している自治体です。
それだけに東京都管内でビジネスを行う企業にはビジネスチャンスも多く、スタートアップにとっても魅力的な市場なので、それを踏まえて活用できる補助金も多くあります。
今回は東京都が運営・支給しているスタートアップ向け補助金を4つ紹介します。
創業助成事業(東京都)
東京都及び公益財団法人東京都中小企業振興公社は、都内開業率を2030年度に12パーセントまで向上させる政策目標の達成に向け、都内創業予定者等に対し、創業初期に必要な経費の一部を助成する「創業助成事業」を実施しています。
助成事業の主な概要は以下の通りです。
【助成対象者】
・都内創業予定者または創業して5年未満の中小企業者等(ただし申請時点において、個人事業主または法人登記上の代表者として経営に従事している(別事業を含む)期間が、通算で5年未満であること)
【助成率及び助成限度額】
・助成対象経費の3分の2以内/限度額300万円(下限100万円)
【助成対象期間】
・交付決定日から最長2年間
【助成対象経費】
・創業初期に必要な経費(賃借料、広告費、器具備品購入費、産業財産権出願・導入費、専門家指導費、従業員人件費等)
参照先:創業初期に必要な経費の一部を助成 第2回募集|東京都 (tokyo.lg.jp)
注:本助成金の令和5年度募集はすでに締め切られており、次年度の募集に関しても現時点では未定です。
若手・女性リーダー応援プログラム助成事業(東京都)
若手・女性リーダー応援プログラム助成事業は、東京都及び公益財団法人東京都中小企業振興公社が、都内商店街で女性または若手男性が新規開業をするに当たり、店舗の新装または改装及び設備導入等に要する経費の一部を助成することにより、商店街における開業者の育成及び支援を行い、都内商店街の活性化を図ることを目的としています。
助成事業の概要は以下の通りです。
【助成対象者】
・女性または令和6年3月31日時点で39歳以下の男性であること
・創業予定の個人もしくは個人事業主であること
・申請予定店舗が都内商店街であること
・申請時点で都内に限らず実店舗をもっていないこと
【助成率及び助成限度額】
・経費区分によって助成対象経費の3分の2~4分の3/限度額6万円~400万円、また申請区分は「開業のみ」で、トータルとしての助成限度額は730万円
【助成対象経費】
・事務所整備費(店舗新装・改装工事費、設備備品購入費、宣伝広告費)、店舗賃借料、実務研修受講費等
参照先:若手・女性リーダー応援プログラム助成事業 | 事業 | 東京都中小企業振興公社 (tokyo-kosha.or.jp)
注:本助成金の令和5年度募集はすでに締め切られており、次年度の募集に関しても現時点では未定です。
新製品・新技術開発助成事業(東京都)
新製品・新技術開発助成事業は、東京都及び公益財団法人東京都中小企業振興公社が、実用化の見込みのある新製品・新技術の自社開発を行う都内中小企業者等に対して、試作開発における経費の一部を助成するものです。
ただし本助成事業の範囲は「試作開発」「試験評価」だけであり、その後の設備導入や生産・量産対応を目的とした申請は対象外なので注意が必要です。
本助成の主な概要は以下の通りです。
【対象となる事業分野】
・新製品・新技術の開発
・新たなソフトウェアの開発
・新たなサービス創出のための開発
【助成対象者】
・都内の本店または支店で実質的な事業活動を行っている中小企業者(会社及び個人事業者)等
・都内での創業を具体的に計画している個人
【助成対象期間】
・最長1年9カ月
【助成率及び助成限度額】
・助成対象経費の2分の1以内/限度額1,500万円
【助成対象経費】
・原材料・副資材費、機械装置・工具器具費、委託・外注費、産業財産権出願・導入費、専門家指導費、直接人件費等
参照先:新製品・新技術開発助成事業 | 事業 | 東京都中小企業振興公社 (tokyo-kosha.or.jp)
注:本助成金の令和5年度募集はすでに締め切られており、次年度の募集に関しても現時点では未定です。
スタートアップ海外進出事業(東京都)
スタートアップ海外進出事業は、東京都及び公益財団法人東京都中小企業振興公社が運営・支給している助成金です。
円安を契機と捉えて積極的な海外展開をめざす創業10年未満の都内中小企業者等が取り組む海外向けの販路開拓支援及び販売促進に要する経費の一部を助成します
本助成の主な概要は以下の通りです。
【助成対象者】
・令和5年1月1日現在において、個人事業主または法人として事業を実施していた期間または実施している期間が通算で10年未満である中小企業者または創業予定者で、大企業が実質的に経営に参画していないもの
【助成率及び助成限度額】
・助成対象経費の3分の2以内/限度額200万円
【助成対象経費】
・海外展示会参加費
・海外ECサイト出店初期登録費用
・外国語自社webサイト制作費
・販売促進費(チラシ・カタログ制作費、PR動画制作費、PR広告掲載費)
・委託費(海外マーケティング調査費、海外向けデザイン・コンセプト設計等の製品改良に要する経費
参照先:スタートアップ海外進出支援事業 | 事業 | 東京都中小企業振興公社 (tokyo-kosha.or.jp)
※注:本助成金の令和5年度事前エントリーはすでに締め切られており、次年度の募集に関しても現時点では未定です。
おわりに
本記事ではスタートアップが活用できる支援制度について、厚生労働省が運営・支給している助成金、及び地方自治体(東京都)が運営・支給している補助金について詳しく解説しました。
次回スタートアップが活用できる支援制度(後編)においては、スタートアップが利用できる融資制度及び支援策・支援機関等について詳しく紹介します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
スタートアップ企業が直面する資金調達、事業会社とのビジネスマッチング、プロフェッショナルの選定、IPOとM&A、企業PR などのハードシングスを解決できるプラットフォーム
企業価値、株価算定等についてのご相談は、以下からお気軽にお問い合わせください。
仮想株式を活用した業績連動型報酬制度 「エンゲージメントストック」
SaaS型ストックオプション管理ツール 「ストックオプションクラウド」