事業計画書の作り方(中編)
はじめに
事業計画書は、事業の内容を説明するとともに、ビジネスの将来的な売上・利益の見込み、その計画を達成するための戦略等を記載した書類をいいます。
前編では、事業計画書について、その作成目的や必要性、作成時期やメリットについて説明してきました。
本記事中編においては、いよいよ事業計画書の作り方について、ひな形を用いて記載内容と書き方のポイントを詳しく解説するとともに、重要な関係書類である会社概要についても書き方のコツを紹介します。
1.事業計画書の記載内容と書き方のポイント
本章では事業計画書の具体的な作り方について詳しく説明します。
事業計画書のひな形(テンプレート)は様々な入手ルートがあります。
そこで本記事では、中小企業・小規模事業者等が資金調達の際、融資を通じて最も利用している政府系金融機関のひとつ、日本政策金融公庫の事業計画書をベースに解説します。
以下が日本政策金融公庫で入手できる事業計画書のひな形です。
画像引用元:日本政策金融公庫/事業計画書
1.1 現況(創業の場合、創業の目的・動機)、新商品の開発または新サービスの内容、課題・重点取組項目、具体策等、経営上の課題項目
【現況(創業の場合、創業の目的、動機)、新商品の開発または新サービスの内容、課題・重点取組項目、具体策等】
この箇所では、事業の現況について記載します。
事業内容や売上動向、収益状況、重点的に取り組んでいる項目、新商品・サービスがあればその内容など、簡潔に記入します。
また創業の場合は、その事業を始めることになった目的や動機、どの程度の準備(場所・設備等)ができているかなど、記載します。
【経営上の課題項目】
この箇所では、経営上の課題項目について記載します。
以前公庫で使用されていた事業計画書では、経営上の課題項目について、申請各社が個別具体的に内容を記載する様式でした。
しかし、今回改訂済みの事業計画書においては、経営上の課題項目について、事前に①経営全般②売上・収益③人材・マネジメント④財務⑤その他に分類されています。
さらに、①~⑤の各項目が4~7個の具体的項目に細分化されているので、記載する側としては自社に該当する項目をいくつか選んで○表示すればいいので簡単です。
さらに、課題項目・重点取組項目として選んだ項目に沿って、内容をより具体的に書けばいいので記載上悩むことが少なくなっています。(日本政策金融公庫のサイトでは事業計画書の記載例もありますので参考にして下さい)
1.2 業績推移と今後の計画
この箇所では、会社の業績推移と今後の計画を記入します。
前期実績をベースに、今期の見込み、及び次年度以降連続3期の計画を記載します。
さらに、最後に、前期実績からカウントすれば5期目に当る箇所に最終目標値を予想して記載します。
事業計画書を作成する上で申請者が悩む箇所のひとつがこの項目ではないでしょうか。
事業は様々な内外的要因に影響を受けるので、5年も先の売上高や利益など、予想するのは難しいと考える方が多くいても当然です。
しかし、自社の事業を、その強み・弱み含めて、最もよく知っているのは会社の経営者そのものなので、たとえ数字の専門家といえ、その作業を顧問の会計士・税理士等、外部関係者に丸投げするわけにはいけません。
経営者は、数字の予測は苦手だと逃げることなく、主観にとらわれず、客観的な姿勢でかつ根拠のある数値に基づく予想を試みるべきでしょう。
ただし、その際には、公的機関の発表している業界の経営数値を参考としたり、会計士・税理士等の専門家のアドバイスを受けたりすることも大切です。
1.3~1.4 借入金・社債の期末残高推移(含む借入の負担の推移)
この箇所(6.3)では、自社が現状借り入れている借入金・社債の期末残高を、前期実績をベースにこれから5年間の残高の推移を予測して記載します。
さらに借入金の負担推移の項目(6.4)では、各年度の借入金総額を(経常利益✕1/2+減価償却費)で割った数値(借入金負担年数)を予測して書きます。
その際、上記の作業で記入者がやっていけないことがあります。
それは、具体性を欠いたあまりにも楽観的な数値を記入することや、明らかに業績が悪化傾向、または借入金残高が増加基調にもかかわらず、逆の予測数値を記載することなどです。
事業計画書を審査する側も様々な業界の審査を経験しているベテラン揃いですから、下手な小細工はむしろその会社に対するイメージを悪くして、審査結果に悪い影響を与える可能性があります。
事業計画書策定においては、記載内容はあくまで客観的な数字に基づき、現状をきちんと反映した予想値とするよう心がけましょう。
1.5 計画終了後の定量目標及び達成に向けた行動計画等
この箇所では、計画終了後の定量目標及び達成に向けた行動計画等を記載します。
ただし記載においては、すでに経営課題について具体的・重点的に取り組む項目や業績推移予想を記載済みなので、ここであらためて詳しく内容を記述する必要はありません。
たとえば、計画終了後の定量目標では「償却後の経常利益の黒字化を果たす」等、簡潔な記載に留めて構いません。
また達成に向けた行動計画等でも、「既存取引先からの受注増加機会を確実に取り組む」「新規・既存顧客に対する営業活動管理を徹底し売上増加を図る」「自社に優位性ある商品を中心に売価交渉を実施する」など、自社の事業に即した簡潔な記載を心がけましょう。
1.6 認定支援機関等の所見等
この箇所では、認定支援機関※の方にお願いして、本計画に係る支援機関としての評価を記載してもらって下さい。
※認定支援機関とは、正式名を認定経営革新支援機関といい、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関(税理士法人、公認会計士、税理士、弁護士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関等)をいいます。
2.事業計画書の関係書類(会社概要)の書き方
前章では、事業計画書のうち、最も肝となる箇所について詳しく説明しました。
しかし、事業計画書はそれだけで完備しているものでなく、次に紹介する「会社概要」も事業計画書の内容を補完する書類として同様に重要です。
会社概要は個人でいえば履歴書(プロフィール)に相当するものです。
以下会社概要の記載内容について詳しく説明します。
画像引用元:日本政策金融公庫/会社概要(簡易版)
2.1 会社について
この箇所には、企業概要、すなわち会社の基本情報(企業名、本社所在地、資本金、創業年、社員数等)を記載します。
2.2 経営陣について
この箇所には経営陣、すなわち主要役員の詳細を記載します。
具体的には、各役員の氏名、役職名、生年月日、職歴、会社の持株比率等です。
2.3 事業概要
この箇所では事業概要、すなわち事業の全体像を一目で分かるよう簡潔に記載します。
経営している事業が「どの市場で」「誰に対して」「何を(商品・サービス)」「どのような形で提供しているか」を書きます。
さらに、その事業の特徴や魅力を簡潔に書くことで、出資や融資の判断をする資金調達先に事業のイメージが正しく伝わることでしょう。
2.4 事業所概要
この箇所では本社以外に事業所があれば、その住所、事業所ごと個々にどんな製商品・サービスを取り扱っているか、土地建物や主要設備があればその詳細、事業所ごとの社員数等をできるだけ詳しく記載します。
この箇所を読めば、事業の概要を営業(生産)品目や人員等の面から理解するのに役立ちます。
2.5 取引状況
この箇所では、主要取引先との取引状況を販売先別/仕入先別あるいは部門別/製商品別に区分けして、その取引実績を過去3期にさかのぼり記載します。
一方社内で上記に関する内部管理資料があれば、上記様式への記載に代えて、直接当該資料を提出しても構いません。
ただし、審査先へは当該管理資料で良いか、必ず事前の確認をとっておきましょう。
2.6 金融機関取引状況
この箇所では、金融機関との取引状況を記載します。
また、関係先が複数ある場合は金融機関ごと個別に取引状況を詳しく記載します。
さらに、上記取引先状況同様、社内で本件に係る内部管理資料があれば、上記様式への記載に代えて、直接当該資料を提出することも可能です。
おわりに
本記事、中編では、日本政策金融公庫のテンプレートを用い、事業計画書について、記載内容と書き方のポイントを詳しく解説するとともに、補完的資料として会社概要の書き方も説明しました。
引き続き後編においては、事業計画書の作り方について、作成上の注意点、テンプレートの入手方法など、詳しく紹介します。
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