事業計画書の作り方(後編)
はじめに
事業計画書は、事業の内容を説明するとともに、ビジネスの将来的な売上・利益の見込み、その計画を達成するための戦略等を一覧で記載した書類をいいます。
前記事の中編においては、事業計画書の記載内容と書き方のポイント、会社概要の書き方等について説明しました。
本記事、後編においては、引き続き、事業計画書作成上の注意点、テンプレート(ひな形)の入手方法など、詳しく解説します。
1.事業計画書の記載上の注意点
この章では、事業計画書を作成する際、陥りやすい問題や記載上の注意点について詳しく解説します。
事業計画書を読んで審査をする側に記載面で誤解をされないためにも、最新の注意を払って作成を心がけましょう。
1.1各々記載項目のポイントを事前に整理してから書く
どのような書類でも基本は同じですが、書類を書く前に記載の要点を整理してから書き進めるようにしましょう。
初心者ほど最初からろくな準備もせず内容を書き始めるので、記載内容にまとまりがなくダラダラ感が出るばかりか、他者が読んでも何を書いているか意味がよく分からないとか、最も重要な点が書かれていないこともあります。
それではせっかく時間を掛けて事業計画書を作った意味がありません。
その点、事前に要点を整理して箇条書きでまとめておくと、計画書記載中も本筋を外すことは少なく、整理したものを転記すればいいので読みやすさは大きく変わります。
もちろん、審査する方への訴求力は格段に上がります。
1.2読む相手が理解しやすいよう、補助的に図、グラフを活用する
分かりやすい事業計画書を策定するには、文章だけで相手に理解してもらおうとするのでなく、適宜、図やグラフ等を補助的に活用することも大事です。
図やグラフは直接視覚に訴えるので、長い文章をダラダラ書き続けるより、一目でその内容を相手に理解させられる力があります。
さらに、データ等数値付きの図なら、その事柄に対する根拠も伴っているので、さらに説得力が増します。
ただし、事業計画書そのものは作成スペースに限りがあるので、図やグラフは補助資料として別途作成・添付するのがベターです。
1.3記載した数字の根拠を明確にしておく(根拠資料も添付)
事業計画書に記載している数字には対しては根拠が求められます。
審査する側から数字の根拠を求められても、すぐに答えられるよう、きちんとした資料・データ等を手元に用意しておきましょう。
例えば、予想値の欄で前期実績に対して「売上高が10%増加」「利益が20%増加」という、収支見込みに関する数値を書いていたとします。
審査者としたら当然その数値には裏付けがあるはずという姿勢で質問してくるので、それに対して即座に根拠を示して答えられないと、「この会社の事業計画書は信頼性が低い」と判断されて、必要な資金調達が受けられなくなるリスクがあります。
ある意味、事業計画書作成の肝はこの点にあるので、計画書に数値を記載する場合には、希望的観測だけのような数値は書かず、あくまで客観性のあるデータや専門家の意見等を利用して書類作成するよう心がけましょう。
1.4記載項目全体のバランスが取れているか提出前にチェック
事業計画書の作成では、記載項目全体のバランスに注意が必要です。
事業計画書を作成中は、様々な項目に配慮して記載せねばならないので、時折ひとつのことに集中しすぎて他項目とのバランスを欠いた記載内容になってしまうことがあります。
もちろん、一つ一つの項目に対して神経を集中させて書くことはていねいな記載を心がけている証でもあるので、それが悪いわけではありません。
しかし、いくら個別の項目をていねいに記載しても、内容全体がバランスを欠いていれば、読む側としても違和感を覚えて、結果として良い印象を得られなくなるリスクがあります。
それでは訴求書類としては本末転倒なので、記載する者としては、事業計画書の作成がひとまず終わったら項目全体を見渡して、内容でバランスを欠いている箇所はないか、あればすぐに修正対応する等、提出前に再チェックする習慣をつけておきましょう。
1.5提出・申請前に会計士・税理士等専門家のチェックを受けておく
事業計画書を作成して申請先等に提出する前に、できれば顧問契約している、あるいは知り合いの公認会計士・税理士等に書類のチェックを受けておくようおすすめします。
事業計画書の作成は、事業をよく知る自社が行うのが当然としても、経営数字の専門家である会計士・税理士等に事前チェックを受けておくことは、記載ミスを避けたり重要な点が欠けているのを発見してもらったりという点からも大変重要です。
申請前に時間的余裕がある限り、記載者と専門家のダブルチェックを心がけましょう。
1.6提出・申請先でどのような内容の事業計画書が必要か、事前に確認しておく
事業計画書の策定では、申請先にどのようなタイプの事業計画書を出したらいいか、事前に確認しておくようにしましょう。
事業計画書の作成において計画書には様々なタイプがあります。
事業が順調で新たに設備投資して売上拡大を図ろうとしたり、販路拡大のため追加で資金を必要としたりする場合は通常の事業計画書が必要です。
一方、起業して会社を設立する場合には創業計画書を作成するのが一般的ですし、複数の新事業を同時に立ち上げる場合にはそれぞれに対応した事業計画書を作成した方がいいと考えます。
さらに、異なる事業を最終的にひとつの事業計画書にまとめる場合には、売上や販管費管理の予測が複雑になるので、より厳密な事業計画書の策定が求められます。
ただし、業態が似ている事業を起こして設備や人員等を共有する場合には、個別の事業計画書を作成するのでなく、最初から1つの事業計画書にまとめるほうが相手にとって理解しやすいケースもあるので臨機応変に対応しましょう。
いずれにしても、計画書の策定では様々なケースが考えられるので、どのようなタイプの事業計画書を作成したら良いか、事前に提出先に確認しておくのもひとつのやり方です。
1.7本人が個人事業主の場合、事業(創業)計画書が必要かどうか、事前に確認する
事業に係る資金を外部調達しようとする際、資金を必要とする当事者が法人でなく個人事業主の場合、事業(創業)計画書の作成が必要かどうか、作成方法も含めて、事前に提出先に確認しておきましょう。
個人事業主が事業計画書を作成する際、法人ほど事業規模が大きくないことが一般的なので、綿密な内容の事業計画書を書かなくても良いことが多いです。
そのため、本人が取引金融機関等に直接出向き、あるいは担当者を自宅に呼んで面接を受けることで、簡単な内容なら金融機関に事業計画書を作成してもらうこともできます。
金融機関はそのような形で事業計画書を代りに策定していることもあるので、書類作成の不慣れな申請者が一から作業するより、早く手続きが進むこともメリットです。
ただし、金融機関担当者も一人で多くの顧客を抱えており忙しいので、面談時、質問に対して効率的に答えられるよう、事業主は事業に関する資料を事前に整理整頓しておいて下さい。
2.事業計画書のテンプレート入手先
では、最後に事業計画書のひな形(テンプレート)の入手方法について紹介します。
事業計画書の入手先として以下の複数ルートがあります。
2.1J-Net21
J-Net21は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営している創業者や中小企業経営者のためのポータルサイトです。
サイトを通じて事業計画書のひな形が手に入れられるほか、書き方のポイントも様々な角度から別記事で解説しています。
参照先:J-Net21
2.2日本政策金融公庫
中小企業・個人事業者向けに各種融資を実施している日本政策金融公庫のポータルサイトです。
各種融資金の目的に沿って様々なタイプの事業計画書テンプレートが公開されています。
また書き方事例も作成時の参考になります。
参照先:日本政策金融公庫(中小企業事業)
参照先:日本政策金融公庫(国民生活事業)
2.3取引金融機関
自社が預金取引している金融機関、または今後メインバンクとして取引したいと考えている金融機関から事業計画書のひな形を入手するルートです。
窓口訪問して融資を受けたい旨申し出すれば、その金融機関所定の事業計画書が手に入ります。
ただし民間金融機関の事業計画書は、現状でも上記の記事で活用した日本政策金融公庫(現行版)と異なり、1枚もので企業概要も含めて記載する形式のものが多く使われているので注意して下さい。
2.4その他(商工会議所・商工会/ネットから調達/WordやExcelで自作)
上記以外に事業計画書を手に入れる方法としては、たとえば会社所在地にある商工会議所・商工会に出向き入手する方法があります。
商工会議所・商工会なら会員になっていれば、経営指導員から直接事業計画書の書き方のアドバイスも受けられるのも魅力です。
また、事業に係る資金調達をメインにネットで情報提供している民間ポータルサイトにアクセスして無料配布している事業計画書(ひな形)をダウンロードする方法、あるいはネットからの素材等を参考にWordやExcelで自作して自社の事業に合った事業計画書を作る方法もあります。
おわりに
本記事、後編においては、事業計画書の作成上の注意点、ひな形の入手先について詳しく解説しました。
事業計画書は会社を起業したり、事業を継続したりしていく様々な場面で作成が必要となる重要書類です。
作成には必ず記載すべき内容や記載のポイント、注意点があります。
一方、事業計画書には決まったフォーマットはありません。
しかし、本記事(シリーズ)で解説した項目を盛り込んで事業計画書を作成していけば、資金調達先を含む、どのような関係先にも「分かりやすい事業計画書」として評価されると考えています。
事業計画書を作成時、ぜひ本記事の内容も参考にして下さい。
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