スタートアップが活用できる支援制度とは?(前編)
はじめに
スタートアップが活用できる支援制度にはどのようなものがあるでしょうか?
創業前、あるいは起業して間もないスタートアップ企業にとって、資金調達や資金繰りの確保ほど困難を伴うものはありません。
スタートアップは経営実績も信用力も乏しく、資金の供給先である銀行やベンチャーキャピタルも融資や出資に及び腰だからです。
しかし、そんなスタートアップでも資金調達等で活用できる様々な支援制度があります。
それが国・地方自治体が運営している補助金・助成金、起業者向けに金融機関が提供している融資制度、及び税制等の各種支援制度や支援組織です。
この記事では、3部構成で、スタートアップが知っておくべき補助金・助成金、融資制度、支援策等をまとめて解説します。
読み終われば、資金調達や出資等で高いハードルを感じているスタートアップでも活用できる方法が多くあることをきっと実感できるでしょう。
補助金・助成金の違い
最初に補助金と助成金の違いを説明します。
補助金や助成金は、国や地方自治体等がそれぞれの所管官庁を通じて企業や個人事業主等に対して公的に支援するお金です。
国や地方自治体が、それぞれの目的達成のため、事業者にお金を支給するという点では補助金も助成金も流れは同じになります。
また、補助金の主たる所管官庁は経済産業省で、助成金の所管官庁は厚生労働省です。
一方、補助金と助成金の違いは、その目的や支給の仕組みにあります。
補助金の目的は、会社の事業を通じて公益を達成するためで、一般的に支給される額も高額になります。
先に国の達成すべき政策目標があって、目標達成のため、企業はその目的に合った事業に取り組むことが重要です。
補助金は所管官庁が決めた条件を満たすことが最低条件になっており、事業で条件を満たした後、所定の審査を受けて合格すれば支給されます。
また、補助金は申請すれば誰でも受けられるということでなく、採択率にもばらつきがあります。
一方、助成金は雇用の創出、高齢者・身体障碍者等の雇用の安定等を目的として、厚生労働省が設けている制度で、企業側が支給の一定の条件を満たせば必ず支給されます。
補助金のような申請しても採択されないケースはなく、助成金は条件さえ満たせばどの会社でも支給されます。
ただし、補助金と違い、助成金は比較的簡単に受け取れる分、相対的に支給額が小さいです。
補助金・助成金の運営先
補助金及び助成金の運営先は、主に以下の4つです。
・経済産業省
・厚生労働省
・地方自治体
・民間団体及び民間企業
これらの4つの運営先はそれぞれ異なる特徴があり、支援する目的、支援金額、返済の有無等にも違いがあります。
したがって、スタートアップが資金調達等の目的のため、どの組織に支援を申請するかは、事前に資金の用途や必要金額、支給タイミング等考慮して十分なすりあわせが必要です。
スタートアップが活用できる補助金(経済産業省)
本記事では、スタートアップが活用できる国の運営する補助金について詳しく解説します。
経済産業省が運営してスタートアップも活用できる補助金は以下の4つです。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金(=持続化補助金)とは、小規模事業者が自社の経営を見直し、自らが持続的な経営に向けた経営計画を策定した上で行う販路開拓や生産性向上の取組を支援する制度です。
持続化補助金の通常枠・創業枠とも補助率は助成対象経費の3分の2ですが、補助上限枠は通常枠で50万円、創業枠(※)は200万円とスタートアップに有利な制度になっています。
(※) 創業枠を申請できる事業者とは、産業競争力強化法に基づく「特定創業支援等事業の支援」を受け 販路開拓に取り組む、過去3カ年の間に開業した小規模事業者のこと。
持続化補助金の申請窓口は全国各地にある商工会議所で、商工会議所の所管官庁は経済産業省です。
スタートアップが持続化補助金を申請して審査に通れば、所定の補助金が支給されて金銭的メリットがあるだけでなく、商工会議所とのパイプもできます。
そのため、販路開拓のノウハウが得られたり、人脈が乏しいスタートアップでも人脈構築のサポートも受けられたりします。
参照先:小規模事業者持続化補助金(一般型) (jizokukahojokin.info)
※次回商工会・商工会議所等への事業支援計画書発行の受付締切(2023年12月5日まで)
※申請書類の提出(2023年12月12日まで)
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けたITツール(ソフトウェア・サービス等)の導入を支援する補助金です。
補助金申請者(中小企業・小規模事業者等)は、IT導入補助金事務局に登録された「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組んで、IT導入補助金事務局に申請が必要です。
IT導入補助金の運営先は経済産業省の下部組織である中小企業庁になります。
スタートアップは資金力も乏しく、ひとつの経営課題に大きな資金を投入できません。
そのため、IT導入補助金の支給を受けてITツールを導入すれば、業務の効率化や省人化が図れます。
IT導入補助金はスタートアップにとってぜひ導入を検討したい補助金のひとつです。
補助率・補助額(上限)等は目的枠別に細かく分かれているため、詳細は以下の公式サイトをご確認下さい。
参照先:IT導入補助金とは | IT導入補助金2023(後期事務局) (smrj.go.jp)
参照先:ストックオプションクラウド/IT導入補助金とは?【2023年・令和5年】の概要、手続きを詳しく解説
※次回IT導入補助金の通常枠募集締切日時については以下の通りです。
第9次締切日(2023年12月25日)
第10次締切日(2024年1月29日)
ものづくり補助金
ものづくり補助金とは、新商品や新サービスの開発、生産性の向上等の取組を図る中小企業・個人事業主等に対して、中小企業庁が支援している補助金です。
補助金の最大額は3,000万円で、製造業やサービス業、卸小売業、農業など、支給対象も幅広く設定されています。
本補助金の申請窓口は「ものづくり補助金事務局サポートセンター」になります。
ものづくり補助金の支給を通じて、新システムの導入、クラウドサービスの利用など、企業の業務効率化につながる設備投資を図って欲しい目的があり、スタートアップ企業でもものづくり補助金の利用価値は高いです。
参照先:トップページ|ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト (monodukuri-hojo.jp)
※ものづくり補助金の募集は2020年3月10日の公募開始以来、通年で公募を行っており現在も継続中です。(第17次公募準備中)
詳しいスケジュールは、以下の公式サイトでご確認下さい。
参照先: ものづくり補助金総合サイト/公募スケジュールについて
事業再構築補助金
事業再構築補助金の目的とは、ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応して、中小企業等の思い切った事業再構築を支援するため、補助金を支給して、日本経済の構造転換を促すことです。
そのため、新分野展開、事業転換、業種・業態転換、事業再編等の思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等(含むスタートアップ)を支援しています。
事業再構築補助金の支給対象は、コロナの影響下、厳しい状況にある中堅・中小企業や個人事業主、企業組合等で、審査の上で補助金交付候補者を採択します。
本補助金の申請窓口は「事業再構築補助金事務局※」です。
※「中小企業等事業再構築促進事業」は、中小企業庁より採択され、中小企業庁及び独立行政法人中小企業基盤整備機構監督のもと株式会社パソナが事務局業務を運用しています。
事業再構築補助金の各申請枠も目的によって様々で、最低賃金を引き上げる目的で支援を行う最低賃金枠(補助上限枠1,500万円)、成長分野への事業再編に取り組む事業者を支援する成長枠(補助上限枠7,000万円)、サプライチェーン強靱化枠(補助上限枠5億円)までじつに多彩です。
過去に例を見ないほど非常にチャレンジングな補助金となっていますので、ぜひ活用を検討したい補助金のひとつと考えます。
参照先:事業再構築補助金とは | 事業再構築補助金 (jigyou-saikouchiku.go.jp)
事業再構築補助金の公募スケジュールは以下の公式ページをご確認下さい。
参照先:事業再構築補助金/スケジュール
おわりに
本記事(前編)では、スタートアップが活用できる支援制度のうち、経済産業省が運営している補助金を4つ詳しく解説しました。
次回、スタートアップが活用できる支援制度(中編)では、厚生労働省が運営・支給している助成金を3つ、地方自治体が支給している補助金を4つ紹介します。
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